2022年12月16日

結果論だが、財務省が松方コレクションを破壊した

西洋美術館.JPG

上野の国立西洋美術館(イメージ 当方撮影)は、もともとサンフランシスコ講和条約のさい、フランスから返還された松方コレクションを収納管理展示するために作られたものである。

松方コレクション|国立西洋美術館
https://www.nmwa.go.jp/jp/about/matsukata.html

ここで、不思議に思うのは、松方氏がなぜ英国やフランスに美術品を保管したままだったのか?ということである。英国保管の分は火事で焼失してしまったし、フランス保管の分は疎開したとはいえ傷んでしまったものもあった。クロード・モネの大作:《睡蓮、柳の反映》がその例である。近年修復公開されたが完全復元は無理だった。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/19968

矢代幸雄の私の美術遍歴 (1972年) 13章「松方コレクションのお手伝い」に、そのカギがあった。矢代幸雄は、ロンドンでは、松方幸次郎氏の相談役ガイドのようなことをやっていたようだ。
>松方さんの画商めぐりに常のお伴をする

であったそうである。

 松方氏は、日本に帰るとき当然、輸送しようとしたら、財務省(当時は大蔵省)が「十割の関税」をかけるというので激怒して、中止してしまった。という。

 松方コレクションが、フランスや英国に保管されることになったのは、財務省のせいであり、モネの睡蓮の大作の破壊も、間接的ながら財務省のせいでさる。
 米国の場合、美術品の本物には関税はかからないそうだ。一方、模写や複製は関税がかかるということである。
posted by 山科玲児 at 05:35| Comment(0) | 日記

2022年12月15日

レオナルド・ダ・ヴィンチを探して

レオナルド・ダ・ビンチを捜して 東京書籍 (2).JPG


レオナルド・ダ・ヴィンチを探して (Artist by Artist)
者 ジョルジョ・ヴァザーリ (著),フランチェスコ・メルツィ (著),林 卓行 (監訳),神田 由布子 (訳),アントニオ・ビッリ (著),アノニモ・ガッディアーノ (著),パオロ・ジョヴィオ (著),マッテオ・バンデッロ (著),サッバ・ダ・カスティリオーネ (著),レオナルド・ダ・ヴィンチ (著),フラ・ピエトロ・ダ・ノヴェッラーラ (著),アントニオ・デ・ベアティス (著)

世界一有名な画家にして、「万能の天才」レオナルド・ダ・ヴィンチ。その謎に満ちた生涯を、同時代の証言者たちやレオナルド自身の言葉から読み解く。発売日:2020/08/31
https://honto.jp/netstore/pd-book_30461680.html

 レオナルド・ダヴィンチ本は、どうしようもないフィクション・オカルト本をはじめ多数ある。最近でた、この本はわりと出色で、同時代もしくは近い時代の資料を集めて、前に著者ロバートソンの解説をあげたものである。主な絵画、素描のカラー図版が結構入っている。プラドのモナ・リザも入っていた。
 英国のコートルード出身の学者の著書なので、当然、英語訳であったものを、さらに重訳したものだろう。
 文庫本よりわずかに大きいという小さな本なのは、むしろありがたい。長崎tutayaにあったので、図書券五〇〇円いただきものがあったこともあり、つい買ってしまった。
 内容はやはりヴァザーリ列伝からの翻訳が大半である。
しかし、それ以外の記録が入っているので、寝転がって読むのにもいい。
この記録自身をして語らせる、というスタンスは好ましいものである。

また、ロバートソンの「ヴァザーリが観たのは「プラドのモナ・リザ」でルーブルのモナ・リザは観ていない」という指摘は面白い。そうすると、プラドのモナ・リザはミラノのメルティのところにあったものかもしれない。

ただ、21pのロバートソンの解説で、、

>アンギエーリとの戦いの場合、壁にじかに油絵の具を塗ってしまったことが

というのはおかしい。油絵の具のはずないだろ。プリニウスの処方ですよ。一種のエンコースティックのはず。

ここで、不信をもってしまった。

また、翻訳・編集において、渾名である  アノニモ・ガッデアーノ をあたかも人名のようにあつかっているのは誤解を生みやすい。
音楽史でいう「第4の無名者」(古楽演奏団体 Anonymous 4にも使われた名前)と同様に、XXの無名者、としたほうが良かったと思う。

しかしながら、ヴァザーリの影に隠れて無視されがちな、ガッディ文書の無名者(アノニモ・ガッデアーノ)のレオナルド記述を日本語で容易に読めるのは、ありがたいことである。

Artist by artistというシリーズで、ゴッホ、マネ、ミケランジェロ、などがあるようである。
posted by 山科玲児 at 06:02| Comment(0) | 日記

列聖調査審問検事



日本が騙された!3人の詐欺グループが仕掛けた驚きの手口とは!?【ルグロ贋作事件】
の末尾近く
https://youtu.be/VdmeUDsW_30
という動画をみていたら、

 西洋美術館や東京国立博物館など、事実上の国立の美術館の場合、購入審議会の委員で、「職務として」「悪魔の代弁者 悪魔の弁護人」を一人、任命し、高給をだすべきではないか?と思った。
 この「悪魔の代弁者advocatus diaboli‎ 」というのは俗称で、正式名称は Promotor Fidei(信仰の擁護者)、日本語訳:列聖調査審問検事である。もともとカトリック教会で聖人認定する審議会のなかで任命された法王庁の役職である。聖人候補になった人物の欠点を詳細に調査してあげつらい、ひたすら非難する職責をもつ。これによって、聖人認定の質を上げ、スキャンダルを防ぐことになる。1983年にヨハネ・パウロ二世によって廃止され、より制限された権能のpromotor justitiaeになってしまったが、これは誤りで復活させるべきだと思う。
 美術館・博物館の場合は、購入予定の美術品について、欠点をあげ非難する公式の役職である。役職なのだから、いかにひどいことをいっても恨まれることはない。 そういう立場なのだから。逆に審議会の1委員がそういう行動をとれば、排斥されるし風評被害にもあうだろう。しかし正式の役職なら危険は少ない。
 私がこの「悪魔の代弁者」のことを知ったのは、ギョーム・アポリネールの短編LE SACRILEGE (瀆聖?)で語られる「セラファン神父」であった。アポリネールによれば、やはり自分の教団ゆかりの人を聖人にしたいという修道会の利害のため、熱心すぎる「列聖調査審問検事」は排斥されがちだそうだ。

posted by 山科玲児 at 03:27| Comment(0) | 日記

2022年12月14日

だれでも知ってるドン・ジョヴァンニ

【クラシック名曲】初心者でも絶対知ってる!どこかで聴いたことのあるオペラ(+オペレッタ)10選
https://youtu.be/89qkgrIZYy4

を視聴したあとで、

偶然、有線で聞いたんだが、、

「あそこで我らは手をとりあおう」
 歌劇  ドン・ジョヴァンニ
から
   2014年ドミンゴがとてもいい顔して、無理なく歌っているコンサート
    https://youtu.be/TtNN2z2cB4s

 これって、誰でもきいたことのあるオペラ曲の一つとして、入って当然の曲だと思う。。でも、まさか、あのモーツアルトのドン・ジョヴァンニ???
  ちょっと信じられないくらいだ。あくの強い陰気なオペラ映画ドン・ジョヴァンニを観てあまりいい印象もっていなかったので。

posted by 山科玲児 at 07:05| Comment(0) | 日記

トリュフ味 ポテトチップス


山芳 truff potetochips.JPG

山芳製菓史上、最も高級なポテトチップスが誕生。
https://www.8044.jp/newsrelease/detail/386/

変わったポテトチップスを、しょっちゅう出す、山芳製菓から、
「史上最も高級なポテトチップス トリュフ味」がでました。ローソンで買いました。
 イナウディ社の黒トリュフオイルを使っているとのことで、確かにトリュフらしい味香りがします。イナウディ社というと、イタリアの明治屋という感じで大手なんで、そんなに最高級という感じじゃないのですが、とにかく知名度と信用はあるところですね。
 従来のトリュフ とかいうポテチやスナックでは、まるでトリュフらしい味や香がしなくて
詐欺っぽかったのですが、これは一応合格なのではないかと思いました。
しかし、トリュフってそんなにおいしいものなのかなあ、珍しい味ではありますけどね。

posted by 山科玲児 at 06:36| Comment(0) | 日記

2022年12月13日

根津美術館で北宋書画精華展

来年、秋、根津美術館で北宋書画精華展があるそうだ。
https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/schedule.html

書はともかく、絵画は少数になるのではなかろうか?
根津美術館は、2004年に南宋絵画展をやっている。
南宋絵画―才情雅致の世界 −

南宋と同時代の金の絵画のほうは、まだ現存しているが、北宋は難しい。
五馬図巻をメインにするということなのだろうか?
まあ、それはいいとして、数量的には、書をメインにするとすれば、日本でも結構優れた北宋のものはある。
東京国立博物館でも米フツが二点、小品とはいえ、蘇舜欣の草書という珍品、趙令じ[田寺] の書という珍品もある。この2点、話がうますぎるのとあまり話題にならないので、ひょっとして、仮に精巧な模本であったとしても貴重なものだと思う。蔡ジョウの楷書墨跡は、なんと上野鶯谷書道博物館にあるのが最上品である。黄庭堅の第一の草書は日本の京都岡崎にあると確信している。蘇東坡の書は事実上日本には無いが、まあこれはしょうがない。禅林墨跡にも北宋のものはある。
ただ、絵画は難しい。
日本にあるものでは、山水画で、北宋らしいものは、大阪天王寺の大阪市立の 燕文貴、 京都岡崎藤井有リン館の許道寧  秋山簫寺 ぐらいだろう。花鳥画では、昔から有名な徽宗皇帝の「桃鳩図」があるが、当方は書に少し疑問をもっている。仏画ならもう少しあるようだ。
とにかく北宋の名画というのは、世界的にも著しく少ないもので、時代が下る模写本や模倣作を無理に北宋の有名画家にあてているのが現実である。
十分な数の信頼できる作品で北宋絵画展ができるのは、台北の國立故宮博物院ぐらいのものではなかろうか。北京でも清明上河図という大物をメインにすれば、なんとかできるだろう。

あるいは、台北から借りてくる?? まさか、、でも、昔よりは可能性があるからね。
posted by 山科玲児 at 06:57| Comment(0) | 日記

三分の一ぐらいは残っていた

菊合序 (1).JPG
企画展 遊びの美
    2022年12月17日(土)〜2023年2月5日(日)
https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/next.html
で公開される

上東門院菊合 の本文ですが、もともと20首しかない短いものでしたから、このサイトのイメージだけみても6首ありますので、三分の一ぐらいは原物が残っていると考えてもよさそうです。
この菊合の「序文」のほうは全部 陽明文庫に残っていて、良い複製もありますので紹介してあります。上イメージは、その一部です。
posted by 山科玲児 at 06:28| Comment(0) | 日記

2022年12月12日

根津で上東門院菊合 残巻  初公開

上東門院菊合序detail.jpg


 上東門院菊合序
 この陽明文庫にある優美な書の複製は、ずいぶん昔からもっている(上イメージは部分拡大)。この複製:現在でもそれほど高くない。実物も京都国立博物館の「かなの美」展で観て、非常に優秀な書だと、感銘を受けた。近くに展示されていた国宝「和歌体十種」より、はるかに上であった。「和歌体十種」は、今回チケットがとれない東京国立博物館の国宝展にもでていましたけどねえ。
 悪口はともかく、 この上東門院菊合序は「序」なので、当然、本文があるわけであり、その本文の零巻断片巻が、植村和堂先生のところにあり、根津美術館に寄贈されていたそうだ、
 その作品、今週末からの
 企画展 遊びの美
    2022年12月17日(土)〜2023年2月5日(日)
で公開されるとのことである。
  それも初公開???  え、寄贈したときの企画展ではでていなかったのか?? それとも、その後、更に御寄贈があったのだろうか??  いずれにしても、これは素晴らしい。
 これは、みたいなあ。


posted by 山科玲児 at 16:23| Comment(0) | 日記

鑑定書


日本が騙された!3人の詐欺グループが仕掛けた驚きの手口とは!?【ルグロ贋作事件】
https://youtu.be/VdmeUDsW_30?t=2765
 で、山田五郎氏が

>資料とか文献に頼り過ぎてはいけない

と言っていたので、思い出したのが、、
2021年 2月(第14回)芸術文化講座「現在のアート市場とは? 〜 正しい向きあい方、蒐集のしかた 〜」
https://youtu.be/V2HmCci-g-0?t=2110

平野氏が「絵画の場合は、基本、鑑定書があるから、、」と言ったのに対して、
繭山龍泉堂社長:川島氏が、鑑定書について、奥歯にものがはさまったような、ここで露骨に言ってはいけないな、というような態度・言い方をしていたことである。
 古美術の場合、箱書きや鑑定書が信頼できないことがあるからだろう。まあ、日本の近代画家については、かなり信頼できる鑑定書がある場合があるので、そういうことを平野氏は言っているのだろうと思っている。

posted by 山科玲児 at 05:35| Comment(0) | 日記

2022年12月11日

ナスカの地上絵 新発見


新たに多量にナスカの地上絵が発見されたようで、なんと山形大学のチームだそうです。

ナスカの地上絵 新たに168点発見 最新技術で高速化“世界唯一”山形大研究グループ(2022年12月9日)
https://youtu.be/4t2VLninDCI

いくつか動画みましたが、このANNのものが一番良いようです。
学術的、アカデミックに現地で研究しているグループは山形大学だけというのには、驚きを隠せません。ほんとなのかなあ?
ナレーターの声が耳障りなあの芸風ではなく比較的穏当で、研究者の声を比較的まともに紹介しているようにみえます。
朝日新聞系列は、色々悪評がありますが、美術・考古関係に限っては、他メディアより相対的に良いようですね。
偽曜変天目騒ぎにものりませんでしたし、NHKよりましなしなところもありますね。

科研費が使われているので、政府サイトでの簡潔正確な紹介もあるようです。

詳細なストーリーは、
古代インカ・アンデス不可思議大全を推薦します。
posted by 山科玲児 at 16:43| Comment(0) | 日記