2015年10月27日

ボッスの本の書評 補足

Hours  Engelberg de Nassau (3).JPG

謎解き ヒエロニムス・ボス (とんぼの本)
http://www.amazon.co.jp/dp/4106022583

に当方の書評が掲載されておりますが、
少し、補足

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・年輪年代法から考えて、「乾草の車」は2点(プラド  エスコリアル)とも工房作ではないかと考えていますが、真作にいれてしまっているというのは、いかがなものでしょうね。

・ ミュンヘン アルテピナコテークの最後の審判 断片は年輪年代では推定伐採年代1440年ですので、124Pで、なんでボスの追従者で1500年〜1525年ということにしているというのは、おかしいでしょう。年輪年代が古いのに、推測年代が逆に新しくなるというのは、めちゃくちゃです。古い祭壇画や家具の空いたところに制作されたっていう想定なのかもしれないが、ちょっと無理がありすぎるんじゃないの?

・  同じく124Pで、ゲントの「十字架を担うキリスト」を追従者の作としています。しかしですよ。これが誰の作品であったとしても、16世紀オランダフランドル絵画の最高傑作の一つじゃないでしょうかね。マッシスという名前があがっていたこともありますが、マッシスのどの作品より凄いと思います。

・ また、125pでプラド美術館所蔵の小品「聖アントニウスの誘惑」について「以前より多くの研究者からその真筆性が疑われていた作品だが」と書いていますが、「以前」というのは2001年より新しいある時点ではないでしょうか?2001年以前にそういう疑念は読んだことはありません。

・ amazon評に書いた「快楽の園」がヘンドリック3世の結婚祝いではなく、エンゲルベール2世Engelbrecht II van Nassau-Breda, (17 May1451 -- Brussel, 31 May 1504) の注文でないか?という推測は、エンゲルベール2世の注文による装飾写本(上のイメージ)に、このような奇矯な動物のイラストがかなり入っていることが傍証です。

・さらに118p  「17 キリストの処刑」の解説で、「寄進者像は一時、マグダラのマリアに描き変えられていたが、1966年の修理で元の姿に」というのがある。これも初耳なんで、調べてみたら。1949年パリ出版の本に写真があった下イメージ↓↓。
 どうみても マグダラのマリアではない。 なにかの勘違いか? それとも1949年と1960年(美術館に入った年)の間で「マグダラのマリアに描き変えられていた」が起こったのか? でも写真があるんだから いくらなんでもそんな時代に描き変えなんてありえないでしょ。 これは呆れました。

  Source: Jean Leymarie Jerome Bosch  Edition Aimery Somogy, 1949, Paris

Bosch CALVARIO CRUSIFICATION BRUSSEL (1).JPGBosch CALVARIO CRUSIFICATION BRUSSEL (2).JPG
posted by 山科玲児 at 11:01| Comment(0) | 日記

妹至帖は九州国立博物館に

王羲之 妹至帖.bmp


九州国立博物館
美の国 日本
http://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_s41.html

で No.43の展示品として、王羲之:妹至帖が展示されています。
どうも、そのラベルをみると「九州国立博物館」となっていたので、
九州国立博物館が購入したものらしいです。
流出は阻止したいと思っていた墨跡なので、まずはよかったと思っています。

購入価格は、色々、公文書を検索したらわかるのですが、上野の西洋美術館が、昨年購入した油絵の

   フアン・バン・デル・アメン  果物籠と猟鳥のある静物
   http://collection.nmwa.go.jp/P.2014-0002.html

とほぼ同じくらいのようですね。
  この絵はあまり良くない(真贋の問題ではなく観賞価値の問題)と思っているので、王羲之:妹至帖 購入は、相対的に良い税金の使い方だと思っています。

  同時に、名児耶氏が近年発見した王羲之 模写本: 大報帖 もNo.44展示されています。
これは、東京国立博物館での王羲之展より近くで観察でき、明らかに墨を塗りつぶしたようなぺたっとした表面があって、模本の性格が際立っていると思いました。詳細に観察できる良い機会だと思います。

  どちらも、全期間展示なので正倉院琵琶展示が終わったあとに、少し混雑がおさまったときに、また観てみたいと思っています。

posted by 山科玲児 at 07:49| Comment(0) | 日記