2022年12月03日

国宝の値段


  東京国立博物館100周年の昭和48年にも、大規模な展覧があり、藝術新潮が特集を組んでいた。そのとき、創立以来の購入価格、それも150周年記念の国宝展にもでているような作品のものを知ることができる文章がある。
ここで、年次と価格を抜き出してみたい。
推定の現在貨幣価値は、小学校教員や巡査の初任給をもとに考えて推算してみた。なお、博物館に売るときは古美術商はやや高くするという。コレクターに売れば、また引き取って商売できるが、博物館に売ってしまったら、たいがいはそのままで再度の商売の種にはならないからである。

仁清  色絵梅月図壺    明治11年 70円(約250万円)
光悦    舟橋蒔絵硯箱    明治11年 30円(約100万円)
平安    扇面法華経冊子巻8    明治19年 70円(約250万円)
奈良    日光菩薩半跏像    明治22年 125円(約370万円)
雪舟    破墨山水図    明治38年 3500円(約4900万円)


1920年ごろ〜昭和16年(1941年)ごろまではデフレ不況であり、物価は下がるか安定していて、日本の「近年の失われた20年」に似ていた。従ってこの20年間は1円を5000円と換算してもそうおかしくない。
与謝蕪村    蘭亭曲水図屏風    大正15年 3500円(約1300万円)
池大雅    西湖春景・銭塘観潮図屏風    昭和5年 1万円(約5000万円)

敗戦後、昭和20年から昭和25年ごろまで、ひどいインフレが起こった。小学校教員の初任給が50円程度から5000円まであがった。100倍程度の変動である。したがって、この時代の価格を現在の貨幣価値に換算するのは困難である。1円が3000円から30円ぐらいまでの幅があるからである。
 この時期の古美術取引が多いのは、財閥解体、非道な財産税など、GHQによる旧資産階級の弾圧が行われたため、彼らが所有する古美術が市場にあふれたためである。

長谷川等伯    松林図    昭和22年 70万円
平安    竹生島経    昭和23年 20万円
平安    虚空蔵菩薩像    昭和23年 150万円
南宋・梁楷    雪景山水図    昭和23年 150万円
平安    仏涅槃図    昭和24年 200万円
平安    地獄草子    昭和25年 60万円
鎌倉    一遍上人絵伝    昭和25年 100万円

江戸    月次風俗図屏風    昭和26年    20万円 (約600万円)
唐    トルファン出土樹下人物像    昭和26年 200万円 (約6000万円)





posted by 山科玲児 at 15:23| Comment(2) | 日記

呉穣之の肖像

呉じょう之IMG_4847 (1)-1.jpg

篆刻家書家画家として、清時代後期に活躍した呉穣之(1799年 - 1870年)の肖像は、弟子の蓮渓が描いた長い髭の老人の肖像(上イメージ)
だけが有名だった。それ以外を知らないといっていい。

2022年の西レイ印社オークションで、王素(1794-1877)の作品として、壮年髯なしの肖像が出てきた(下イメージ)。
大きな写真がないので真贋も含め細かい顔貌を観ることはできなかったが、興味深いことである。模写であったとしても興味深い資料である。
http://xlysauc.com/auction5_det.php?ccid=1330&id=217518&n=1462

王素  呉じょうし  画.jpg
タグ:呉穣之
posted by 山科玲児 at 10:30| Comment(0) | 日記