2022年03月31日

ヴィターリのシャコンヌ バロック音楽として

バロック音楽奏法で、
しかもドレスデンの楽譜を画面に流しながら、
演奏するという、なかなか素晴らしい動画があったので紹介する。
2013年、イタリアの古楽奏者である。
確かにモントリオールの演奏より、優れているようにきこえる。

Tomaso Antonio Vitali (1663-1745) - Ciaccona in sol min. per Violino e Basso
https://www.youtube.com/watch?v=5SN6jwTU9x0
Attilio Motzo - Violino barocco Fabrizio Marchionni - realizzazione del basso continuo all'Organo a trasmissione meccanica Tamburini, II+P/14 del 1970.
posted by 山科玲児 at 20:25| Comment(0) | 日記

ノモンハン事件

 最近のウクライナ戦争の情報は、ネットも含め、荒唐無稽に近い情報戦が戦わされていて、双方とも大本営発表以上の嘘の弾幕が飛び交っているように感じている。
  そのものすごさはイラク戦争のときを遙かに超えているようだ。何が本当なのか全くわからない。UFOが参戦したとか、ゼレンスキーは最初からワシントンにいたとか、コロナウイルスはウクライナ産だとか、プーチンは別人だとかいう話が出たとしても驚かないぐらいである。

  歴史を遡ると、ノモンハン事件について、敗戦後の日本人は、ノモンハン事件で日本軍はぼろ負けしたと信じていた。ところがソ連崩壊後、情報がでたら、ソ連軍のほうが被害が多かった。戦争目的ではソ連軍が勝だから、まあソ連のジューコフ将軍の勝ちでいいのだが、実際は引き分け程度だろう。

 この件で、ソ連はずっと大本営発表で日本を騙していたわけであるし、日本軍も、甚大な被害に戦慄し負けたものだと思い込んだのかもしれない。ソ連側の被害なんか戦場では明確にわかるはずもないだろう。
 情報戦では、明らかにソ連のほうが上だったと思う。
        

posted by 山科玲児 at 19:15| Comment(0) | 日記

ヴィターリのシャコンヌ

2021年12月15日 19世紀のバロック音楽
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/189202634.html

>なかでもキメラ的なものに、ヴィターリのシャコンヌがある。これは、原曲があるのかすらわからなくなるまでになっている。しかし、現代聴いてもなかなか良い曲だと思う。

と書いたが、ウィキペディアの英語版には長大な解説があり、
https://en.wikipedia.org/wiki/Chaconne_in_G_minor
それによると、
ドレスデンで、18世紀初期に、ドイツ人が写譜した、この曲の楽譜があるらしい。
そうなると、フェルディナント・ダヴィッドの偽作という説はなくなる。ただ、ダヴィッドがどれだけ編曲で変えたり補作したのかはわからない。
さらに、現在 流布しているシャルリエ版は1911年に刊行されたもので、ダヴィッドより更にヴァイオリンの技巧を誇示した華やかなものなんだそうだ。ダヴィッド版より更にドレスデンの楽譜からは離れているだろう。しかし名曲には違いない。

最近 聴いた 高木凜々子さんの演奏は、実に素晴らしかった。
ヴィターリ シャコンヌ ト短調 Vitali: Chaconne in G minor
https://youtu.be/SFsyQAE_6i0

一方、バロック・ヴァイオリンで、よりバロック音楽として演奏した例もある。古くは、エヅアルド・メルクスがアルヒーフでやっていた。
は、モントリオールでの演奏だが、良い線をいっているものだと思う。ロマン的な部分は皆削除してるから、原曲に近いのではなかろうか。


 ドレスデンの楽譜そのものが19世紀の偽作というならともかくとして、そうでなければ一応ヴィターリ作曲 XX編曲といっても良いのではなかろうか。この3曲(原曲・ダヴィッド版・シャルリエ版)を併載した録音・CD・動画があればとても面白いと思う。

 また、フェルディナント・ダヴィッドがメンデルスゾーンの友人であり、メンデルスゾーンがバッハ復興の功労者でもあった天才であったことも考えると、最晩年、かなり悽愴な曲も作曲していたメンデルスゾーンが、この編曲に手を染め、ダヴィッドに残したという、まさにロマン主義的な可能性も考えたくなった。

posted by 山科玲児 at 16:44| Comment(0) | 日記

翻訳の問題

 Orientations NOV/DEC 2021
の巻頭記事 Regina Krahl. On the Forefront of Research: Breakthrough Lectures at the Oriental Ceramic Society は、英国の東洋美術研究を引っ張っていったOriental Ceramic Societyにおける、中国陶磁研究史を概説したもので、相当面白い。

邦訳してみるか?という気になっても、著作権あるから、ネットですら発表はできないし、既にだれか邦訳しかけていると、無駄な二重作業になってしまう。

學術文献の翻訳って研究と違って技術と労力(あるいは下訳なら翻訳ソフト)の問題なんだから、二重にならないように、なんか統一情報センターがあって、「私翻訳してますーー」、て日本中に表示されるようにしておけば二重三重の無駄が避けられるのではないだろうか??。それに著作権交渉できる編集者や会社にも便利だろう。

文学作品の翻訳はその限りではない。やはり翻訳によって違いや技量がでるから。

posted by 山科玲児 at 06:51| Comment(0) | 日記

2022年03月30日

英国と清朝陶磁器

later chinese  porcelain  ss.jpg


2022年02月27日 3080点の展覧会
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/189363074.html
で言及した、

1935-6年のロンドン・バーリントンハウスでの大規模な中国古美術展のとき、
英国側と中華民国側で意見の衝突があり、中華民国では独自のカタログを作った、という逸話がある。話だけは知っていたが、どういう対立だったのかという問題について、その一端をレジナ・クラールが香港のORIENTATIONS が、Oriental Ceramic Societyの歴史を解雇する文章の中で書いていた。
Orientaions Nov/Dec 2021,  

 清朝陶磁器の年代問題 評価問題でもめたらしいのだ。なんと、英国側は時代不詳にしたらしい。確かに模倣品・贋作が横行していたのは事実だが、当時の紫禁城の故宮博物院は言ってみれば製造元みたいなものだから、そこまで疑わなくてもいいのにね。
 実のところ英国では「清朝陶磁器は、前代の模倣でしかない」と低く評価する傾向があり、Oriental Ceramic Societyの紀要では、1963年に清朝美術展やるまでは、清朝陶磁器に関する論文は1つもなかったそうだ。ただblanc de chineについての論文1篇は例外。

 Jenyns, Soame; Later Chinese Porcelain: The Ch'ing Dynasty (1644-1912), Faber and Faber, London,  1951 (イメージ)
は、全く例外的先駆的な研究書だったというのである。

 これは全く驚きで、優れた清朝陶磁器の収集が多く、鑑識も優れている戦後の英国骨董業界をみるとき、ちょっと信じられない。

そして、日本の骨董商 古美術商が、日本で清朝陶磁器が売れないとグチをいい、1970年代ごろにも、清朝官窯は欧米では人気があるのに日本ではない、という認識が普通だった。
「清朝陶磁器は、前代の模倣でしかない」という評価は日本でも昔昔は聞き、こういう認識は日本が遅れている証拠だ・理解が無いと、したり顔をするのが多かった。
 実は英国でも清朝官窯の研究は、日本ほどではないがかなり遅かったようなのだ。
  そういえば、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズもの
The Adventure of the Illustrious Client でも、「明の皿」だったなあ。
posted by 山科玲児 at 08:18| Comment(0) | 日記

2022年03月29日

大英博物館のデヴィッド・コレクション

davidGallery.jpg


大英博物館に寄託・展示されているデヴィッド・コレクション
の展示室は温室みたいなガラスドームに近い3Fの部屋95室である。2Fと表示されているが、Second Floorであり、日本でいう3Fである。
Virtual Tourもあるので概要がわかる。

Chinese ceramics | British Museum

まあ、前のラッセル街の古い展示室(イメージ)よりは多少良いようである。
3Fの、ここまで来る人は普通の観光客じゃないだろうから、その意味でのふりわけもされている。

イメージは昔、ロンドン大学の一部、ラッセルスクエアの建物にあったとき展示風景。当方撮影。
posted by 山科玲児 at 04:25| Comment(0) | 日記

アレキサンダー・ボウル


 大英博物館のSir Joseph Hotung Gallery of China and South Asia は、玉石混交で俗悪なものが前にでているという、なんかウンダーカンマーみたいな凄い展示である。まあ、女史シン図巻のように痛みやすいものはともかく、できるだけ公開展示しようというスタンスのようである。

昔みたガーナー卿の汝窯盃台、ちょっと紹介・考察文を書いた殷虚出土の大理石彫刻
http://reijiyamashina.sakura.ne.jp/ShangB/bmshangM.html
なども展示はされているようである。
ガーナー卿の汝窯盃台のそばに、アレキサンダーボウルという名前で有名な青磁鉢がある。
https://www.britishmuseum.org/collection/object/A_1920-1211-1
アレキサンダーという人William Cleverley Alexander (1840-1916)の旧蔵で遺族によって1920年に寄贈されている。

これは、大きく割れたものを、修理したものだが 、なかなか優れたもので、昔は北宋官窯とはこういうものではなかったか?といわれたこともある。しかし、現在では台北國立故宮博物院にある類品や、形としては東京国立博物館の横河ボウル(下イメージ 当方撮影)に似ていることもあり、南宋官窯の1つではないか? という意見が強かった。一方、河南省の窯跡発掘で汝窯近似の窯が清涼寺、張公巷など発見されていて、大英博物館の公式サイトでは张公巷発見陶片が類似するので北宋末のものだという見解が書いてある。

大英博物館プロパーの収蔵品にも、優れた珍品があるのに、それが、多量のものの中に埋もれているように見えるのは惜しいことである。
横河ボウルImage1.jpg



posted by 山科玲児 at 04:14| Comment(0) | 日記

2022年03月28日

大英博物館の古玉

China Jade3.jpg


  公式サイトの解説によると、

大英博物館展示の中国古玉の多くはSir Hotungの収集品を借りて展示しているもののようである。どうりで、昔のC.T.LOOの図録で観たような優れたものがあるはずである。
  そうなると、Hotung逝去後、ひきあげられ、売却され分散する危険もあるわけである。
仮に、そういうオークションがあったとしたら、この半世紀で最大最良の古玉の売り立てになるだろう。

  ただ、1951年のRoger Soame Jenyns (24 April 1904 – 14 October 1976) 編集の図録(REF)にのっている分は、Hotungのものではないだろう。
この中には、世界一大きな新石器時代のソウCONGや、興味深い人像(神像)もあり、まあHotung Collectionがひきあげられても、全滅というわけではない。ギリシャ人富豪のGeorge Eumorfopoulos旧蔵品や、サッスーン縁戚のオスカー・ラファエルの寄贈品だったと思う。
Ref. Soame Jenys,  Chinese Archaic Jades in the British Museum,    London,  1951
posted by 山科玲児 at 15:46| Comment(0) | 日記

ウクライナ戦争の背景


前もあげた 
ウクライナ歴史動画2種
ウクライナとロシアの歴史、さらにユダヤ人迫害の歴史についての、軽めのゆっくり動画::
https://www.youtube.com/watch?v=Ss4n7WztNzI&t=3s
https://www.youtube.com/watch?v=Ccp7oZDpazU

そして、米国政治の重鎮であった ブレジンスキーがウクライナに所領をもっていたポーランド貴族だったという動画
【山口敬之のわかるウクライナB】ウクライナ情勢の理解のために絶対に知らなければならない一人の男「ブレジンスキー」を徹底解説。
https://www.youtube.com/watch?v=FOr5Rg4jESQ
この3つを視聴すれば、ウクライナ戦争の背景が少しはわかると思う。
posted by 山科玲児 at 15:03| Comment(0) | 日記

大英博物館 中国部門

Chinese Bronze Vessel BM.jpg    釉裏紅大壺 明初  BM.jpg


Sir Joseph Hotungは、大英博物館の中国・南アジアギャラリーの改装をまたやって、2017年に 、Sir Joseph Hotung Gallery of China and South Asiaとして再オープンし、エリザベス女王によってテープカットしてもらったようだ。Orientationsの記事で知った。そのとき女王を案内しているSir Joseph Hotungの写真が多く残っている。
 私が観たのは2006年だから、どう変わったのか紹介動画を漁ってみた。

いかにも紹介・解説的な、動画があったので観てみた。
Ancient and Modern China and South Asia in 10 Objects | British Museum Tour of the Hotung Gallery
https://youtu.be/5PU2PQ-RkUE

呆れてしまった。中国古美術として紹介された4点のうち3点は、よりによって、こんなのを選ぶか?と思うほどひどい。アスターナの馬は、希少価値はあるが古美術品としてはまあまあ。現代作品の1点は特に良いとも思わないが評価は控える。若い中国人の学芸員たちが解説しているが彼らはこれらを「良いものだ」と思っているのだろうか? まあ、大きな壁画は偽物ではないけれど観賞価値あるのかな。明の関羽像は大きいだけだろ。大英博物館には、優れた中国古美術は少なくないので、選べばいくらでもできるだろうに。青銅器なら上のイメージのものがいいと思うし、大きいものなら、イメージの明初の釉裏紅大壺も印象的だった。イメージは2点とも当方撮影。

なお、この動画の19:07には、インダス文明印章の良い解説があり、24:36には、アラマヴァーティーの優れた大理石彫刻の紹介があった。この部分は、なぜか「朝日新聞ギャラリー」になっている。確か1994年ごろに朝日新聞主催で大英博物館インド彫刻展があって、当方もこの素晴らしいアラマヴァーティーの優れた大理石彫刻を嘆賞したことがある。そのとき寄付をしたのだろうか。

その一方、とにかく全部みせるという大規模な動画がある。
THE BRITISH MUSEUM
7,000 Years of Chinese Treasures & South East Asia at British Museum
https://www.youtube.com/watch?v=q7Asicgjgfc

なんと、3時間17分56秒もある。 とてもついていけないので、トビトビに後半の中国部門だけ観たが、2006年に出ていたものはだいたいでているようである。しかし、俗悪なものが真ん中のケースに入っていたりしてどうみてもおかしい。
posted by 山科玲児 at 06:57| Comment(0) | 日記