2020年04月01日

「かつらをかぶった雀蜂」真贋問題





詳注アリス 完全決定版
https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=928

の「鏡の国のアリス」の後の付録として、

原作者ルイス・キャロルが削ったというエピソード
「かつらをかぶった雀蜂」The Wasp in a wig
が収録されています。
 これについて、2019年という最近に、
 Leach, Karoline. "The Curious Case of the Wasp in the Wig" (PDF). Contrariwise. Retrieved 17 January 2019.
http://contrariwise.info/articles/TheCuriousCaseOfTheWaspInTheWig.pdf

  があり、贋作説も紹介されてます。


この編輯・校正 段階でのゲラでキャロルの自筆書き込みつき、というものは、1974年7月  サザビーズのオークションに出現しました。 1700ポンドという比較的安い価格で落札しています。そのときの説明文

 July 1974, when a startling announcement appeared quietly in the sales catalogue of Sotheby's London auction room:

The Property of a Gentleman. 76. DODGSON (C.L.) "Lewis Carroll". GALLEY PROOFS FOR A SUPPRESSED PORTION OF "THROUGH THE LOOKINGGLASS", slip 64-67 and portions of 63 and 68, with autograph revisions in black ink and note in the author's purple ink that the extensive passage is to be omitted. *** The present portion contains an incident in which Alice meets a badtempered wasp, incorporating a poem of five stanzas, beginning "When I was young my ringlets waved". It was to have appeared following "A very few steps brought her to the edge of the brook" on page 183 of the first edition. The proofs were bought at the sale of the author's furniture, personal effects, and library, Oxford, 1898, and are apparently unrecorded and unpublished.

 古書籍商が落札し収集家Norman Armourへおさまりました。そのあと、 Lewis Carroll Society of Great Britainがシンポジウムを開いて検討したようですが、贋作説も出ました。ただ、どっちかというと真作説のほうが優勢なんだそうです。そのあとファクシミリ版がつくられたりもしたそうです。

 2005年の Christie's にでて
https://www.christies.com/LotFinder/print_sale.aspx?saleid=19450
6万ドルで落札(詳注アリス 完全決定版には誤りがあるようです)

そうなると、今は他人の収蔵になってるんですね。ただ、同時に出た初版のたぶん献辞つきの「不思議の国のアリス」が21600ドルですから、飛び抜けて高いわけではないようです。

  作品としては1970年代末に、柳瀬さんの翻訳で読んだとき、 当方としては、あまり感心しなかったことをおぼえています。現在読んでも、それほどできがいいとは思わない。キャロルの真作だとしても、あのキャロルがおとなしく削除に応じたのは、できの悪さを感じたからだろう。もしも偽作  パスティーシュ」だとすればなおさらである。

  こういう別稿というのは、有名な本では、中島敦の「名人伝」にもある。

posted by 山科玲児 at 09:29| Comment(0) | 日記