2015年05月27日

ISILと文化財返還問題



<シリア>ISがパルミラ制圧 世界遺産破壊の恐れ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150521-00000019-mai-m_est
 アッシリアの遺跡 ニムルド破壊にも目を背けたくなるものを感じましたが、タリバン以後、こういう中世的な何世紀も前のような文化財破壊は、イスラム過激派の犯行だけですね。
西洋では、戦争による副次的な破壊は第二次世界大戦中にもありましたが、意図的なものでは、フランス革命・ナポレオン戦争時代以降はナチスでさえここまでやっていないのではないか?と思います。
 この憂鬱な野蛮行為を、ちょっと斜めからみてみます。タリバンのときも議論されたのですが、

「西欧帝国主義の人々が野蛮に支配されてしまった国から文化財を西欧へ移したのは良いことだった」

という思想がこの事実によってますます堅固なものなると思います。もう事実がこうなのですから、どう反論していいかわかりません。現地にあれば壊されて粉みじんになってしまうのですから、ロンドンにもってきたのは「偉大な文化財救出」ではないでしょうか。
 多少、修理に問題があったとしてもそれがなんでしょうか?ハンマーで破壊しましたか?といわれればだれが反論できるでしょうか?
 カブール博物館の略奪のときも、ギメ美術館にアフガニスタンの発掘物があって良かったという声が大きくあがったものです。

  従来は「文化財は現地で保存すべき」という現地主義がユネスコでも主流でしたし、返還のための組織や運動も多かったのですが、バーミアン、ニムルド パルミラの蛮行をみるとむしろ逆ではないか?と言わざるをえません。 Wikipediaに文化財返還問題
という項目 もありますし、パルテノン スキャンダルなど関連する本も多いのですが、今後、「人類全体としての文化財保護」という議論が強くなると思います。NHKなんかは、終始 現地主義でしたが手のひら返しをいつやるんでしょうね? たぶん前言ったことは皆無視し、知らんぷりをするんでしょうね。

 少し利己的に考えると、日本は基本的には文化財の集積地であり、1000年以上 外国から輸入した文化財を含めて伝世文化財を大切にしてきました。少なくとも大破壊を繰り返してきた大陸諸国とは雲泥の差があります。そのために国中が文化財だらけになり指定や保護の手が回らないという状況になっています。 結果的に文化財外交では、英国やフランスのような立ち位置にあることが多いわけで、こういう風潮は「野蛮な国家からの返還要求」に対して、むしろ有利に働くと思います。



posted by 山科玲児 at 07:48| Comment(1) | 2015年日記
この記事へのコメント
悲しくてイタいことですね。
本来、テロなんてものは、野蛮な帝国主義への抵抗のはずなんですが、いやはや。
Posted by 臨夏 at 2015年05月27日 09:00
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