2015年07月17日

ヴィヴァルディ オペラ「モンテズマ」の発見と再演


2015年04月25日に。
旧ソ連所蔵楽譜の再発見
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/123055290.html
で、
 ベルリンの現在まで続く古い合唱団体ジングアカデミーのコレクションがウクライナのキエフから
2003年にベルリンに戻ってきたということを、書いたが、
 なんと、この楽譜コレクションのなかから、ヴィヴァルディの失われたとおもわれていたオペラ「モンテズマ」(ヴィヴァルディはモテズマと書いているが、現在ではモンテズマのほうが通りが良い)が発見され、何度も上演されCDまででているのみならず、さわりを動画でみることさえできる。

  ヴィヴァルディのオペラのことを少し検索していて知った。

 これについては、カリフォルニア  ロングビーチでの公演(世界初演ではなく3,4番目ぐらいらしい)のときの解説に細かく書いてあった。
 http://www.longbeachopera.org/archive/2009-season/motezuma

リンク切れのため。Wikipediaを代替

 この「モンテズマ」は、いうまでもなく、メキシコのアステカ皇帝でスペインのコルテス軍に侵略征服されて国を失い処刑され、人民は奴隷化されたという二重の悲劇の主人公である。

 このモンテズマの衣装というのを、ブリュッセルの歴史博物館でみたことがある。美しい鳥の羽をたくさん縫い込んだ華麗なもので、なんでこんなところにあるのだろう?と思ったものだが、スペインはハプスブルグに統治されており、ブリュッセルはハプスブルグ世界帝国の首都だったときがあるからだと思い直した。確かこの衣装などを、当時ブリュッセルに来ていたアルブレヒト=デューラーが観たはずである。

 保存の問題はあるだろうが(ブリュッセルでは暗い照明をおとした部屋で展示)、日本でこの衣装は展覧されたことは一度もない。このようなめざましい話題 そしてブリュッセルの衣装を、なぜ日本のマスコミは一顧だにしないのか? 不思議というより、マスコミの無能を心から軽蔑するものである。

 ヴィヴァルディの時代は、この残虐な征服から既に200年以上たっていて、アステカやモンテズマの話などエキゾチズムやシノワズリーに混じった変わった話の一つになっているわけである。時代は少し下るがラモーの「優雅なインドの国々」などのアチャラカとあまり変わらない認識であって、あまり真面目に筋を考証しても始まらない。

 このヴィヴァルディのオペラ「モンテズマ」は台本だけは古くから知られていたので、その台本をもとにヴィヴァルディの他の曲をあてはめて再構成した復元演奏がありLDまであったらしい。あのお騒がせ企画が多い J.C.マルゴワールの仕事である。原本が発見されてしまったので、無駄になってしまったが、マルゴワールの仕事としては意外に真面目なものだったかもしれない。人生には「徒労」ということも結構あるものだ。

 柴田南雄先生は1969年に西洋音楽の歴史(中)でヴィヴァルディの「宗教的合唱曲は実にすばらしいし、オペラも面白い」と評されていたが、遂に「モンテズマ」の発見と再上演まできたか、と隔世の感がある。

 
posted by 山科玲児 at 07:33| Comment(0) | 2015年日記
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