もともと古書籍オークションとして出発したサザビーズには、夜のガスパール1842年初版のオークション記録が2件あった。ただ、とても不思議なことに、どちらも、巻頭の余紙に、
1868年再版のとき、フェリシアン・ロップスが制作した版画(イメージ)が貼り込まれていたのだ。
これは、かなりおかしい。後の時代のものではないか??という疑念をおこさせるものである。
実際、最近、この1842年版の忠実な複製も近年制作されているようである。
2件ともそうなのは不思議なことだと思っていたが、2冊ともどうも同じコレクターのもとのところにあった本だというので、ある程度疑問が解けた。
Robert von Hirsch という人で、ドイツで鉄の売買、皮革事業で成功した実業家であり、ユダヤ系だったためスイス バーゼルに亡命した人だという。ヘルマン・ゲーリングにクラナッハの「パリスの審判」を渡して見逃してもらった人らしい。1978年にコレクションを売り立てている。ただ古書籍が入っていたかはよくわからない。
ニューヨークタイムズが記事にしていた。
このときデューラーの水彩1点が呼び物だったそうで、山田智三郎:西洋美術館館長が芸術新潮のエッセイで「民間にある最後のデューラー水彩が市場にでた」と書いていたのは、このHirchのものだったんだなあ。。
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