2015年05月06日

国際リニアコライダー CM


  日本の北上山地での建設が計画されているらしい、素粒子物理学の巨大施設:国際リニアコライダーのCMアニメができていた。なかなかよくできていて、解説音声がひとつもないけれど、ほぼわかる。

 真ん中の上のループで電子と陽電子を逆向きに走らせて予備的加速をするのも良く出来ていると思う。

 ひとつだけよくわからないのは、電子(及び陽電子)を15kmの菅の中を衝突させる方向とは逆に走らせる経路があるところで、たぶんこの経路では加速はしないで、最終加速のために両端に送るだけなのだろう。どう考えてもここで加速すると両端のループを飛びだしてしまいそうだし、最終加速経路での磁場に干渉してしまいそうだ。



  このリニアコライダーってのは、いわゆる加速器の一種なんだが、従来はあまり注目されていなかった。というのも、あのヒッグズ粒子発見で騒いだスイスにあるCERN(欧州核研究センター)の施設を代表とするような丸いドーナッツ形の装置の中で素粒子をぐるぐる何度も回してその間にエネルギーを上げるという方式(サイクロトロンやシンクロトロンのようなもの)が主流だったからだ。直線の菅で加速するリニアコライダーではエネルギーをあげるのにどうしても極端に長い菅が必要となり、同じエネルギーに到達するのにドーナツ形と比べ施設が巨大になってしまうのでどうしても後塵を拝することになってしまっていた。どちらかというと、ドーナツ形の加速器の付属施設として建設されてきた歴史がある。

  しかしながら、スイスのCERNの巨大施設と同じような形式でもっと巨大な施設を作って画期的な実験ができるかというと、それは、とんでもなく大きなものになり困難である。米国ですらそれは難しい。それならCERNの施設を改良してよりよいものにして、色々な実験をやった方が良いという傾向がでてきた。
  ドーナツ形加速器の実験は、現在も発展しているが大規模施設として新たに建設する意義が薄れているのではないか?という感じを個人的にはもっている。ただ、別施設で独立に実験するという意義はあるが、そのためだけに巨大施設を造るのはのはいかがなものか?
 その点、リニアコライダーは、超伝導を使った加速方法の技術革新もあり、実験そのものが電子と陽電子の衝突という極めてピュアな実験がやれるので、まだまだ可能性があるように思う。
  もともと、こういう巨大科学というのは「技術」が優先することが多いので、日本むきかもしれない。
数年前 騒ぎになった「超高速ニュートリノ」実験も、たかが「光ケーブル端子の施工問題」で遅延が起こった結果、あの奇妙な結果が発表されて、世界中の物理学者が大騒ぎしたのである。
  「科学」が「技術」に依存しやすい所以である。

  地震が多い国という問題はあるが、筑波のKEKこと高エネルギー加速器研究機構の加速器も順調に運用して成果をだしているのだから、なんとかなるのではないだろうか。



posted by 山科玲児 at 10:07| Comment(0) | 2015年日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]