2019年06月29日

岳飛への書簡

高宗賜岳飛IMG2 detail.jpg

またまた、 台北故宮博物院の常設展示 (2019年1月〜3月25日)もう終わった展覧の話で恐縮だが、

筆墨は語る─中国歴代法書選 
で、
南宋 高宗「賜岳飛批剳卷

が、展示されていたそうだ。これは、國立故宮博物院の所蔵ではなく寄託されている美術品である。これは蘭千山館 林柏寿氏(故人)の相続者なり後継法人なりの所蔵なんだろうと思う。國立故宮博物院には、もう一つ同様の命令書があるが、それは内容が違っているので別の命令書であり、そちらのほうが有名である。

この、あまり知られていない岳飛への命令書については、貧架にモノクロコロタイプ複製があるので、2000年に、

岳飛にあてた宋皇帝の勅書
http://reijiyamashina.sakura.ne.jp/Yufei/yufei.htm

で紹介しておいたので、ようやく一般に精密なカラーイメージが出回るか、と感慨深い。イメージはモノクロ複製からとった部分拡大である。

この巻子、まず冒頭の華麗な乾骼の装幀が眼をひく、そして、これは乾驛Rレクションではなく嘉慶帝のときに宮廷に入ったものなので、乾隆帝のあの大きな印の数々は、事実上押されていないようにみえる。冒頭近くにある「乾骭范濫V寶」印はかなりあやしい。あるい嘉慶帝のときも10年ほど乾隆帝はご健勝だったので、そのころの印なのかもしれない。嘉慶帝のとき宮廷に入ったものには、畢家の家財を没収したときのものが多いのだが、これは畢家とは関係ないようだ。

なんとなく末尾に紙のよじれや破損があるのではなかろうか? 妙に「付岳飛」と高宗皇帝の署名が傾いているのはなにか紙自体のゆがみのせいじゃないかと思う。

 項元ベンの 細楷の跋はとてもしっかりしたものだと思った。



posted by 山科玲児 at 10:24| Comment(0) | 日記

公平な台北國立故宮博物院

異趣帖 藤井.JPG

今年、早春  台北故宮博物院の常設展示 (2019年1月〜3月25日)もう終わった展覧の話で恐縮だが、

筆墨は語る─中国歴代法書選 
で、(伝)梁武帝「異趣帖」(藝珍堂本)が
展示されていたそうだ。これは、國立故宮博物院の所蔵ではなく寄託されている美術品である。

ちょっと感動したのは、このサイトの「展示作品解説」が、極めて公平で学術的なことだ。

よく見ると、薄墨と濃墨を使って2度書きしてあり、草法にも誤りがある上、続け字の線も不自然である。18-19世紀の間に、京都市の藤井斉成会有鄰館が所蔵する「異趣帖」を参考に複製されたものではないかとの指摘もある。今後の研究が待たれる。
 昔は、もともとついている題簽や伝承筆者を無批判に受容して、寄託していただいたコレクターに媚びたような文章や、國立故宮博物院の所蔵品の価値をさげないように無闇に褒めまくるような解説が少なくなかったが、時代は変わったものだ。現代では台北國立故宮博物院の研究員が、世界で一番科学的批判的に中国書画をみているかもしれない。

ひょっとしたら、当方が2005年に公開した論説:

2つの梁武帝:異趣帖


を参考にされているのではないか?と思う。
  なぜなら、大観展のときのカタログでも、当方の宋代装飾料紙に関する解説を参考REFとして、掲載していただいたからである。その後、URLを変えざるをえなくなってしまったのは無念だが、参照していただいたのは、
Ornamental paper in Sung Dynasty on "Pine Wind Pavillion Poem"
である。

(伝)梁武帝「異趣帖」(藝珍堂本)の鮮明で大きなカラー写真のデジタルイメージが出たのはこれが初めてだと思う。写真自体はずいぶん昔に出版された
藝珍堂書畫,二玄社, 1979
で出ていた。
  それのモノクロコピーをもとにして、詳細比較し、2005年に、該当論説を公開したのだが、ようやく業界の一般常識になってきたようだ。

イメージは、京都、藤井有リン館 所蔵の別本、たぶん有リン館本のほうがより良いものだと思う。





posted by 山科玲児 at 08:00| Comment(0) | 日記