2017年01月27日

ペトルス  クリストス作品の問題




Petrus_Christus Annunciation.jpgPetrus Christus Annunciation RED.JPG



左イメージは、1987年のブリュージュ市立美術館(グロニンヘン美術館)のカタログに掲載されているペトルス=クリストスの愛らしい「受胎告知」である。
ところが、
2005年に科学調査をしてみたところ(ref.)、右イメージの赤い部分は全て後世の手が入った塗り直しで、少なくともオリジナルの絵をみているわけではないということがわかった。真っ赤じゃないの、ほとんどちがうんじゃないの、これは。残っているところは、聖母と天使の服の一部、背景の右上、、だけ。
これでは、細部をどうこう分析することは上塗りを批評することになり意味がなくなってしまう。


Petrus_Christus Nativity.jpgPetrus Christus Nativity RED.JPG


ほぼ同時にこの美術館に入った「聖誕」も、2005年にまた検査された(Ref)。
同様に真っ赤でなにをみているのかわからない。重要な部分でまともなのは聖母の顔と下着と手・腕ぐらいじゃないの。美しい右上の天使たちも服はともかく顔は全て後世のもののようだ。なんてことだ。

  両作品とも1983年ごろにマドリードあたりから出て美術館に入ったものだが、こういうことがわかって以来、これらの絵は展示からはずされ、初期ネーデルラント絵画の本にもでなくなった。 原作ではない、というわけではないがあまりにも修理・上塗り部分が多すぎるからだろう。 ただ、古い本ではペトルス クリストスの代表作のひとつにあげられているから要注意である。

そうはいっても、ブリュージュのペトルス=クリストスには、ろくなものがないというわけではない。
は良さそうですよ。

 他にも
 こういう上塗りや乱暴な修理や改造を施したペトルス=クリストスの絵は少なくないのではなかろうか。
ワシントンナショナルギャラリーの「聖誕」 
http://www.nga.gov/content/ngaweb/Collection/art-object-page.47.html
は、ブリュージュのそれとよく似ているが、やはり多少問題があるようである(Ref2)。
こういう華やかな絵は需要が多いせいか、きれいきれいに改造されやすいのかもしれない。

 一方、ワシントンナショナルギャラリーの2人の寄進者肖像
http://www.nga.gov/content/ngaweb/Collection/art-object-page.46109.html
http://www.nga.gov/content/ngaweb/Collection/art-object-page.46110.html
は「状態が良い」んだそうで、信用できそうだ。

この地味な絵が60年も前の本
Flemish Painting: The Century of Van Eyck
by Albert Skira (editor), Jacques Lassaigne 
Published 1957 by Albert Skira Lassaige
に大きくでているということにもそれなりの意味があるようだ。当時の著者たちもなんとなく感じていたのかもしれない。

Ref.
Restaurateurs ou faussaires des primitifs flamands
This  is a catalogue(French text, Dutch versions issued,too)  of an expositionn  which held  in Groeningen Museum in Brugge,2005.

Ref2
posted by 山科玲児 at 16:33| Comment(0) | 日記

収集家が陥る罠


 2016年12月に放送された鑑定団で、曜変天目という誤った鑑定をした事件について。演出した仕掛け人の肖像を想像していたが、電通や博報堂などの広告代理店の担当という線より、テレビ東京の上役という線のほうが、もっともらしい気がしてきた。

 ディレクターの上に制作を監督する役職が当然いる、新聞でいえば編集局長編集委員にあたるだろう。テレビ東京ではどういう名称なのかは知らない。こういう役の人は場合によっては役員であることもある。おそらく近年この鑑定団の担当を兼ねることになり、低迷する視聴率を押しあげようと勉強し、奮闘努力した結果がこれなんだろう。
 あくまでも善意の努力であるが「地獄への道は善意でしきつめられている」(マルクス←ジョンソン←聖ベルナール)ことを、またも裏書きしたのかもしれない。
 高収入とも想像したが、おそらく年収2000万以上、2500万という半端な評価額は、そこからでたのだろう。

 今回、この曜変天目のことで、再び連想したのは、初心者の好事家、コレクターが陥りやすい罠のことである。おそらくこの人X氏もこの罠におちこんでいたのではないか?「罠」と書いたが意図的ではなく犠牲者自身が喜んでとびこむのである。それどころか脇から忠告してもききいれないことの方が多い。
それは、「本にものっている有名な国宝クラスのものを自分が買うことができる、または発見した」という妄想・勘違い・先入観である。古美術収集の初期には、多かれ少なかれこの妄念にたぶらかされるものである。そしてその後、手ひどい失敗と失望を経験して「諦め」を会得する。まともな収集が始まるのはそこからである。そこで収集自体を止めてしまう人も多い。特にお金持ちで買うばかりで売ることがない人の中には、数百点のコレクション全体が贋作ばかりで価値がゼロということも少なくないから、そういう人の場合は、いったん気づくとイヤになって当然だろう。

  勿論、国家が滅びるときや戦争の最中などには、、「本にものっている有名な国宝クラスのものを獲得する」こともないとはいえないだろう。円明園の略奪のあと英国人軍人から女史シン図巻を買ったローレンス ビニヨンの経験はそうであるし、また現在ISIS関連でパルミラやイラク、オリエントの骨董は真偽とはずかなり流れているかもしれない。ただ、そういうことは一生に1、2回あるかないかと思うべきで何度もあるものではない。ビニヨンも女史シン図巻一つだけが成功で、それ以外では堀出し経験はないようである。ビニヨンが編輯した中国絵画の本の図版をみると、出土品を除けば、うんざりするような作品ばかりで、女史シンを除いたらXをつけたくなるものが続出している惨状だからだ。





posted by 山科玲児 at 15:37| Comment(4) | 日記

2017年01月26日

鑑定団 曜変天目の仕掛け人の肖像


  2016年12月に放送された鑑定団で、曜変天目という誤った鑑定をしたことは、普通なら、「ヴァラエティ ショーのジョーク」「またか、どうしようもないな」で終わり、専門家は皆無視し、正月が明けたら関係者は皆忘れて終わっていたはずである。そうならなかったのは、事前に「国宝級」「鑑定団始まって以来の大発見」と、あおり立てた上に、共同通信が配信し事後に日経産経が記事にしたからである。マスコミの無能さは深い。

  この奇妙な事件はだれが演出したんだろう。中島誠之助でないことは明らかだ。もし中島ならもっとそれらしい陶磁器をもってくるだろう。いくらなんでもあんなひどい天目茶碗をもってくるはずはない。100万歩譲っても高台裏の「供御」の文字は削って古色付けするだろう。あれはムチャクチャだ。それに中島には計画するメリットはない。むしろ強要された被害者ではないか。

仕掛け人の肖像として想像できるのは、

・骨董古美術界に、最近1、2年程度で急に頭を突っ込んだ人。
・安直な本を読んだり、怪しい3流骨董屋にチヤホヤされている人
・高収入がある人
・日本の歴史に、知識と関心がある人(三好氏とは上手いところをついている)
・共同通信にルートがある人
・TV東京の該当番組の視聴率を上げる必要がある人
・ディレクターを動かせる人、またはディレクター自身

  そうなると、ディレクターではないだろう。長くこの番組の制作担当をしていれば、いくらなんでも多少なりとも耳学問がつくものであるし、あやしいものでも番組ではうまくすりぬけさせスキャンダルにならないようにするコツは会得しているはずだ。今回のような失態にはならない。

  たぶん、電通・博報堂などの広告代理店の人で、最近、テレビ東京担当になった人だろうと推理している。あるいはディレクターより上のテレビ東京の幹部か? 勿論、助手役助言役としてハタ師の骨董屋がついているのだろう。東京だけでなく地方へ飛び回ることに慣れた人の面影が見え隠れしているから。



 
posted by 山科玲児 at 06:24| Comment(0) | 日記

2017年01月25日

自画像と顔が違う

金農 自画像.JPG   金農 清代学者像伝detail.jpg
2012年10月22日
清代学者像伝 の弊害
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/59426360.html
で、肖像画が本人と似てないという問題を提起しましたが、この金農の肖像も全く別人ですね。
清代学者像伝:: 金農 (イメージ右)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:%E9%87%91%E8%BE%B2.jpg
イメージ左 の金農の自画像(北京  故宮博物院 )とは全く違います。
また、金農の弟子 羅聘が描いた顔とも全く違いますね。
どこかで別人の肖像と入れ違ったんじゃないかな??

  もっとも、20世紀日本のアーティスト 高松次郎の下イメージのような奇矯なウイットのある自画像もあります。
[自画像」の描き方. 芸術新潮. 1977年12月号 通巻336
(本の表紙は著作権に関係なく公開できるようですから公開しますね)

ソース REF  名人人物集  上海西レイ印社、  1934

芸術新潮 高松次郎.JPG

posted by 山科玲児 at 09:59| Comment(0) | 日記

マスコミはなぜ喜ばないのか?


トランプ大統領、TPP離脱の大統領令に署名

ひとまず、良かった。
朗報です。

日本のマスコミはなぜ喜ばないんだろう。
まるで、TPP離脱が悪いことのように報道している。
TPPを日本から米国に頼み込ませようと策動してるのだ。
どこから金もらっているのかミエミエだね。


農協なんか、大騒ぎで祝祭を10日ぶっつずけにやって、各農協では新米をお祝いに配ってもいいくらいだろ。

もっと喜んでいいのに、なにをビクビクしているのだろうか。
マスコミの洗脳、おそるべし。


posted by 山科玲児 at 08:18| Comment(0) | 日記

動画再生31,000回超え

偽物?なんでも鑑定団 曜変天目茶碗 長江惣吉
https://www.youtube.com/watch?v=Alv5U05Trng

の動画再生回数が31,000回以上になったようです。
良いことですね。

動画がYoutubeから一度消えた直前に、5,000回ぐらいでした。それも確か30日程度の累積合計で5,000回程度だったと記憶しております。

昨日1日で14,000回以上増えたのですから、
一気に認知が広がった感じをうけますね。
posted by 山科玲児 at 07:02| Comment(0) | 日記

2017年01月24日

長江惣吉氏の講演


なんでも鑑定団・国宝級茶碗に陶芸家「どう見てもまがい物」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170123-00000007-pseven-ent
偽物?なんでも鑑定団 曜変天目茶碗 長江惣吉

で、マスコミの下劣な策謀に一石を投じた長江惣吉氏ですが、研究家陶芸家として、地元の瀬戸の古い陶磁器「古瀬戸」と中国の南宋時代の陶磁器についての優れた講演をなさっています。

「古瀬戸と南宋の陶磁技術の比較」長江惣吉氏

実技と学殖をともに感じさせる優れた講演で、下手な大学教授の講演よりよほど聴かせます。単なる陶芸家じゃないですね、この人は。実は当方は「古瀬戸」にはそれほど知識はないので勉強になりましたし従来疑問に思っていたことがより明解に解説されておりました。また、普通の本ではでてこないような話もありました。
 それで、もっと講演の動画ないかな。と思いました。ご存じの方ご教示ください。


posted by 山科玲児 at 08:16| Comment(0) | 日記

動画再生17,000回超

偽物?なんでも鑑定団 曜変天目茶碗 長江惣吉

の動画再生回数が17,000回以上になったようです。
良いことですね。動画がYoutubeから一度消えた直前に、5,000回ぐらいでしたから、一気に認知が広がった感じをうけます。

それでも、まだ中島信者なのかテレビ局の回し者なのかが「実物をみないとダメ」とコメントしてます。

  確かに、巧妙な贋作・倣製品・偽物の場合は実物をみないとわからないのは確かです。それどころかカラー写真では偽物のほうが良く見えたりします。

 しかし、この件は「柴犬を画面にだしてプードルと鑑定」したのを、テレビで無批判にそのまま放映したようなもので、実物をみなくても明々白々です。中島誠之助なら一目でわかるレベルです。まあTV局ディレクターやプロダクションに強要されたのでしょうが。。

  それでも「これも犬なんだからプードルかもしれないじゃないか。実物を見ない奴に何がわかる。」と強引に主張している連中の多いことといったら、まあその筋の人たちなのかもしれませんが呆れます。
  ネットユーザーの古美術リテラシーの低さを痛感するこの頃です。


posted by 山科玲児 at 08:04| Comment(0) | 日記

2017年01月23日

週刊誌サイトにでた曜変天目


なんでも鑑定団・国宝級茶碗に陶芸家「どう見てもまがい物」

  ようやく週刊誌とはいえ、マスコミに出ましたか。

 この件に限り、日経新聞・産経新聞・共同通信は週刊誌以下の見識しかないということがはっきりしました。テレビ東京から頼まれたんじゃないの??

 中島誠之助氏なら一目みてひどいとわかるような茶碗なんだから、あの鑑定はおかしかった。TV局のプロデューサーやプロダクションに無理強いされたんだろうな。事前にリークして煽って視聴率を13%以上にあげたのもいかにもTV局のしわざくさい。

消えていた動画も再アップされたようです。裏で話がついたのか多少訂正したのか、よくわかりません。
  URLが変わっています。過去のブログも訂正しなけりゃいけなくなりました。動画にクレームつけたであろう首謀者は人に迷惑かけておいて、、ほんとにいいかげんにしてほしいね。

偽物?なんでも鑑定団 曜変天目茶碗 長江惣吉

posted by 山科玲児 at 10:51| Comment(0) | 日記

南海の道




頭塔Image1.jpg  borobdur  total  birdeye.JPG




 何十年も前から、注目し親しんできた、奈良の頭塔(上左イメージ)が簡単に見学できるようになったようである。

「奈良のピラミッド」頭塔、観光客に人気 常時公開で 
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG21H1Q_R20C15A9000000/
 >隣接するホテルウェルネス飛鳥路の受付で協力金300円を払えば、気軽に立ち寄れるようになった。
 九時〜17時ということなので、夏などあまり遅く行くと断られるかもしれない。ライトアップもないと思うので、暗いと意味がないだろう。

 頭塔は規模こそ違え、ジャワのボロブドール(上右イメージ)を連想させるものなので、南海から設計図などが伝来したものだろう。

ところが、
古美術 第3号 1963年10月25日 
杉山二郎   頭塔ー天平時代の石造浮彫の一例ー
を読み返したいたとき、最後に  頭塔の建設者の、東大寺の指導的な僧であった「実忠」に対して「わたしは実忠を新羅系帰化僧と考えている」といきなり出てくるのにうんざりした。こういう「帰化人」「渡来人」認定は、1963年当時では信じる人も多かっただろうが、現在では馬鹿馬鹿しい感じしかしない。
  まあ、東南アジア=上座仏教(小乗仏教)だから大乗仏教的な奈良時代の建築とは関係ない、だから朝鮮半島や中国からだと思いたいのだろうが、間違いである。現在の東南アジア=上座仏教だから古代もそうだったのだろうという固定観念が未だにあるので、1963年当時のこういう世代の知識人
杉山 二郎(すぎやま じろう、1928年9月14日 - 2011年11月30日)
が間違ってもしょうがないのかもしれない。

1977年刊行の、永積昭、東南アジアの歴史、講談社現代新書
は、中世近代以降の東南アジアの歴史を中心とした希有な本だが、これを読むと東南アジアが小乗仏教中心になったのは10世紀以降であり、それ以前は大乗仏教やヒンズー教などが入り交じった状態であったことがわかる。モンゴル侵攻当時のジャワの王は密教に凝っていた。
  仏教史的には古い時代に属する「小乗仏教」なので、「小乗仏教⇒大乗仏教」という発展史観進化史観に毒されてしまい、逆の「大乗仏教⇒小乗仏教」という歴史があるなんて、考えもしないのである。
  事実として、
    インドのベンガル地方出身の僧 カルナカラチャルヤ KARUNAKARACARYA が設計者だとつたえらている、ジャワ島のシャイレーンドラ朝の780年〜792年ごろのボロブドゥール遺跡は大乗仏教の遺跡だし、
 アンコールワットにバイヨンを築いた英主ジャヤーヴァルマン7世(1125年 - 1218年?/1220年?)は大乗仏教の信者であった。また、唐僧  義浄がインドネシアのスマトラ シュリービジヤを訪れたときそこの寺院は大乗仏教寺院が多かったようだ。
  ところが、その後カンボジアの宗教は「上座部」(小乗仏教)になっている。またタイが上座仏教(小乗仏教)になったのはスコタイ朝以後であるから13世紀以降という新しい時代のことである。
全く逆なのだ。

  したがって、頭塔が建設された当時、東南アジアには大乗仏教の学僧や関連技術者が多かったわけだから、ボロブドールを構想した人々の同類や南海に留学した唐僧、さらに唐僧に学んだ日本の僧侶などが日本にプランを伝えても少しもおかしくない。

写真ソース::頭塔:当方撮影
写真ソース::春山武松 ボロブヅゥルの建築と彫刻、仏教美術社、昭和3年 (写真著作権は切れてます)
ウイキメディアの ボロブドゥール Borobudurの写真
https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Borobudur?uselang=ja





posted by 山科玲児 at 06:57| Comment(0) | 日記