古代オリエント集(ref)に邦訳されている
ウガリット神話「バアルとアナト」
のテキストは、粘土版の破損のところまで再現してある。もちろん編集や組み合わせもあるだろうけれど、そういう意味では生々しいテキストだ。
ただ、エジプトのピラミッド・テキスト、ハンムラビ法典などのように、ほぼ完全にまとまって残っているテキストがあるわけではないようで、ひょっとしたら、複数のテキストが混ざりあっているのかもしれず、ほんとに一つの物語なのかどうかさえ、わからない。
ルーブル美術館にある「バアルとアナト」粘土板テキスト、見事に壊れて欠失してますね。。
Ugaritic language, Cuneiform script Baal Epic. Ball and death.
14th century BC, Louvre
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mythological_poem_Baal_death_AO16641_AO16642_mp3h8918.jpg
また、ウガリット語の解読は一応1930年代に行われたのだが、その解読・翻訳にかなり間違いがあるのではないか、ヘブライ語などから恣意的にあてはめたのではないか、という疑義が、1978年のrefで既に懸念されていた。果たして、21世紀の研究で、そのような疑義は明らかになったのだろうか?
マヤ文字の解読でも、当初の解読に間違いがあり、何度も提起、訂正されているのだから、ウガリットについてもあるのではなかろうか。
ref 筑摩世界文学大系1 古代オリエント集、1978