2022年01月15日

贋作と著作権



  贋作の話を書こうと思って、ちょっとひっかかったのは著作権の問題だ。

 メーヘレンの場合は著作権が失効しているが、
  張大千の場合は失効していない。張大千の贋作かもしれない17世紀や10世紀の作品のイメージには、張大千の著作権がついているのだろうか?
そうなると、フリーアの「呉中三賢図巻」が張大千の贋作だと主張した論文や動画に写真を使うとき、張大千の遺族に著作権料を払わないといけないのか??

  贋作ではないが、迫真のファンアイク風素描を描いたジョーゼフ・ファン・デア・ベーケンの作品は、著作権がまだあるので、イメージ提示は控えたほうがよさそうだ。

 贋作のイメージに著作権があるか?? という問題は結構いやらしい問題ではなかろうか??
posted by 山科玲児 at 21:50| Comment(0) | 日記

ウガリット神話  忖度?

世界最古の物語.jpg

ウガリット神話の女神「アナト」の話を、何十年も前、
Th.H.ガスター の世界最古の物語―バビロニア・ハッティ・カナアン (現代教養文庫、現在は平凡社・東洋文庫の1冊として刊行されているらしい。内容の改訂があるかどうかは不明)
で読んだとき、かなり強烈という印象をもっていたが、

筑摩世界文学大系1 古代オリエント集、1978
で粘土板ヴァージョン読んだら、更に凄かった。

どうも、ガスターの本は、アメリカでの翻案風な出版だし、米国のお上品な読者に忖度して、かなりソフトにしているのではないか?と思いなおして、書架からこの古い文庫本を出してきた。よく読むと、エジプトの「アスタルテ・パピルス」で補った、と書いてある。また、かなり話が違う。エピソードの順序も違う。また、なんか、より温和でおとなしい話になっていて、血まみれの大虐殺の話などない。

アスタルテ・パピルスってのは、、
アスタルテ・パピルス  パリ、Biblioteque Nationale BN 202


Le papyrus BN 202 mesure dans son état actuel 29,4cm de largeur sur 17,2cm dehauteur. La hauteur d’une ligne est d’environ 0,8 cm et la hauteur d’un interligne 0,55 cm

アナトという女神がエジプトへ流入して、ファラオの守護神の一柱になったので、エジプトにも文献が断片とはいえ残っているというわけだ。ただ、こちらも破損がひどい断片だなあ。
ただ、ガスターは「ニューヨークのモルガン収集にあるエジプト語のパピルスから補った」と書いているので、別の断片がニューヨークにあるのかもしれない。また、エジプトではアナトも多少温和におとなしくなっているのかもしれない。ガスター本もそれに影響されてるのかな。とにかく、相当違うことは指摘しておく。
ニコニコ大百科、のほうが、粘土板テキストに近い。

posted by 山科玲児 at 11:05| Comment(0) | 日記

ウガリット神話「バアルとアナト」 テキスト問題



古代オリエント集(ref)に邦訳されている
ウガリット神話「バアルとアナト」
のテキストは、粘土版の破損のところまで再現してある。もちろん編集や組み合わせもあるだろうけれど、そういう意味では生々しいテキストだ。

ただ、エジプトのピラミッド・テキスト、ハンムラビ法典などのように、ほぼ完全にまとまって残っているテキストがあるわけではないようで、ひょっとしたら、複数のテキストが混ざりあっているのかもしれず、ほんとに一つの物語なのかどうかさえ、わからない。

ルーブル美術館にある「バアルとアナト」粘土板テキスト、見事に壊れて欠失してますね。。
Ugaritic language, Cuneiform script Baal Epic. Ball and death.
14th century BC, Louvre
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mythological_poem_Baal_death_AO16641_AO16642_mp3h8918.jpg

また、ウガリット語の解読は一応1930年代に行われたのだが、その解読・翻訳にかなり間違いがあるのではないか、ヘブライ語などから恣意的にあてはめたのではないか、という疑義が、1978年のrefで既に懸念されていた。果たして、21世紀の研究で、そのような疑義は明らかになったのだろうか?
 マヤ文字の解読でも、当初の解読に間違いがあり、何度も提起、訂正されているのだから、ウガリットについてもあるのではなかろうか。


ref   筑摩世界文学大系1 古代オリエント集、1978
posted by 山科玲児 at 07:39| Comment(0) | 日記