2022年06月01日

ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン本 その6

Rogier van cer weyden attr.jpg

ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン: 情動と優美のフランドル画家 単行本 – 2020/9/24
勁草書房
https://keisobiblio.com/2020/10/12/atogakitachiyomi_rogier/

西洋美術館の「若い男の肖像」
https://collection.nmwa.go.jp/P.1978-0007.html
について、この本では修理前のモノクロイメージを採用している。7章、306P

しかし、修理後の現状は2005年ごろに当方が撮った写真のように、かなり疲れた感じになっている。
   西洋美術館の資料コーナーで紀要を呼んだら{ref}、「ある男の肖像」の修理について、1970年ごろにウィルデンシュタイン画廊の依頼で スイスの修理人によって、「キャンバスへの移し替え」「ひどい補筆」「偽の背面の設置」などのひどい作業がなされていたことがわかった。こういう無茶は「修理か贋作か」で紹介した1920年代のVenkenだけでなく現在でも行われていそうである。
  補筆、などを除いて残存しているオリジナルを取り出す修理は1996年ごろから行なわれ、現在の少し荒れた感じの肌合になったようだ(イメージは2005年ごろ  当方撮影)。

 後世の補筆上塗りが多すぎて、1970年ごろは、不思議な感じの絵になっていた。その不思議さにみせられて  辻邦生の「十二の肖像画による十二の物語」の一作品ができた。辻邦夫は、補筆だらけの作品をみて小説を書いているわけである。もとに戻した2000年以後の作品にもとずいて同じ小説ができるだろうか?と疑問にも思った。   現在の画面がよりオリジナルに近いのは確かなようではある。しかしながら、「不思議さ」はなくなってしまった。

  この絵の出所が、英国のマームズベリー伯爵(英語: Earl of Malmesbury)家であることから、どちらかというと19世紀末の英国のラファエル前派の顔に近いものが修復前の顔にあったのは、ラファエル前派的美意識のある修復家がよかれと思って補筆した結果かもしれない。

    河口公生. ウェイデン派作品修復処理・その理念と結果. 国立西洋美術館研究紀要. No. 10, 2006, pp. 79-90, repr.
posted by 山科玲児 at 05:24| Comment(0) | 日記