2015年05月24日

石川美子「青のパティニール 最初の風景画家」(みすず書房)

青のパテニール.JPG


石川美子「青のパティニール 最初の風景画家」(みすず書房)
http://www.amazon.co.jp/dp/4622078449


図書館で借りて読みましたが、 かなりいい本ですね。
あら探し しても、なかなかみつかりません。
 三〇〇頁以上の大冊なんですから、アラがあって当たり前ですが、結構周到な満を持した本ですね。勿論 想像や空想も多いのですが、それはちゃんと「想像」「推測」「空想」とわかるように書いてありますから、間違えようがありません。
 しいて、一つだけあげると、203−205pで、「ベリー公のいとも豪華な時祷書」の細密画(図55)を1415年ごろとして、議論していますが、この絵は1483,4年ごろにジャン=コロンブが補った部分であり、70年も後なんで、時代の前後関係の議論がおかしくなっているところぐらいです。

おまけに、英語 フランス語などの文献で、私と同じものを読んでいるのが明らかです。
バレのパティニール本も愛蔵していますからねえ(イメージ)。

patenir  harminia mundi.JPG

これは、ひょっとしてタワリシチじゃないのかな?と親近感を覚えました。


 2005年に、プラドを訪ねたとき、「ステュクス川を渡るカロン」と「聖アントニウスの誘惑のある風景」には驚嘆しましたが、「エジプト逃避途上の休息のある風景」は大きいばかりでくすんでいて印象が悪く、「聖ヒエロニムスのいる風景」もそれほど感心しませんでした。これらは、その後たぶん、2007年のパティニール展に合わせてクリーニングされてかなり美しくなったので、私がみたときと印象が違うのではないか?と思っています。



Ambrosiana Lady HalfP1020860.JPG

また、女性半身像の画家の美しい作品を何点も欧州で観る機会があった(イメージ)ので、
この本で、 [パティニールの弟子のカレル アレルツでは?]
という著者の推測は刺激的ですね。そうすると、あの女性たちのモデルはパティニールの娘たちブリジットかアンナなのか?とか、空想したくなります。

posted by 山科玲児 at 09:27| Comment(0) | 2015年日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]