2017年01月27日

英語版もでた


偽物?なんでも鑑定団 曜変天目茶碗 長江惣吉 の英語版動画がでました

長江氏はあのことが共同通信によって、世界に配信されたのは恥ずかしいと言ってましたから、
その対抗策なんでしょうね。首尾一貫した立派な態度です。

ところで、この動画で役に立つのは陶磁用語の英語がわかることです。
英語で窯とか釉薬とかどういうか知ってますか?
実のところ古い便利な用語集もあって古美術商はよく使っています。
Haward Hansford,  A Glossary  of Chinese Art and Archeology, 1954,  2nd ed. 1972
ただ、ウエイド式のローマニゼーションなので問題があるんですよねえ。

日本語版はこっちです。
偽物?なんでも鑑定団 曜変天目茶碗 長江惣吉
posted by 山科玲児 at 19:37| Comment(0) | 日記

ペトルス  クリストス作品の問題




Petrus_Christus Annunciation.jpgPetrus Christus Annunciation RED.JPG



左イメージは、1987年のブリュージュ市立美術館(グロニンヘン美術館)のカタログに掲載されているペトルス=クリストスの愛らしい「受胎告知」である。
ところが、
2005年に科学調査をしてみたところ(ref.)、右イメージの赤い部分は全て後世の手が入った塗り直しで、少なくともオリジナルの絵をみているわけではないということがわかった。真っ赤じゃないの、ほとんどちがうんじゃないの、これは。残っているところは、聖母と天使の服の一部、背景の右上、、だけ。
これでは、細部をどうこう分析することは上塗りを批評することになり意味がなくなってしまう。


Petrus_Christus Nativity.jpgPetrus Christus Nativity RED.JPG


ほぼ同時にこの美術館に入った「聖誕」も、2005年にまた検査された(Ref)。
同様に真っ赤でなにをみているのかわからない。重要な部分でまともなのは聖母の顔と下着と手・腕ぐらいじゃないの。美しい右上の天使たちも服はともかく顔は全て後世のもののようだ。なんてことだ。

  両作品とも1983年ごろにマドリードあたりから出て美術館に入ったものだが、こういうことがわかって以来、これらの絵は展示からはずされ、初期ネーデルラント絵画の本にもでなくなった。 原作ではない、というわけではないがあまりにも修理・上塗り部分が多すぎるからだろう。 ただ、古い本ではペトルス クリストスの代表作のひとつにあげられているから要注意である。

そうはいっても、ブリュージュのペトルス=クリストスには、ろくなものがないというわけではない。
は良さそうですよ。

 他にも
 こういう上塗りや乱暴な修理や改造を施したペトルス=クリストスの絵は少なくないのではなかろうか。
ワシントンナショナルギャラリーの「聖誕」 
http://www.nga.gov/content/ngaweb/Collection/art-object-page.47.html
は、ブリュージュのそれとよく似ているが、やはり多少問題があるようである(Ref2)。
こういう華やかな絵は需要が多いせいか、きれいきれいに改造されやすいのかもしれない。

 一方、ワシントンナショナルギャラリーの2人の寄進者肖像
http://www.nga.gov/content/ngaweb/Collection/art-object-page.46109.html
http://www.nga.gov/content/ngaweb/Collection/art-object-page.46110.html
は「状態が良い」んだそうで、信用できそうだ。

この地味な絵が60年も前の本
Flemish Painting: The Century of Van Eyck
by Albert Skira (editor), Jacques Lassaigne 
Published 1957 by Albert Skira Lassaige
に大きくでているということにもそれなりの意味があるようだ。当時の著者たちもなんとなく感じていたのかもしれない。

Ref.
Restaurateurs ou faussaires des primitifs flamands
This  is a catalogue(French text, Dutch versions issued,too)  of an expositionn  which held  in Groeningen Museum in Brugge,2005.

Ref2
posted by 山科玲児 at 16:33| Comment(0) | 日記

収集家が陥る罠


 2016年12月に放送された鑑定団で、曜変天目という誤った鑑定をした事件について。演出した仕掛け人の肖像を想像していたが、電通や博報堂などの広告代理店の担当という線より、テレビ東京の上役という線のほうが、もっともらしい気がしてきた。

 ディレクターの上に制作を監督する役職が当然いる、新聞でいえば編集局長編集委員にあたるだろう。テレビ東京ではどういう名称なのかは知らない。こういう役の人は場合によっては役員であることもある。おそらく近年この鑑定団の担当を兼ねることになり、低迷する視聴率を押しあげようと勉強し、奮闘努力した結果がこれなんだろう。
 あくまでも善意の努力であるが「地獄への道は善意でしきつめられている」(マルクス←ジョンソン←聖ベルナール)ことを、またも裏書きしたのかもしれない。
 高収入とも想像したが、おそらく年収2000万以上、2500万という半端な評価額は、そこからでたのだろう。

 今回、この曜変天目のことで、再び連想したのは、初心者の好事家、コレクターが陥りやすい罠のことである。おそらくこの人X氏もこの罠におちこんでいたのではないか?「罠」と書いたが意図的ではなく犠牲者自身が喜んでとびこむのである。それどころか脇から忠告してもききいれないことの方が多い。
それは、「本にものっている有名な国宝クラスのものを自分が買うことができる、または発見した」という妄想・勘違い・先入観である。古美術収集の初期には、多かれ少なかれこの妄念にたぶらかされるものである。そしてその後、手ひどい失敗と失望を経験して「諦め」を会得する。まともな収集が始まるのはそこからである。そこで収集自体を止めてしまう人も多い。特にお金持ちで買うばかりで売ることがない人の中には、数百点のコレクション全体が贋作ばかりで価値がゼロということも少なくないから、そういう人の場合は、いったん気づくとイヤになって当然だろう。

  勿論、国家が滅びるときや戦争の最中などには、、「本にものっている有名な国宝クラスのものを獲得する」こともないとはいえないだろう。円明園の略奪のあと英国人軍人から女史シン図巻を買ったローレンス ビニヨンの経験はそうであるし、また現在ISIS関連でパルミラやイラク、オリエントの骨董は真偽とはずかなり流れているかもしれない。ただ、そういうことは一生に1、2回あるかないかと思うべきで何度もあるものではない。ビニヨンも女史シン図巻一つだけが成功で、それ以外では堀出し経験はないようである。ビニヨンが編輯した中国絵画の本の図版をみると、出土品を除けば、うんざりするような作品ばかりで、女史シンを除いたらXをつけたくなるものが続出している惨状だからだ。





posted by 山科玲児 at 15:37| Comment(4) | 日記