2017年05月14日

ダブリンのボス

The Descent into Limbo_Dublin_Bosch_ATTRIB (2).jpg

2016年10月18日
聖ヤコブの盾
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/177298245.html
で言及した美しいダブリンの[リンポ(地獄の辺境)に降りるキリスト]

現在ではボス派の作品でボスの真作ではないとされているようだが、なかなか質の高い作品である。
ボイマンスのボス展で観たとき、とても感心した。

樹林年代で、基底材の板の年代を推定したら1487年以降という、今 東京に来ているボイマンスの「放浪者」や「聖クリストフ」と同じような年代が出た。ボスとほぼ同じ時代の作品のようである。

真作とするには、微妙に違う気もするが、とても良い絵なので推薦したい。

プラドのボス展では展覧されなかったようだ。北ブラバントのボス展のリストはないのでわからない。
もっと、展覧されることを期待したい。





posted by 山科玲児 at 14:41| Comment(0) | 日記

李白  靜夜思 のテキスト問題

唐詩三百首  五言絶句 ss.jpg李太白集 第六 湖北ss.jpg



  昔昔、パソコン通信やMLで議論があった時代に、
  李白の五言絶句  靜夜思のテキストに関する問題が質問されたことがある。
  中国在住の方だったか? 中国人が使っている靜夜思の文字が日本で習ったものと違うということである。
日本で普通使われているのは唐詩選巻6からとったこのテキストである。
寛政4年に江戸の嵩山房から出版した唐詩選イメージがあるのでご確認。。

 牀前看月光  疑是地上霜  挙頭望山月  低頭思故郷 
牀の字が常用でないので「床」をあてることもある。

一方、中国で流布しているのは、
 床前明月光  疑是地上霜  挙頭望明月  低頭思故郷
である。これは唐詩三百首によるものだが、唐詩三百首では「床」でなく「牀」になっている(イメージ左: 上海の商務印書館刊行本 民国32年八版)が、これは代用ということだろう。また題も「夜思」になっている。「靜夜思」ではない
  中国では、唐詩のアンソロジーで一番普及したのが唐詩三百首なので、そのテキストが中華人民共和国の教科書にも採用されているのだろう。一方、日本では一番普及したのが唐詩選なので、そのテキストが採用されているだけのことだ。どちらも中国わたりの二種類のテキストだというだけで、一方が日本、一方が中国というわけではない。

1763年(乾隆28年)序文の唐詩三百首は、もともと沈徳潜の唐詩別裁をもとにして三百首選んだものなのだが、テキストは唐詩別裁とも全唐詩とも違うようである。

     一方、明末に成立した唐詩選は、別のテキストをもとにしているようだ。それは、南宋時代に四川省(蜀)で印刷された蜀本と呼ばれるもので、ミョウ筌孫旧蔵本が有名である。その本を重刻した湖北書局本(長尾雨山旧蔵)が貧架にあるのでイメージを出しておく。これは唐詩選と同じテキストである。

  現代中国の傑出した李白研究者;センエイ[金+英]にして、「李白の版本には善本はない。」(李白詩論叢、1984)と嘆く状態なのだから、どちらでもいいのだろうが、どちらかというと唐詩選=蜀本テキストのほうが良いように思う。
 というのも、最新の浩瀚な李白全集はこの蜀本を定本にしているそうだからだ。また、明月が二度も重複してでるというのは李白の詩としては感心しない。

  この件は、もうとっくに解決済みだとばかり思っていたのに、まだ中国でのテキストと違うというような議論がネットであるようだ。やはり、いかに正しいことでも、何度もいわないと常識化しないということか。。


タグ:李白 靜夜思
posted by 山科玲児 at 11:02| Comment(3) | 日記