2022年04月10日

仏頭と紙形

渡辺崋山 肖像画稿.JPG

東京国立博物館のアジア・ギャラリーにいくと、大きな石仏の仏頭が展示されている。アフガニスタンのハッダからきたというストッコの仏頭もある。
  この頭部・首だけを鑑賞するというのは、21世紀の日本人でも、多少の抵抗があるのではなかろうか?
  そうはいっても、奈良の興福寺には白鳳時代「山田寺の仏頭」が飾ってあるではないか?というが、あれは、興福寺東金堂ご本尊薬師如来の台座から昭和12年に発見されたもので、台座の中に厳重にしまわれていたものなのだ。長年落ちていた臼杵の石仏の仏頭も修復でもとに戻った。
 基本的に拝む仏像は全身像であり、破損した場合は秋篠寺の技芸天のように修理補作して全身像にするのが普通である。


 江戸時代以前の日本の肖像画も、全身像が原則であり、半身像もある。頭像はまずない。
そうはいっても、一休禅師の肖像画があるではないか?という人がいるだろうが、あれは、下絵のスケッチで「紙形」というものである。あの紙形を大きな紙に貼り付けて全体の構想をつくり、それを更に本紙や画絹に写して本制作とするのだ。
 このシステムは渡辺崋山の画稿(イメージ REF)をみるとよくわかる。

 こういう紙形だけが残って伝えられ、掛け軸になり、鑑賞されているものである。
 実際、本人を前に直接スケッチするので紙形のほうが迫真であり、美術的にも優れているものが多い。

Ref. 美術研究 昭和8年6月  第18号  No. XVIII, Vol., 1933, Jun
posted by 山科玲児 at 13:18| Comment(0) | 日記

右と左


Persian Painting mhnmd.JPGseatlle  mhnmd.jpg


香港の古美術雑誌Orientaions に、
中国南北朝時代後期の後周 史君墓石棺は、ソグド人の墓で、その浮き彫り

16世紀のペルシャ・ミニュアツールを比較するという、かなり大胆な論文があった。
Jin Xu and Taylor Chisato Stewart. Echo of a Distant Past: Sino-Sogdian Elements in Persian Book Illustrations
https://www.orientations.com.hk/past-issues/p/janfeb-2022-1

史君墓 浮き彫りについての画像は、、

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Shanxi_Museum_-_tomb_of_Yu_Hong.JPG
https://sogdians.si.edu/shi-juns-sarcophagus/


ううんどうなのかなあ、1000年近く離れているので、伝承の糸をつなぐことができるのだろうか??かなり難しそうだ。


実はこのペルシャ・ミニュアチュールには、私もちょっと別の意味で注目していた。
それは、論文筆者が参考文献にだしているWelchの著作,ただしペルシャ細密画のアンソロジーである別の本  Persian Paintings(ref1)で、この細密画を観ていたからである、 これは、マホメットが天使に導かれて、メッカからエルサレムまで飛行するという場面だとされる。

大英博物館の細密画(左イメージ)
http://www.bl.uk/manuscripts/FullDisplay.aspx?ref=Or_2265

一方、シアトル美術館にある細密画(右イメージ)
https://art.seattleartmuseum.org/objects/24900/the-miraj-muhammads-night-journey

とでは方向が左と右で逆だ。こういう宗教的図像では、どっちかに決まっているものだと思っていたがそうでもないようである。受胎告知でガブリエルが左、マリアが右というのが普通だがときには逆もあるのと同様なのだろうか? それとも、行きと帰りという意味なんだろうか??このへんは浅学で無知な領分なので、ご教示を請いたいところである。

  ただ、マホメットが顔にヴェールをかけているのは共通でかなりめだつ。偶像として崇拝しないようにこういう配慮をしているのだろうか。。
しかし、まさかソグド関係ででてくるとは、思わなかった。
  ただ、シアトルのサイトの解説では、このようなマホメットの空中飛行の細密画は、本の内容と関係のない護符・縁起物として収録・制作されることが多かったと書いてある。

REF1 Source:: Stuart Cary Werch,  Persian Painting ,Brasiller , NY,1976

posted by 山科玲児 at 12:02| Comment(0) | 日記

金農の硯銘と尺牘


金農IMG_4662.JPG
東アジア文人の肖像−書画と文房具−.

展示リストは、

リストの中で、目にとまったものとして、

金農  陸瀛贈硯銘.尺牘卷

がある。金農の書というのも贋作が無闇に多いもので、東京国立博物館所蔵の高島コレクションのものでさえ疑う意見もあるぐらいだ。
これは比較的よく研究されているものらしく、購入時に大和文華第77号(1986年12月)で古原先生が論文書いているし、まあ信用できるものだと思う。
イメージは金農自画像の部分:西レイ印社、名人人物集 1934   から


posted by 山科玲児 at 09:06| Comment(0) | 日記

幻想の彼方へ


をアップしました。
ジョルジョ デ キリコ(1888-1978)の問題は、もっと明快な論説がイタリアあたりからでないかなあ、、とも思っています。
posted by 山科玲児 at 08:22| Comment(0) | 日記