【注意!】上イメージは「オックスフォードの断片」ではありません。
ヒューホー・ファンデア・フースの特別展
https://www.smb.museum/en/exhibitions/detail/hugo-van-der-goes/
ヒューホー・ファンデア・フースの特別展
https://www.smb.museum/en/exhibitions/detail/hugo-van-der-goes/
でオックスフォードのクライスト・チャーチ ギャラリー所蔵の断片が展示されている。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hugo_van_der_Goes_-_The_Virgin_and_Saint_John.jpg
これが、なんというか問題作ではある。ただ、カラー写真をみても、それほどの傑作かなあ?
という疑念はある。まあ、真っ黒になっていて、なにがなんだかわからないという感はある。
芸術的価値はともかく、この断片は、かなり有名だったフースの作品のオリジナルの断片ではないか?とされているもので、その話題性があるので一言書いてみたくなった。
ただ、マックス・フリントレンダー先生は「失われたオリジナルの断片だとみるのは間違いだ」と主張していたそうだ。確かに断片が残っていると、それをオリジナルだとみなしたくなるのは人情ではある。しかし、ブリューゲルの「聖マルチンのワイン」でもウイーンkunsthistoricheの断片がオリジナルだと長い間思われてきたのに、21世紀になってオリジナルの完全体(ひどく傷んでいるが)が出現した(PRADO)、という前例もある。
この絵の失われた全体を模写したり版画にしたりしたものが結構あるようだ。
ベルリンの展覧でも3点もでていた。上イメージはウイーン・アルベルティーナ所蔵の素描(これは完成作を備忘で模写したものだと考えられている。)
しかも現代でも模写・模倣作がオークションで安値ででている。
Sotheby's 2013 April30 London
https://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2013/collections-l13311/lot.349.html
Christie's 1999May22 London
https://www.christies.com/en/lot/lot-1449381
そうなると、コピー.模写がそうとう多い絵であり、有名かつ人が容易に観ることができるところにあったということであろう。
ただ、このオックスフォードの断片、麻布にテンペラという、痛みやすい材料で制作されている。この材質の絵には、保存状態が良い絵も希にはあるが、大抵はひどい退色でボロボロ状態になってしまったものが多い。当然、消滅した作品も多い。
まあまあ、みれる作品としては、ロンドン、ナショナルギャラリーのブーツの「埋葬」がある。この作品もかなり褪めたような色合いになってしまっているが、まだましなほうだ。
https://www.nationalgallery.org.uk/paintings/dirk-bouts-the-entombment
このオックスフォードの断片もひどい状態である。ただ、ちょっと不審なのが、あの有名なボッテチェルリ「ヴィーナスの誕生」も麻布にテンペラなのだ。しかも状態が非常に良い。いったいこれはどういう技法の差なのだろうか??
この作品の全体の形は、この展覧会に展示されたナポリ・カピデモンデにあるコピー
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hugo_van_der_goes_(da),_piet%C3%A0,_1480-90,_Q11,_01.JPG
のようなものであろう。
ただ、サイズを計るとオックスフォードの断片のもと絵はかなり大きな絵のようにみえる。最大で1.5mx2m〜1mx1.5Mぐらいはありそうである。ベルリンの解説ではもっと小さく82cm x 103 cmと推定しているのは、どういうわけだろうか?? なお、コピーは皆小さく縮小してコピーしているようだ。