2016年06月19日

トレド行 その2

toledo 3.JPG

6月2日
 夜明けが意外に遅く、六時になってもまだ暗い。よる10時ごろまで明るいところを考えると、どうもよるが短いだけではなく時差に問題があるのではないかと思っている。サマータイム採用のせいかと思う。
 昨夜 カメラの電池が切れてしまい予備電池をマドリードに忘れてきていたので、今日の写真は、ケータイでの写真になってしまったのが残念だ。
 夜明け後にみづくろいして、ちょっと普通いかなさそうな散歩コースを歩いてみた。サンジュスト、インファンテ、サンイザベルなどのあまり観光拠点がない地区を選んだ。 そこらは3叉路や見通しの悪い路地の連続で思わず身震いしたくなるような独特の雰囲気がある(上のイメージ)。確かにブリュージュにも似ているが、ブリュージュはまっ平らである。トレドは起伏が多く坂道になるのでよけいに見通しが悪く刺激的だ。あまり危険や邪悪な気は感じないが、不思議な世界だった。
  実は、ヒエロニムス=ボスの作品は一時、ここトレドに多量に集積されていたらしい。「快楽の園」自身アルバ公が没収したあとは、たぶんここトレドに何十年もあったはず。このサンイサベルに葬られたスペイン王女もまたボス作品のコレクターだったいうことをカタログで読んで、後でだが、奇妙な縁に粛然とした。やっぱりトレド行きには必然性があったのだ。

 このあたりは安宿も多いようだが、サンイサベルの近くに、とても気のよさそうなおやじが古風な建物でやっているホテルがある。スペイン語しか通じないのが欠点だが、旅行スペイン語程度を学んでも泊まってみたいと思わせる宿であり、カルロスVの親父の不機嫌さとは対照的であった。
 Tripadviserのコメントだと英語が通じるといっているが、親父にはほとんど通じない。たぶんスタッフに堪能な人がいるのだろうけど、嘘っぽいコメントは感心しないなあ。

ホテルへもどって、
 トレドのカルロスVの朝食は豪華な食堂であったが平凡。こんな食堂があるのなら、もっと使ったほうがもうかるだろうにと思ったものだ。
 博物館などの施設は10時からなので、まずモーリス=バレスもいっていたサンマルタン橋まで歩いていって、橋をわたってみようと思った。橋とはいっても豪華な城門がある文化財でありローマ橋だといわれている。昨日観光用乗り物でトレドの外側からこの橋をみていたので今度は、内側からみようというわけだ。帰りは定番のグレコのサイトや、アラブ的な建築のサンたマリア ブランカにいけばよいと、おもった。
 まず スペイン王肝いりの修道院の豪華な建築を外からみて、サンマルタン橋にいったつもりだったが、なぜか西ゴートにさかのぼるという古い別のCambron門のほうにきてしまった。考え直して、サンマルタン橋にいったのだが、掃除のおばさんたちの話では現在は通過できないとのこと。しかし、脇からみても絶景なので十分満足した。
 そのあと、サンタマリアブランカにいったが、まだあいてない、門に乞食のおじさんがいてなんかいっていたがききとれぬ。 しょうがないので、サントトメにいった。ここサントトメはエルグレコの「オルガス伯の埋葬」で有名で、どうも19世紀、モーリス=バレスのころから、観光地で、住持というか坊さんが金切り声をあげて説明したりしてうるさかったらしい。
 私がいったときも、まあなんというか団体がおしかけていて、しかもちょうど私のまわりが韓国人の団体で韓国人ガイドがうるさく説明していて話にならない。そもそもここはオルガス伯のお墓でその上に大きな絵があるのであるが、誰一人死者に敬意を表す人はいない。一応拝観して退散した。プラドでいろいろ観た結果、エルグレコもムリーリョもサイズ的に大きい絵ほど傑作だと思っているが、この「オルガス伯の埋葬」も破格に大きな絵である。

Toledo St Maria Blanca.JPG


  うんざりして、グレコの家にもいかず、サンタマリア ブランカにもどったら、あいていた。なんとなく嬉しくなって、キリストの小さな画像をおくなど古典的な「教会の前の乞食」をやってるおじさんについコインを恵んでしまった。神のお恵みをとかいってくださったようなので、こちらもDEO GRATIASと答えて相互とも貸し借りなし。まあいいんじゃないの・ このサンタマリアブランカは、正確にいえば聖堂ではなく遺跡である。 おそらく倒壊状態に近い建築を丁寧に復元補修したもので、住持住僧もいないようだし、祭壇もない。
 しかし、なんとも静寂で静謐なアラブ風の空間を作っているのでおちつけた(イメージ)。私がいた間、観光客らしき人はほかに1人の女性のみ。それも、なんか心得がありそうな人だった。



Toledo ST Cruz.JPGToledo  st cruz mozaique.JPG

  ここで満足したので、定番のサンタクルズ美術館にいこうとした。ところが、入り口になかなかたどりつけない。ここまで有名なくせにたどり着きにくい観光スポットもめずらしい。ようやくたどりついたら、なんとギャラリーが開いていない。番人は、あっちの扉へいけと指し示すのでいったら、中世の修道院のクロイスターを再現した建物(上左)でとても美しくくつろげるところだった。古めかしいイスも点在してすわっていいようだ。ここでしばし過ごした。このクロイスターはスペインの修道院の遺跡を移築したもののようだが、壁際にいろいろな石造物が展示されている。ミラノのアンブロジオ バジリカの回廊を思い出した。また
ある壁にはトレド近郊の河沿い遺跡からでた3世紀の愛らしい大きなローマ時代の モザイク(上右)が移されていた。このモザイクは色も美しくなかなかみあきなかった。近現代美術の小企画展示をやっていたが、トイレの横に古い聖カテリナの大きな像があったりして、トレドだなあ、と思った。
  まあ、午後にはあいてるかもしれないと思って ホテルのほうへいく。途中にホテル近くのCARLOSV親父推薦のトレド名産の金銀象嵌 ダマスキーノの店にいく。カフスボタンをマドリードに忘れてきていたので、これも天意かとカフスを買おうと思ったからだ。たぶんこれが本をのぞいて自分のために買う唯一のおみやげになりそうだったから。店の女性はカルロスVの紹介ときいたらまじめに対応してくれ、ハンドメイドとマシンメイドの区別もはっきりさせて、こちらはハンドメイドで35、こちらはマシンメイドで13というように親切に対応しくれた。店の人の意見もきいて購入。ホテルへいってチェックアウト。貴方が推薦した店で買ったカフスだと袖をみせると不機嫌な親父がはじめて笑顔をみせた。
Toledo Calle Silleria (1).JPG

 昼食(スペインではメインの食事)を昨夜ビールを飲んだ 店でやろうと思っていったら、1時〜だという。しょうがないのでそこらの路地をぶらついた。綺麗なパティオが奧に見える家(イメージ)があって、みていたら主婦らしいおばさんがでてきたので、お庭がとても美しいですね、と褒めたらうれしそうな顔をしていた。

 昼食は、定食をとったが、選択したつもりが観光客という配慮でだろうが少しずついろんな物を盛り合わせてでてきたので、かえってよかった。ただ、チーズのディップ、海鮮コロッケ、豆の煮物は良かったが、メインの肉と鱈は、それほどでもなかったので、ちょっと残念。ここはビールが得意のようなので濃いビールをドリンクにした。

 さて、サンタクルズ美術館に戻ると、やっぱり開いていない。やっぱりダメかと思ったら、バックパックめいたおじさんが来ていて抗議している、かなり粘っているのでどうなるかな、とも思ったが待つのもやなので、またあのクロイスターズにいって寛いでいたら、大きな声で係員の人が怒鳴る声がきこえ、無理に追い払ったらしい。なんかなあ、、 そのうち、大きな絵を美術館から運び出していたりしたので、ああ、これが閉鎖の原因か? なんか貸し出しやメンテが急に必要になったんだな、運が悪かった、と思ったものだ。
 なんか、プラド美術館が、5月30日に急にラトゥール展を閉鎖にしたように、泥縄で急に閉館にしちゃったんだな。トレドって半日観光日帰り観光の人が多いから、ここでエルグレコ観たいという人には最悪だから、怒るのも無理はない。 実は当方はグレコにはあまり執着はなかったので怒らなかっただけである。 ちゃんとギャラリーの前に大きな掲示「Today CLOSED」とか出せば、それだけでも抗議する人が半分以下になるけどねえ、なんでしないのかなあ。

  どうも、スペインの美術館では、この種の泥縄の急な閉鎖というのがあるので、どうしてもみたい絵があれば、日を替えて2回みるように保険をかけておいたほうがいいようだ。
  まあ、ピサグラ門を観に駅のほうに歩いていくことにした。途中お土産物やがあったけれど、スーツケースに貼るトレドの紋章のシールを探したが意外にない。あった店はシエスタなのか閉めていた。ピサグラ門はなかなか良かった。もう暑いのでタクシー拾って駅までいった。駅では日本人旅行者も待ってました。
   この駅のつくりは、いわゆるアラブ風でなかなか面白い。

 さて、マドリードのアトーチャ駅にたどり着いたのは良いが、タクシー乗り場がどうしてもみつけられなかった。困って,IMFORMATIONに訊いてもまったく要領をえない。地図が必要ですね。しょうがないので、近郊線を使ってSOL駅までいくことにしてアトーチャ駅を「脱出」した。
 トレド旅行には、このAVANT列車が楽なんですけど、アトーチャ駅案内をガイドにつけないといけないな。バス旅行の場合は、トレド旅行への出発バスターミナルはかなり端っこの駅になるので、いやだなと思ってアトーチャ駅にすると、この問題がある。スペイン政府観光局・トレド市観光局に提案してみたいな。

 (しかし、わからないものはわからん)

グレコ―トレドの秘密  1996/1
モーリス バレス (著),    Maurice Barr`es (原著),    吉川 一義 (翻訳)

posted by 山科玲児 at 16:54| Comment(0) | 日記

トレド行  その1

toledo cathedral el  transparente.jpg
6月1日15時ごろ
タクシーでアトーチャ駅へいった。
このアトーチャ駅が、まるで迷宮でさっぱりわからない。エスコリアルやアランフェスへいく近郊線ともっと遠くへいく長距離線はわかりやすいのだが、全くわからない。トレドという中間ぐらいへいく列車のホームは何度もきいたあげくようやくみつけた。まるで売店の間を通っていくようなめだたない入り口だった。
スペインは観光に力をいれているのだから、もう少しこういうとこまともにやってね。
ところで、アトーチャ駅には、翌日もう一度泣かされることになる。

 トレドについた後、駅で明日の16:18発のマドリード行き切符を買っておきました。もう歩きたくないので、タクシーでホテルカルロスVへいった。チェクインして驚いたのは、呼び物のテラスのバールはなし、立派な食堂は朝食にしか使っていないということだ。宿の親父は不機嫌だったので、どうも印象がよくない。 それでも一応推薦レストランをきいた。


  一応、まず大聖堂にいったのだが、そうするとサンタクルズ美術館にまにあわなくなってしまって、これは後から考えたら失敗だった。
 この大聖堂、周囲に全く広場がなく、街の中に埋もれている。つまり大聖堂の入り口前にすらあまり空間がない。 まあ、パリやミラノなどの聖堂でも中世はたぶんこんな風で、その後、都市計画で整理して現在在に至っているんだろうが、それでもこれだけ中世風をそのまま保存しているところは珍しい。

 モーリス バレスが、どこをのぞいてもおもしろいものがあると批評している大聖堂であるが、確かに広大であり面白い。合唱席の背後の超マニエリスム的な彫刻は奇想としては、確かにものすごいもので、
山尾悠子のある作品はこの彫刻の図版に想を得たものではないか(上イメージ)?


  また、天井に下をのぞき込む聖人を描くというのはイタリア絵画にはままあるが、ここでは本当に丸窓を空けてその周囲にのぞき込む聖像丸彫り彫刻を配している。さらにその上に天上のだましえ的天井画を描くという念のいったものがあって呆れてしまった(下イメージ)

Toledo Catedral ceil.JPGToledo Catedral  ceil detail.jpg





こういう仕掛け的なものは、なかなか面白い。
また、スペインのオルガンのお約束ながら、派手にトランペット管が飛び出ていてよかったので撮影した。

  パラドールからの景色に近いものを安易に楽しめる観光バス、それもチンチン電車のような格好をした小型のかわいらしい観光バスがトレドにはある。機能的には、上が屋根なしになっている観光バスと類似しているが、なかなかいい。なぜかというと、バイクや車なしに、展望台やパラドールの近くまで安易にいくことは、健脚の人はともかくとして、特に暑い日差しの中ではかなり難しいので、このツールを使わない手はないのだ。観光地では観光客らしくしなければならない。SOKOTRAINという呼び名だったこともあるようだが、今はToledo Trainvisionと呼んでいるようだ。
Toledo Trainvision  Turismo Familiar Toledo
http://www.toledo-turismo.com/turismofamiliar/os_hace/zocotren/

Toledo train.JPG


 このバスの切符を買う売り場がソコドベール広場にあって、これがまた機関車のような形をしていて良い。発車時刻になると列ができるが、一人の場合は、むしろ列の後ろのほうがいいかもしれない。というのもトレドの景色がよくみえるのは、進行方向へむいて右側の席である。一方、乗り込むときは右側から乗り込むので早く乗ると左側に詰めざるをえないので右側に座れないのだ。そういう点では私は幸運だった。

  記念撮影などもやって、観光客やったあと、ホテルへいったんもどり、Sellis通りの先、聖ニコラ広場(事実上広場ではなく空き地ともいえない)の推薦されたレストランAVADIAに夜食を食べにいった。もう9時ぐらいだがまだまだ明るい。
 カウンターでビールを飲んでピンチョスをつまむ。
 そのあと、ホテルへもどって バスを使って 睡眠。
  その前に暗いうちにホテルの窓から撮ると、まるで西洋時代劇みたいな写真が撮れた。
Toledo ホテルの窓から.JPG


REF.
グレコ―トレドの秘密  1996/1
モーリス バレス (著),    Maurice Barr`es (原著),    吉川 一義 (翻訳)
posted by 山科玲児 at 09:52| Comment(0) | 日記

快楽の園 と ゲント祭壇画

569px-Garden_delights_centre_panel_lossless_crop[1].jpg




  プラドにあるボスの快楽の園 の最大の謎は、そのスペクタクルとでもいうべき中央画面(イメージ)である。

  謎また謎なんだが、最近3度ほど現物を丁寧に観、更にカタログをひっくりかえして、いろいろ考えたことのなかに、小さなおもいつきがある。

 それは、こういう構図をどこかでみたような気がするということだ、それは、あの偉大なファンアイク兄弟のゲント祭壇画の中央下部

 神秘の子羊の礼拝 の大画面(下イメージ)である。

 そりゃ、ゲント祭壇画のほうは、謹厳な聖職者聖人聖女預言者天使たちが大挙して集まってくる画面で、快楽の園の大部分が若く美しいヌードの男女が集まってくるのとは正反対である。ゲントの祭壇画への冒涜だという人もいるだろう。しかし、全体の左右対称的構造、運動性、中心の生命の泉、遠景の風景画的処理などの点でかなり近いものを感じる。

  というより、現在まで残っているこの時代の西洋絵画をざっとみると、この2つはかなり類似する。

  おまけに地理的に近く、ボスはゲント祭壇画を観ることができた可能性がかなり高い。というより、観たに決まってるんだろ、といいたくなる。

 この相似について、触れた人がいただろうか??



800px-Hubert_van_Eyck_004[1].jpg


posted by 山科玲児 at 09:07| Comment(4) | 日記