2017年07月04日

チャイナゲート  再び

Riverbank Seal.JPG


香港の英文 古美術雑誌 Orientationsの最新号(vol.48 No.4 July/August 2017)
https://www.orientations.com.hk/backissue/volume-48-number-4/
に変な論説がのっておりました。

Kathleen Yang. Riverbank: Its Provenance and Original Name
これは、メトロポリタン美術館にある中国画
   伝)董源  渓山図 メトロポリタン美術館
   http://www.metmuseum.org/art/collection/search/39542
が立派な来歴があることを押してある印章の面から研究した論説ですが、

  押してある印章の写真とその横にある有名な書画におしてある同じ印章の写真と, よくよく比べたら全く違うんですね。クリックすればより大きなイメージで観察できます。イメージの左端が渓山図 の印  真ん中がKathleen Yangが本物だとした他の名画書画にある印。

  この論説の中で紹介している図版で比較してすらおかしいんですね。著者は眼が悪いんでしょうか。
  ひょっとしたら、と思い、台北國立故宮博物院にある陸継善本蘭亭にある元時代の[木可]九思 の印(イメージの右列)と比べてみましたが、やっぱりダメ。陸継善本と真ん中の列の印はほぼ同じです。


   どうも、このKathleen Yangという人は1998年のころ、この絵の真贋がチャイナゲートCHINAGATEと呼ばれて問題になったころに、
   Kathleen Yang, In support of The Riverbank, Orientations, Volume 29 no.7, July-August 1998
というのを書いて、故 Jmes Cahill教授にメタメタに論破されていた人のようですね。
  http://www.thecityreview.com/symposium.html
>'The seals she…shows us are actually a rather damning bit of evidence, since there are sufficient differences
between the ones on the painting and the 'authentic' examples shown that we must seriously suspect they are later
additions,'"

  末尾の経歴をみたら、独立した中国美術研究者・中国の印章を研究していて論文・本もある人ということだったので、あるいは若い研究者が富豪に媚びたものかと思ってあえて言挙げしないほうがいいかな?と思っておりました。けれども、実はこの人自体がニューヨークの中国系富豪蒐集家故Denis Yangの配偶者で、しかも当時擁護論を出していた人です。まさにCHINAGATEこのスキャンダルの当事者応援者の一人だったんですね。それなら遠慮はいりません。

  従って、この論説は、当時のことを憶えている人々が物故したことを利用して、また同じような意見を出して、甚だ怪しい絵画 伝)董源  渓山図 メトロポリタン美術館を擁護しようというアドバルーン;プロパガンタなんだとおもいました。印影がわからない印章専門家ってなんなんだと呆れたんですが、もっと底意のある宣伝プロパガンタでした。嘘でも間違いでも主張が通ればかまわないものでした。中国系米国人にはこういうのもいるんだな。

 この論説のなかで、「伝)董源  渓山図 は、台北の大観展と上海の『翰墨薈萃─ー美国収蔵中国五代宋元書画珍品展』に貸し出され、2つの美術館は董源の真蹟とみなした。」と書いてます。
  2012年の上海では、どうだかしりませんが、2007年の台北での大観展のときは、甚だ影が薄いもので周囲の台北國立故宮博物院の名画に押されて完全に縮こまってしまっていて、「あ、これはまったくだめだ」と思わせたものです。
  私が台北で、2007年2月に観たときの感想は、
>南唐 董元 溪岸圖 軸 221.3 × 109.7
そもそも構図そのものがおかしい。台北で展示させようとしたメトロポリタンの心臓の強さに呆れる。
   でした。

  もういいかげん諦めろよ、と言いたくなるんですがね。
posted by 山科玲児 at 09:33| Comment(0) | 日記