2022年04月17日

メロードの祭壇画の成立過程


merode alterpiece met.jpg


Dirk De Vos,の美しい画集  The Flemish Primitives(REF)を読み返したら、比較的一般向けの本にも係わらず、メロードの祭壇画について貴重な話が入っていた。
ただし、解説の日本語はあまりよくない。


おおざっぱに言えば、この絵は15世紀前半の数十年間に二回改造されて現在の形になっているらしいということである。

1996年ごろに年輪年代法でメロード祭壇画の基底材を調べたら、中央画面と翼で年代が27年ほども違っていた。

中央画面の板の伐採年代: 1388 (ref2)
二枚の扉の板の伐採年代: 1415 (ref2)


ゲント祭壇画のような大きなものでは複数の材木を組み合わせるので、なかには50年も前の古材を利用したことも現実にあるようだが、メロード祭壇画のように小さなものではちょっと考えにくい。つまり現在の翼部・扉は同時に描かれたものではなさそうだ、ということである。
そうすると、本体が先にあって、それに翼・扉が付け加えられた/交換された、ということになる。

 また、左翼の女性と小さなヒゲの男については、昔から後で追加されたものだといわれてきた。実物で詳細にチェックすれば、明白な形跡が目視でもみえるからだろう。

 また、中央部分の窓やステンドグラスの外側はもともと金地だった(ブリュッセルのと同じ)それが書き換えられている。その書き換えられた後のステンドグラスの紋章が
ケルンのENGELBRECHTファミリー とブレダのBilleファミリーの紋章である。これは、パトロンと目されているPeter Engelbrechtの紋章と彼の二番目の妻Heylwish Billeのものらしい。そうなると、この祭壇画自体が現在の形になったのは、再婚後だということになる。そのときに、女性の変更などが行われたのかもしれない。
  そして、この女性の肖像は、小さな写真では全くわからないが、そうとう優れている。ロヒールの筆という説がでるのも無理はない。
1回目::翼・扉が付け加えられた/交換
2回目::女性と小さなヒゲの人物の追加・加筆・変更
というのが推定できるようだ。

こういう祭壇画の加筆や変更は結構あったようだ。
ボス  三賢王礼拝 の寄進者 続 (ボス展のカタログを読む 關連記事)
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/175652337.html

REf.  Dirk De Vos,  The Flemish Primitives: The Masterpieces, Mercatorfonds et Princeton University Press, 2003
Ref2.  Rogier Van Der Weyden: The Complete Works First Edition Edition  by Dirk De Vos 、Harry N Abrams; First Edition edition (April 2000)
posted by 山科玲児 at 12:22| Comment(0) | 日記

若冲の値段

伊藤若冲の百犬図は、コロナ以前の若冲展でも人気のあった絵ですが、
京都国立博物館に入ったようです。
新収品展2022

そのときの購入記録が公開されています。
9900万円とのこと。公共の博物館が買う場合は、コレクターが買う場合と違って、また買い取って商売にするということができないので、やや高くなりがちです。それを考慮して、この価格はみるべきでしょう。 

posted by 山科玲児 at 09:33| Comment(0) | 日記