
NHK-BS番組「贋作の誘惑」
ニセモノVS.テクノロジー
初回放送日: 2022年10月29日
https://www.nhk.jp/p/ts/6QJPZ5QL6M/episode/te/R32K9W11JP/
で話題になった贋作?だが、その代表が クラーナハのヴィーナス(イメージ)である。
'Cranach' painting of Venus at centre of Old Masters fakes scandal must be returned to Prince of Liechtenstein, court rules
ここで驚くのは、リヒテンシュタイン公国の元首リヒテンシュタイン公コレクションだということだ。つまりリヒテンシュタイン家は最近、絵画を購入していたのである。なんかリヒテンシュタイン・コレクションというと18世紀ぐらいからの由緒正しい伝世コレクションじゃないかと思いがちであるが、必ずしもそうではない。
もともとリヒテンシュタイン公カール一世が神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ二世の側近で美術の収集・管理にも携わっていたので、良質なコレクションを自分ももっていたわけである。しかし、その後の歴代公爵の収集離散などについては、なんか無視しがちであった。もちろんレオナルド・ダ・ヴィンチの数少ない作品の一つがリヒテンシュタインから米国に売られたというような話題はあった。しかし、それは流出であって流入ではないので、コレクション全体のイメージを変えるものではなかった。もっと無名の没落貴族なら贋作者とつるんだ大作戦じゃないかと邪推したくなるくらいである。旧家の邸宅や古い城館に贋作や売りにくい骨董品を一時的にいれてその家の先祖からの伝世品のように擬装して売ってしまうというテクニックは昔からある。
なお、問題になった「フランス・ハルス」については、マネの周辺の作品のようにしかみえないもので、ヤン・ファン・メーヘレンの素晴らしい模写の足下にも及ばない代物で、なんで評価されたのか不思議である。、「パルミジャニーノ」は写真画像だけだと古画にみえるが16世紀のロマニストの作品のようで、パルミジャニーノに紐つけるのは困難である。オークション会社はたくさん売って成績を上げたいので鑑識が甘くなりがちだが、それにしてもひどい。
唯一写真だけでは区別しかねたのがクラーナハのヴィーナスである。もともとクラーナハは多量生産・量産型の制作方式であり、しかもルーベンスほど高い水準を保っていないので、後期のクラーナハ油彩作品は皆模写のようにみえる欠点がある。クラーナハの素描は素晴らしいものがあるのだが。。そういう背景もあって巧妙な贋作者ならつけいりやすいのだろう。