2016年04月08日

枯木の聖母

petrus christus Thyssen Bornemisza.jpg

 マドリードのティッセン=ボルネミッサ美術館 にほんとに小さな板に描いた油絵がある。縦がたった15cmもないという小さな板絵である。そうとう昔、この図版(上イメージ)をみたとき忘れがたい印象を受け、2005年にマドリードで、実物をじーーと観賞したものだ。

  世界の美術館 シリーズなどで紹介されたことがあるので、日本でも知っている人はいると思う。ベルギーのブリュージュで活動していた画家Petrus Christus(?-1472/73)の作だとされている。20世紀初めころは、ベルギーの個人コレクションにあり、スイス ルガーノのティッセン=コレクションに移り、ティッセン=コレクションがマドリードに落ち着いたため、ここで展示されているのである。

  実に不思議で神秘的な絵というか構図で、枯れ木の上に聖母子が出現して、枝に15個の「A」がぶらさがっている。これはリタニー(ロレートの聖母連祷)にある15のAVE(聖母を賛美する呼びかけ)の象徴らしい。斬新で変わった構図や発想でも絵画的な魅力がないものでは芸術作品といえるかどうか?ということもある。これは小品ながら、構図や構想の斬新さと絵画的な上手さ・味が両方備わっている魅力的な作品だと思う。実物が非常に小さいので、むしろ図版のほうが印象が強いかもしれない。

 同様なテーマの絵は他でみたことがなかったのだが、最近、昔買ったパンフ・カタログをひっくりかえしていたら、2009年にブリュージュで買った小さなオランダ語(フラマン語)のパンフの中にみつけた(下イメージ)。
 パンフの標題は、Shilderijenpelgrimage verborgen meesters in Brugge Kerken en Musea たぶん「絵画巡礼 ブリュージュの教会と美術館」というところなんだろうな?オランダ語はできないのでいいかげんです。
 この絵はブリュージュの聖ワルプルガ教会にあるという。このワルプルガってのはワルプルギスの夜というのと関係あるんだろうな。
  https://en.wikipedia.org/wiki/St._Walburga_Church_(Bruges)
 こっちの現物は私は観たことがない。1620年というから上の絵より150年ぐらいあとの作品で、115x150cmという普通の大きさの絵だ。 風景の中の枯れ木というセッテングになっている。ペトルス=クリストスの作品より少し俗っぽいというか神秘感や緊張感が少ない。枯れ木に「A」がぶら下がってはいない。描いた画家Peter Claeyssens the Youngerが有名な人ではないせいか、この絵は図版すらめったにみることができないようなので、あえて紹介してみた。

 上の絵はこういう大きな絵から切断されたものなのか?それとも逆にこういう絵は、小さな絵から構想を膨らませたものなのかは考えるところである。

Vierge Bois STWALBRUG Claess.JPG
posted by 山科玲児 at 07:51| Comment(0) | 日記