2016年10月10日

北ブラバントに展示された快楽の園

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  今年2月から5月まで北ブラバント美術館で開催されたボス展は、プラドと並ぶ、ボス逝去500年の記念展覧会で、日本のマスコミでは、むしろ北ブラバントのほうを大きく報道していたように思う。当方は予算の関係もあり北ブラバントにはいかず、プラドにしたのだが、ラインアップを推察すると、愚かな日本のマスコミのミスリードであったようで、当方としては良かった。
 この北ブラバントの展覧会の展覧リストは出ていなかったので概略しか知ることはできないのだが、代表作「快楽の園」は貸し出されていないということは、報道されていた。

 しかし、「快楽の園」の左翼「創造・楽園」の精密な同時代のコピーは展覧されていたはずである(プラドのサイトの記録による)。
 実は、このコピーはプラドにあるもので、私も、2001年のロッテルダムでのボス展で観賞して、非常に良く出来ていると感心した記憶がある。実際、プラドのサイトで拡大してみることができるのだが、原作の写真図版と比較して欲しい。果たして差をどれだけみつけることができるだろうか。
 サイズも殆ど同じである。この2つを画像や写真で比較すると、現物をみないで画像で比べて判断することの危険を再認識せざるを得ない。

 実のところ、ロッテルダムのボイマンスで観たときは、原作から外して借りてきたのかと思ったぐらいだが、よくよく観ると、微妙に絵の肌合い、筆勢、や人物の表情、体格などが違うので、ロッテルダムでもコピーだと納得はしたものだ。ただ、これは明らかにボスの工房 あるいは非常に近い画家が作ったレプリカだろう。

 北ブラバントに行った人の観賞記で、この作品に対するコメントがないようなのは、不思議なことだと思う。

 ちなみにエスコリアルには、もう1点この左翼「創造・楽園」のコピーがある。これはフェリペ2世の寝室のすぐ脇に飾ってあって実見した。こちらはかなり小ぶり(高さ1mぐらい)で、縮小コピーである。精密度も落ちる。ただ、エスコリアルのほうの基底材は原作より10年も昔に伐採したものであり、非常に古い材木を使っている。原作よりコピーが先に制作されたなんてありえないのだから、原作の制作年代はコピーの年輪年代法による年代をもとにして更に遡ることになる。

 今回のプラド美術館のボス展では、このレプリカは展示されていなかった。エスコリアルのコピーも展示されていなかった(エスコリアルで観た)。他にもプラド美術館が所蔵しているのに展示されていないボス風の作品が2,3あるようだ。なぜ今回展示しなかったのかはわからないが、惜しいことだ。後日 論評してみたい。


posted by 山科玲児 at 07:51| Comment(0) | 日記