2015年07月25日

ゲントの祭壇画の年輪年代



 ゲントの祭壇画を今、修理しているので、同時に科学的調査が色々実施されているようだ。
その結果のレポートが公開されている。
  http://closertovaneyck.kikirpa.be/#home/sub=documents

  そのなかでも、どうも私が間違っていた・先入観をもっていたのが打破されてしまったのが、
 年輪年代である。これは板の年輪を調査して、その板を作った樹木がいつ伐採されたかを推定する技術で、近年かなり発達して多くの間違いを暴いたり、法隆寺の五重塔の中心柱の年代が異様に古いことがわかったり、色々な成果があがっていた。
 これについては、13年ほど前に書いた
  年輪年代法と美術、ボスの絵画(2002/09/14 update)
 http://reijiyamashina.sakura.ne.jp/dendroch.htm
 ただ、ここで伐採年代と制作年代の開きをどれくらい許容できるか?という問題については50年ぐらいが限界かと思っていたが、どうももう少し長いようだ。

 このゲントの祭壇画は完成が1432年と決まっているので、その前に兄ヒューベルトも含めて制作したとしても制作年代がはっきりしている。したがって樹林年代を測定すれば、当時、伐採してから何年ぐらいの板を使ったのか常識的な年数がわかるわけである。

  そのレポートをみると、相当古い年代が多い、一番古いので、1377年ごろ伐採(主なる神)、新しいので1408年伐採、という風である。
 アダムとエヴァは、予想どおり一番新しい木材を使っているようだ。

 勿論、伝承制作年代より新しい年代がでれば、模写や取り替えということになってしまうのだが、著しく古い60年、70年という場合もあるということがある、ということを留意し、古すぎるから真作ではないという議論はできないのではないか? ということを痛感した。こういう議論を私自身したような気もする。また、伐採後数年以内のものがないということから、年代がぎりぎりのプラド美術館のボス「乾草車」は問題があるのではないか?という議論も可能かもしれない。

[PDF]Hubert and Jan van Eyck Ghent Altarpiece: Adam and Eve
PDF]Central panels of the Ghent Altarpiece - Closer to Van Eyck
posted by 山科玲児 at 09:45| Comment(0) | 2015年日記
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