2016年06月11日

ボス  快楽の園 の模写


 エスコリアルへ5月31日へ行ったとき、快楽の園の左翼の模写をみた。少し小ぶりに模写したもので、フェリペ2世の寝室のすぐ脇にかけてあった。そのときは、これは2001年にボイマンス美術館のボス展でみたものではないか?と思ったが、なんか小ぶりだなあ?と思っていた。ところがボイマンス美術館のときの目録を調べ直したら違いました。ボイマンスで観たものはプラド美術館にある少し大きな、原作とほぼ同じ大きさの模写でした。

 プラドの目録 CREATION Copy Inventry No. Po2053
 https://www.museodelprado.es/coleccion/obra-de-arte/la-creacion/b5cb7209-0009-4b8f-ab20-d6db0617a9fa
   188x77cm
もと、1794年には今のプラドあたりの王宮にあり、1839年にはエスコリアルにあったものだそうです。

  そうなると、この左翼だけの模写が2つあることになる。
 ところで、このエスコリアルで観た小型の模写には、面白いところがある。年輪年代法で年代を測定したらこの絵が描いてある板は原作の板より古いのだ。1447年以降で、原作の1458年以降より10年以上古い。これは明らかにコピーなんだからコピーのほうが制作年代が古いってことはありえないから、コピーの年代を基礎にして年代を推定しないといけないわけだ。
 この測定データの根拠は、これ。
P. Klein, "Dendrochronological Analysys of Works by Hieronimus Bosch and His followers", 2001,Rotterdamボス展の研究論文集に収録。

 今回のプラドのボス展では、この模写2つはどちらもでていなかった。カタログは全部読んでいないけどなんか研究が掲載されているかもしれない。

 この絵の中央画面の模写は、少なくとも2つはある。
 一つは、
 2016年02月06日
 ブダペストのボッス
    http://reijiyamashina.sblo.jp/article/173544614.html
で言及したブダペストのもので、痛みがすざましいが、結構いい。


  もう一つは2001年 ボイマンスでの特別展ででたミヘール=コクシーの作品か?といわれる個人蔵のもので、人物が皆 人形みたいで、あまり感心しない。きれいだけどなんら心をうたないものだ。コクシーなら、もうちょっと上手く写しそうだがね。

posted by 山科玲児 at 10:11| Comment(0) | 日記

ボス  三賢王礼拝 の寄進者 続

bosch epiphany prado grisalle detail donors.jpg

昨日紹介した、
 Eric de BruynのXavier Doquenne論文を紹介した文章(2012年)
    Doquenne 2004
  http://expert.jeroenboschplaza.com/ericdebruyn/duquenne-2004/?lang=en

には、更に面白い推定があるので、紹介したい。

 それは、この祭壇画の外側にモノクロームで描かれた絵の一部に、多少色をつけて描かれている二人の人物のことである。

 上に⇒をつけた部分イメージをあげる。下のURLでは全体をみることができる。
Adoraton of Magis Prado  Grisaille
http://www.wga.hu/art/b/bosch/91adorat/02tripty.jpg

 この二人は明らかに、後で付け加えられたもので、ボスの筆ではない。
 この紹介文では、右の少年は Peeter Scheyfve(ー1506)とその妻Agnes de Grammeの実子の Jan Scheyfve  左端の年輩の男性は Agnes de Grammeの父親、つまり少年の祖父のPeeter de Grammeではないか? と推定している。

 これは、なかなかうがった見方であろう。Peeter Scheyfveが再婚したあと、先妻が描かれた祭壇画は、後妻にとってはちょっと邪魔だっただろうし、息子にとっては重要な遺品であっただろう。また息子の後見人的立場であった、有力者の祖父:Peeter de Grammeにとってもたいせつなものであったと思う。おそらく、一端Gramme家に絵は移ってそこで加筆されたのだろう。描いたのはアントワープ在住のさして上手くない画家だったようで稚拙である。

 こういう人物の加筆は、絵画の制作中にもしばしばあるようである。その件はまたあとで。


posted by 山科玲児 at 05:38| Comment(0) | 日記