2015年05月09日

スルバランの静物画の模写

SaintLous Fake Zurbaran Still Life.jpg
 先日から言及している
長崎県立美術館
小企画展 プラド美術館所蔵 スペイン黄金世紀の静物画――ボデゴンの神秘
https://www.nagasaki-museum.jp/permanent/archives/28
からみで、スペインの静物画のことを色々思い出している。
スルバランの静物画の非常に巧妙な模写・贋作のことを思い出した。

プラドの
スルバラン  静物 
http://www.wga.hu/html/z/zurbaran/1/still_li.html
と似たようなセッテングの絵が米国セントルイス美術館にある(イメージ)が、それと同じ絵がやはり米国のノートンサイモンのところにあったという事件である。

スルバラン  静物 ノートンサイモン コレクション カリフォルニア パサデナ
http://www.wga.hu/html/z/zurbaran/1/stillife.html

 どうも、最初セントルイスに入ったときは更に上塗りがあったらしく、クリーニングした段階では、このモノクロ写真のようにノートンサイモンのものとそっくりになった。

saintLous fake.JPG
 その後、更に部分的に下の層の絵画をみせたのが上の現状のイメージである。どうも、古い絵(たぶん聖人像)の上を塗りつぶして描いたものらしい。メーヘレンのフェルメール偽作も同じような手段をとっている。こうするとキャンバスや裏からみた下地は古いように見えるわけである。

 ただ、17世紀のレンブラントなどは若い頃仲間どうしでキャンバスを交換して失敗した絵を塗りつぶして制作していたそうだし、板絵では古い絵の上に重ねて描いたものも多いので、そういう例も考えると重ね描きがあるからといって贋作であるとはいえない。しかし、カドミウム黄やクロム緑という19世紀発明の顔料が検出されたので19世紀以降の模写であることは間違いない。これはやはり、欺瞞目的の模写のようにみえる。

  ref. Mineapolis Museum of Arts, Fakes and Forgerys,
1973

posted by 山科玲児 at 09:50| Comment(0) | 2015年日記
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