2015年09月09日

法帖の偽装について



  明時代など、より新しい時代に刻した法帖を宋時代のものだと偽装して高く売るということは、しばしば行われてきた。

例えば、東京国立博物館のこの蘭亭序の拓本は宋拓チョ遂良本という題簽がついているが、
末尾に、明成化年間の国士舘祭酒(大学長)の陳鑑の印が「刻して」あるから、宋拓のはずはないし、
他の理由もあって、陳鑑自身が刻した石による拓本に違いない。

 古い話では、羅振玉が褒めた澄清堂帖拓本が清時代瞳孔年間の満州人 キ英が広東で翻刻したものであるらしいという話題は有名なスキャンダルである。更にこれから、複数の澄清堂帖拓本や、書譜の拓本がキ英翻刻本だという話になっている。

また、書道博物館にある宋拓  孝女曹が碑は、明らかに  清 康煕十四年完成の翰香館法書の初拓にみえる。
伊藤滋氏が雑誌「墨」に書いている連載記事によると、明清時代の大部の法帖:とくに停雲館帖の第一巻の小楷部分を切り取って装幀しなおして、宋拓本に偽装したものが相当多いようである。
中国・日本問わず、立派な影印本にもそういう例は多いらしい。それだけ停雲館が優れているということでもある。

最近、翰香館法書の研究のため、仲威、善本碑帖過眼録、文物出版社、二〇一三、北京で、上海図書館の紹興米帖残巻を観察していたら、妙なことに気がついた。賈似道の印が刻してあるのだ。紹興時代より百年ぐらい後の賈似道の印が紹興米帖に刻してあるはずはない。これは清時代前半からの由々しい伝来を誇るものだが疑念をもつときりがない。実は上海図書館本の紹興米帖を翰香館法書が翻刻(再版)したと論証したかったのだが、ひょっとしたら逆ではないか?? これは翰香館法書の旧拓を塗りまくって偽装した作り物ではないか?と疑念を深めたものである。


タグ:偽装 法帖
posted by 山科玲児 at 09:08| Comment(0) | 2015年日記