2015年06月12日

ルクセンブルクとリヒテンシュタイン:美術品の伝世

DOU_Violinist0.JPG


 Gerrit Douの画集をみていたとき、注目すべき作品がリヒテンシュタイン公の個人コレクションにあることを再認識した。この「ヴァイオリン奏者」(イメージは部分)は寺神戸氏が講演していた17世紀半ばのヴァイオリン奏法を忠実に描いている得がたい作品でもある。
http://www.liechtensteincollections.at/en/pages/artbase_main.asp?module=browse&action=m_work&lang=en&sid=489525&oid=W-1472004121953420258
  リヒテンシュタイン公の美術品収集は有名で、昔、レオナルド ダヴィンチ作とされる作品をアメリカに高額で売ったこともあるくらいである。現在でも相当良いコレクションをもっている。東京でも数年前にリヒテンシュタイン展があったようである
 http://www.asahi.com/event/liechtenstein2012-13/

 一方、ルクセンブルクに優秀な芸術品があるという話は聞いたことがないのが不思議なことである。
ベネルクスと呼ばれて、リヒテンシュタイン公国よりはるかに大きな国であり、国民一人当たりのGDP世界一と呼ばれる経済的にも豊かな国なのになぜ美術品がないのだろう。あの貧しいアイルランドのダブリンや、スコットランド、マルタのような小さな島にも由々しいコレクションがあるというのに、金満のルクセンブルクにないのは不思議である。

 近年まで独立していなかったといっても、ベルギーだって19世紀に独立した国であり、あのマイヤーファンデアベルクのブリューゲルもスウェーデンからケルンに売りに出されたものを買い戻したようなものだし、メムリンクの天使の合奏(アントワープの王立美術館)もスペインからの出戻りである。豊かなルクセンブルクになぜ大きなコレクションがないのだろうか?
 ひとつ考えられるのが30年戦争の荒廃惨禍を強く受けた地域だということだが、それにしても奇妙なことだ。

posted by 山科玲児 at 09:27| Comment(0) | 2015年日記
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