2022年12月15日

レオナルド・ダ・ヴィンチを探して

レオナルド・ダ・ビンチを捜して 東京書籍 (2).JPG


レオナルド・ダ・ヴィンチを探して (Artist by Artist)
者 ジョルジョ・ヴァザーリ (著),フランチェスコ・メルツィ (著),林 卓行 (監訳),神田 由布子 (訳),アントニオ・ビッリ (著),アノニモ・ガッディアーノ (著),パオロ・ジョヴィオ (著),マッテオ・バンデッロ (著),サッバ・ダ・カスティリオーネ (著),レオナルド・ダ・ヴィンチ (著),フラ・ピエトロ・ダ・ノヴェッラーラ (著),アントニオ・デ・ベアティス (著)

世界一有名な画家にして、「万能の天才」レオナルド・ダ・ヴィンチ。その謎に満ちた生涯を、同時代の証言者たちやレオナルド自身の言葉から読み解く。発売日:2020/08/31
https://honto.jp/netstore/pd-book_30461680.html

 レオナルド・ダヴィンチ本は、どうしようもないフィクション・オカルト本をはじめ多数ある。最近でた、この本はわりと出色で、同時代もしくは近い時代の資料を集めて、前に著者ロバートソンの解説をあげたものである。主な絵画、素描のカラー図版が結構入っている。プラドのモナ・リザも入っていた。
 英国のコートルード出身の学者の著書なので、当然、英語訳であったものを、さらに重訳したものだろう。
 文庫本よりわずかに大きいという小さな本なのは、むしろありがたい。長崎tutayaにあったので、図書券五〇〇円いただきものがあったこともあり、つい買ってしまった。
 内容はやはりヴァザーリ列伝からの翻訳が大半である。
しかし、それ以外の記録が入っているので、寝転がって読むのにもいい。
この記録自身をして語らせる、というスタンスは好ましいものである。

また、ロバートソンの「ヴァザーリが観たのは「プラドのモナ・リザ」でルーブルのモナ・リザは観ていない」という指摘は面白い。そうすると、プラドのモナ・リザはミラノのメルティのところにあったものかもしれない。

ただ、21pのロバートソンの解説で、、

>アンギエーリとの戦いの場合、壁にじかに油絵の具を塗ってしまったことが

というのはおかしい。油絵の具のはずないだろ。プリニウスの処方ですよ。一種のエンコースティックのはず。

ここで、不信をもってしまった。

また、翻訳・編集において、渾名である  アノニモ・ガッデアーノ をあたかも人名のようにあつかっているのは誤解を生みやすい。
音楽史でいう「第4の無名者」(古楽演奏団体 Anonymous 4にも使われた名前)と同様に、XXの無名者、としたほうが良かったと思う。

しかしながら、ヴァザーリの影に隠れて無視されがちな、ガッディ文書の無名者(アノニモ・ガッデアーノ)のレオナルド記述を日本語で容易に読めるのは、ありがたいことである。

Artist by artistというシリーズで、ゴッホ、マネ、ミケランジェロ、などがあるようである。
posted by 山科玲児 at 06:02| Comment(0) | 日記

列聖調査審問検事



日本が騙された!3人の詐欺グループが仕掛けた驚きの手口とは!?【ルグロ贋作事件】
の末尾近く
https://youtu.be/VdmeUDsW_30
という動画をみていたら、

 西洋美術館や東京国立博物館など、事実上の国立の美術館の場合、購入審議会の委員で、「職務として」「悪魔の代弁者 悪魔の弁護人」を一人、任命し、高給をだすべきではないか?と思った。
 この「悪魔の代弁者advocatus diaboli‎ 」というのは俗称で、正式名称は Promotor Fidei(信仰の擁護者)、日本語訳:列聖調査審問検事である。もともとカトリック教会で聖人認定する審議会のなかで任命された法王庁の役職である。聖人候補になった人物の欠点を詳細に調査してあげつらい、ひたすら非難する職責をもつ。これによって、聖人認定の質を上げ、スキャンダルを防ぐことになる。1983年にヨハネ・パウロ二世によって廃止され、より制限された権能のpromotor justitiaeになってしまったが、これは誤りで復活させるべきだと思う。
 美術館・博物館の場合は、購入予定の美術品について、欠点をあげ非難する公式の役職である。役職なのだから、いかにひどいことをいっても恨まれることはない。 そういう立場なのだから。逆に審議会の1委員がそういう行動をとれば、排斥されるし風評被害にもあうだろう。しかし正式の役職なら危険は少ない。
 私がこの「悪魔の代弁者」のことを知ったのは、ギョーム・アポリネールの短編LE SACRILEGE (瀆聖?)で語られる「セラファン神父」であった。アポリネールによれば、やはり自分の教団ゆかりの人を聖人にしたいという修道会の利害のため、熱心すぎる「列聖調査審問検事」は排斥されがちだそうだ。

posted by 山科玲児 at 03:27| Comment(0) | 日記