2018年01月13日

忘却されていたブリューゲル

Breugel Marijnissen  ss.jpg

中野京子  はじめてのルーブル   集英社、2013
http://bunko.shueisha.co.jp/recommend/satsuki_01.html
を読んで、またひっかかったのは、
カラヴァッジョのことを書いた13章の中で

13章>生前から現代に至る数百年間、評価も人気もぴくりとも揺るがないミケランジェロ、ティティアーノ、ブリューゲル、ルーベンスなどの凄さを、改めて認識させられよう。
というところです、ブリューゲルを入れるのは、明らかに筆が滑ったのでしょう。



>18世紀から19世紀になると、ほとんど顧みられることがなかった。
 ソース:: 森洋子 ピーテルブリューゲルの芸術 1968 みずえ No.53に掲載

>18世紀全部と19世紀の大部分で長く忘れられていた

 拙訳 ソース P. Bianconi,Tout l'oeuvre peint de bruegel l'ancien , Flammarion, 1968, Paris

ブリューゲルの作品として有名で、サインもあるブリュッセル王立美術館にある  反逆天使の墜落(天使と魔物の戦闘)  (イメージのマレイニセンのブリューゲル本の表紙カバーに使われています)は地獄ブリューゲルの作品というふれこみで、1846年に、500フランで美術館が購入したものです(REF1)。

   その14年後に、ミレーは「晩祷」  をベルギー人Victor de Papelenに1000フランで売り、それが世紀末ごろには75万フランになって世界一高い絵と称されておりますから、当時の500フランというのはそうとう安いんじゃないかと思います。

  アントワープのマイヤー  ファンデアベルヒ美術館の「悪女グリート」は、1894年ケルンのオークションで 390マルクで買いました(REf1)。
   フリッツ・マイヤー  ファンデアベルヒ以外、だれも入札しなかったので、最低値だったそうですが、390マルクというのもはそうとう安い価格のように思えます。しかも、現在 傑作として賞賛されているこの絵をマイヤー以外、だれも入札しなかったとは。。。

 ちなみに、スペイン政府が、最近、買い上げた「聖マルチヌスのワイン」は、ブリューゲル最大の大作ということもありますが、約10億円ぐらいだったと聞いています。これは国外に出さないというようなこともあって、このへんで落ち着いたのでしょう。

   これから考えてブリューゲルの評価が19世紀に高かったとは思い難いところです。実際、ブリューゲルについての18世紀以後、最初の研究は1869年のドイツ人ワーゲンGustav Waagen(ベルリン美術館館長)の記事6P(遺稿)です(Ref1)。

   また、ミュンヘン  アルテピナコテークの「怠け者の天国」は、なんと1917年の購入です(REf1)。他のルーベンスの傑作などが、18世紀以前のバイエルン選帝侯の収集であることと、ずいぶんな違いがありますね。

   REF1.  P. Bianconi,Tout l'oeuvre peint de bruegel l'ancien , Flammarion, 1968, Paris
  絵の名前は森洋子 ブリューゲルの世界、とんぼの本、に倣いました。こういうのは統一しとかないと、、


posted by 山科玲児 at 07:17| Comment(0) | 2018年日記

2018年01月12日

はじめてのルーブル  続1

はじめてのルーブル.jpg

中野京子  はじめてのルーブル   集英社、2013
http://bunko.shueisha.co.jp/recommend/satsuki_01.html


  なんといっても、笑ったのは、ルーベンスのマリー・ド・メディチス連作について、
第6章>
かくもどうでもいい人物を、かくもドラマティックな粉飾のもとにヒロインへ仕立て上げた画家の並外れた力量の凄さを。

で、マリー・ド・メディチスについてムチャクチャに批評しているところですかね。ここは、何度読んでも面白い。

そして、感心したのは、第3章でルイ十四世のファッションについて、
鬘と髭は相性が悪いらしく。鬘の時代に顎髭は無く(口髭はままある)、顎髭の時代に鬘は無い。
  そういわれてみればそうです。ただ、更に前の15世紀ぐらいはどっちも無かったんですが、それはどうなるのかな。


posted by 山科玲児 at 07:21| Comment(0) | 2018年日記

2018年01月11日

台北101新年花火


台北101新年花火の動画を観ましたが、  いやあ、すごいなあ。
よく火事にならないなあ。

デジタル  イメージと花火がよく調和しているとおもいました。
台湾のセンスは、一味違います。

台北101新年花火の動画
https://www.youtube.com/watch?v=E-3S4hlaTgQ

派手に雪が降った長崎は寒くて困っております。
さすがに台湾は、台北でも11度−九度という温度です。台湾で新年というのも良いなあ。。

posted by 山科玲児 at 19:13| Comment(0) | 2018年日記

はじめてのルーブル

はじめてのルーブル.jpg

  ボスについて、間違ったことが書いてあるらしいので、原典で確認しないと、と思って
中野京子  はじめてのルーブル   集英社、2013
http://bunko.shueisha.co.jp/recommend/satsuki_01.html
を借りてきました。今は文庫になっているようです。

 そしたら、面白い本だったので、つい読みふけってしまいました。ミイラ取りがミイラになったということでしょう。確かに、文章が上手い人ですね。うまく読ませてしまいます。

  ただ、やはり、間違いや古くさいところも多いので、この本に書いてあることを真に受けて吹聴することは、やめたほうが良いでしょう。
   著者は、どうもモノグラフ的な研究書を熟読したことがないのではないか?という感じがします。
   まず、疑うことが大事です、ラファエロのことなんかもつっこみどころ満載です。

で、そのボスの「愚者の船」で間違っているところは、、

>各国の美術館にボス作品は散在し、希少価値の高いボス作品をどこも手放すつもりはないという状況下。もはやルーブルがボスを入手する見込みはなさそうに思えた、そんな時―すでに20世紀も20年近く過ぎていた―個人から寄贈されたのが、この『愚者の船』だった。、

「愚者の船」の連れとされる「放浪者」がボイマンス美術館の後援ファンドによって買われたのが1931年、もう一つの連れのワシントンの「守銭奴の死」がナショナルギャラリーに入る前の所有者サミュエル・クレスによって買われたのが1951年 いずれも、愚者の船がルーブルに入った1918年より、ずっとあとです。
 つまり、「もはやルーブルがボスを入手する見込みはなさそうに思えた」というのは、間違いです。
 また、「愚者の船」(ルーブル)「放浪者」(ボイマンス)「守銭奴の死」(ワシントンNG)エール大学の断片
の関係については、木目の一致から、現在は再構成されておりまして、中野さんの記述はおかしいのですが、まあそれはそれでこういう細かいことはしょうがないのではないかと思います。

  むしろ、1918年の寄贈の時点の状況を全く誤っているところが、大きな欠点ですね。

posted by 山科玲児 at 08:39| Comment(0) | 2018年日記

2018年01月10日

アメリカの宗教画


  キリスト教宗教画の選抜をしていて、思ったこと。


   アメリカが優れた宗教画を未だ生み出していないようにみえるのは、WASPが主人公であって、Pのプロテスタントは教会で宗教画をあまり使わない、さらにユダヤ人も教会では絵画を使わないということと関係があるのかな?という問題提起です。


  アメリカが静物画や風景画ではそれなりに独自な作品を出しているのとは違う事情なのかな。と思いました。


   ただ、そうなると、なんでカトリックばかりの中南米から優れた宗教画が出ないのだ、、という異論がでますね。

 植民地では本国の文化輸入でことたれりで、現地で養成することが少なかったのでしょうか。

   伝統の差ということもありますが、未発掘ということもあるかもしれません。音楽の世界では18世紀に中南米で活躍したチポーリの作品が最近は有名になっておりますしね。


posted by 山科玲児 at 08:57| Comment(0) | 2018年日記

2018年01月09日

ウイーンのブリューゲル展


新年ですでに秋の話ですが、
2018年 10月2日〜2019年1月13日まで
ウイーン美術史美術館で
ブリューゲル展です。
2 October 2018 to 13 January 2019
http://www.khm.at/en/bruegel2018/


  しかし、ここは 12点もブリューゲルの大きな絵をもっているところなんで、1昨年のプラドのボス展よりも、もっとじぶんのとこの作品中心ですね。
  したがって是非いくべきか、という点では、躊躇するところもあります。

 例えば、2020年にウイーンに行ったとしても、観る作品はあまり変わらないということですからね。
 2つのバベルの塔(ウイーンとロッテルダム)が同じところで展示されるという噂は前から聞いていましたが、その展覧会がこれですね。

ちょっと考えたんですが、この展覧会の影響というのがありますね。

貸し出されたブリューゲル作品は本来のところにないわけです。
この展覧会時期の前後に、ロッテルダムのボイマンスを訪ねてもバベルの塔は、まず観ることはできないでしょう。
また、仮にアントワープの狂女グリート(今、修理中だそうですが、、) が貸し出されていた場合、アントワープを訪ねたら、空振りになってしまいます。

そういうことも注意しないとね。


posted by 山科玲児 at 09:12| Comment(0) | 2018年日記

ゲント美術館の反論

Gand Ghent Bosch SKIRA.JPG



一昨年、2016年02月19日

ゲントのボッス「十字架を運ぶキリスト」否定説
を書きました。


BRCPがゲントのボッス「十字架を運ぶキリスト」(イメージは左下部分)が真蹟ではないと判断しました。 ゲント美術館が反発し、すぐ近くの北ブラバント美術館で開催された特別展に出品しませんでした。

オランダの ス ヘルトヘンボスの北ブラバント美術館
  2016年 13 February - 8 May


実は、このときの展示目録がよくわからないんですよね。リストがどこかにないものですかね。


BRCPの方の主張は、日本でも流布している人もいるようですが、根拠がはっきりしませんでした。 一方、ゲント美術館側の主張もネットで公開されておりました。


これはBRCPの筆頭学者:Kordeweijを呼んで、他の学者や修理担当などとシンポジウムしたときの要約です。

これでみると、BRCPでは絵の下の素描が快楽の園なんかとは様式が違うということが一番の疑義みたいです。

ゲントの絵の下書きを赤外線でみたものは、、

BRCP Infrared refrectgraphy Photo

どっちかというとメムリンクの下書きに近いですね。 この下書き問題については、

2016年07月25日
快楽の園の下書き

で比較紹介しました。



しかし、BRCPで真蹟にしてる 


守銭奴の死

 なんか、快楽の園の下書きの様式と全然違いますし、むしろBRCPが偽/コピー/模倣作とする「七つの大罪」と似てますね。


また、

ゲントの「十字架を運ぶキリスト」と
「聖ヒエロニムス(ゲント)」

とは下書きの様式がやや近いですね。


  どうも下書きの様式で、ボスの真蹟と確定するなら、BRCPよりもずっと少ない作品しか認定できないようです。なんか三種類ぐらいに分かれているようです。じゃボスって三人いるのかなあ。


 この件は、まだまだ二転三転しそうです。

posted by 山科玲児 at 08:24| Comment(0) | 2018年日記

2018年01月08日

ありえない古陶磁

香港の古美術雑誌
最新のOrientations、2016vol49 no.1 Jan/Febの末尾近く、ハーバード大学の先生がエッセイ書いていたんです。
でも、
そこに挙げられている陶磁器はどうみても新しいので、なんかわかってないなあ、
とがっかりしました。

 こりゃだめでしょう。1993年にハーバード大学の美術館に入ったもののようですが、こういうのを高く評価してるんじゃ、他の品の評価も問題ありそうだなあ。
posted by 山科玲児 at 15:23| Comment(0) | 2018年日記

フォルティ・タワーズ を視聴する

フォルティ  タワーズss.jpg



五輪英語の準備急ぐ日本、フォルティ・タワーズを頼りに - BBCニュース
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-39551011
という、BBCニュースがあったが、
フォルティ・タワーズってBBCの制作なんだよね。
これはCMというべきかな?

     そうはいっても、このフォルティ・タワーズは素晴らしい「英語」、古き良き明晰な英語を聴くための素晴らしいツールであることは間違いありません。いまどきロンドンに行ってもこういう英語が聴けない、というネットでの声がありました。ブレットのシャーロック・ホームズの冒険シリーズより更に「英語」の質が良いような感じがします。

日本語が入っていないものなら、割安なので2017年3月に買いました。
Fawlty Towers


そのときのブログ記事
2017年03月03日
フォルティ タワーズ
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/178969893.html
posted by 山科玲児 at 09:18| Comment(0) | 2018年日記

2018年01月07日

朝日新聞 学芸部


  最近、評判が悪い 朝日新聞であるが、学芸部だけは、他の新聞より優秀だと思っている。少なくとも産経・読売・日経よりは良い。昨年の鑑定団:曜変天目 事件の際も良識があった。

  文学・映画関係では多少偏向はあるかもしれないが、少なくとも古美術関係では他紙よりはマシだと感じている。

というより他紙が酷すぎるのだろう。

 まあ、社説や天声人語は「眼に嘔吐を催させる」ようなひどい文章なので、とても読む気にはならないが、
美術部門はかろうして踏みとどまっている。

  雑誌「國華」も朝日新聞社刊行だということが影響してるのかな。



タグ:朝日新聞
posted by 山科玲児 at 20:16| Comment(0) | 2018年日記