
コレクター李宗翰が三冊の淳化閣帖を翁方綱にみせたとき、翁方綱が低評価したという手紙があるそうだ.
「法帖三冊受け取りました。細かく観ましたが、おそらく本物ではないでしょう。題簽を書くことはできません」
と翁方綱が李宗翰に書いているそうだ。
だが、それは最善本を批判する論文での引用である。信頼すべき古文献や実物で確証したわけではない。
李宗翰の印が、李宗翰自身によって押されたものではないようだという疑惑がある、かなり素人くさい押し方である。上イメージのように対面にうつっているという言語道断な押し方である。
一方、印自体は偽物ではないようだ。
これから推理すると、李宗翰の死後、残された印を後裔の人が押したのではなかろうか
それは、李家の収集品が売却された清末中華民国期のころだと思う。売却するときに李宗翰印があったほうが高く売れると思った家人が押したのだろう。
似た例もある。山東の大コレクター 陳介祺 監拓/手拓とされる拓本は多いが、どうもその中で偽の印が押してあるものが少なくない。しかし拓本本体は本物である。これは、高く売るために印を後の時代に押ししたのだろうと思う。これと似た事情だったのではないか?
前の翁方綱が低評価したという手紙を考えると、翁の批評にがっかりした李宗翰が蔵書印もおさず倉庫に放置していたものを、清末中華民国期のころに李宗翰後裔が発掘したという事情だったのではないか?と推理している。一応王鐸の題簽もあり、明末清初以前の古いものには違いないのだから。