昨日、紹介した
長崎県立美術館
小企画展 プラド美術館所蔵 スペイン黄金世紀の静物画――ボデゴンの神秘
https://www.nagasaki-museum.jp/permanent/archives/28
長崎県立美術館
小企画展 プラド美術館所蔵 スペイン黄金世紀の静物画――ボデゴンの神秘
https://www.nagasaki-museum.jp/permanent/archives/28
にいってきたが、非常に面白い作品が2点あった。再度見に行くつもりだ。行ってよかった。
ミゲル デ プレート Miguel de Pret(1595?-1644)の 葡萄の絵 2点である。 葡萄の質感・肌合い・重さ・表面にふいた粉の感じなど、素晴らしい描写力である。それが暗黒の背景から浮かび上がっているわけで、これは、「葡萄の肖像画」といってもよい。葡萄の粒も不揃いで相互に押し合っている感じ、ところどころ空いている感じも素晴らしい。虫があちこちについているところもリアルで、虫の描写も度が過ぎずいかにも人間が葡萄をみたとき、あ、虫が?と気がつくような感じに描いてある。2点のうち、NO.5のほう(イメージ)がより重厚で、NO.4のほうは、やや軽い仕上げになっている。ちなみにこの凄みは展覧会図録のカラー図版では感じることはできない。プラドのサイトの画像がやや良いと思う。
他の絵、例えば展覧会サイトにある、フェリペ・ラミーレス《食用アザミ、シャコ、ブドウ、アイリスのある静物》 1628年の左上に描かれた葡萄との決定的な違いは、ラミーレスの絵をみるとき「葡萄がある」と思ってからその描き方をみるのだが、このプレートの絵では「何かがある」の次に「葡萄」がでてくるのである。記号・一般概念・言葉が先行するのか、それとも「存在SEIN」が牢固としてあって、それから「葡萄」という名詞がでてくるのかという点である。
この点、静物画の存在理由というか、形而上学的な効果というものを感じるところである。
他の作品と違いすぎるこの画家は、ベルギーのアントワープ生まれで、1630年代にはマドリードで画家として活動していたようである。ダヴィッド=セーヘルスやクララ=ペーテルスなどの迫真の静物画を経験していると、やはりね。という感じもする。亡くなったのはサラゴッサであるがこれはフランスとの戦争と関係しているらしい。惜しいことである。元々の名前は、ミハエリス・ミカエルだろう。DE PRETという名前は現在でもベルギーにあるようだし、15世紀後半の大作曲家ジョスカン デ プレJosquin des Prezを思い出させる名前でもある。
プラドのサイトにも優れた画像と解説が提示されている
このミゲル デ プレート Miguel de Pretという画家は極最近発見された画家といってもいいらしい。この2点の絵も2006年に購入されたものである。おまけにもとは別の画家の作品にされていた。
むやみに高い今回のカタログの解説にもあるが、最近 アベロ コレクションでサイン入り絵画が発見されている。これは賑やかな感じのもので、まあこんなものかという印象だ。
ABello Collection Signed
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Miguel_de_pret-bodegon.jpg
ABello Collection Signed
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Miguel_de_pret-bodegon.jpg
セラルボ侯爵の美術館でも「白葡萄」という、今回の2点に似たサイン入り絵画が発見された
Museo Cerralbo marques de Cerralbo collection
Enrique de Aguilera y Gamboa (1845-1922),
白葡萄
http://museocerralbo.mcu.es/coleccion/galeriaDeImagenes/pintura.html#sala18
Museo Cerralbo marques de Cerralbo collection
Enrique de Aguilera y Gamboa (1845-1922),
白葡萄
http://museocerralbo.mcu.es/coleccion/galeriaDeImagenes/pintura.html#sala18
このサインは Miguel de Pret fecit なんだそうで、まるでファンアイクのサインみたいである。
このサイン入りの絵「白葡萄」に基づいて、プラド美術館のこの2点はサインはないが、ミゲル デ プレートの作品と現在はされているようである。