2015年09月20日

藤田嗣治



画家:藤田嗣治を題材にした映画が公開されるようである。
11-14公開:映画『FOUJITA』公式サイト
 http://foujita.info/


  藤田画伯については、西洋美術館や近代美術館にある佳作
   http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20150919/
に独自性を感じていたが、
    2006年4月4日というから、東京を離れる少し前ぐらいに、竹橋の近代美術館で、
  生誕120年藤田嗣治展 : パリを魅了した異邦人 LEONARD FOUJITA. 2006年3月28日-5月21日に行って、強い印象を受けた。
  まあ、なんというか一筋縄じゃいかないな。

特に、このときまとめてみた戦争画、「アッツ島玉砕」などはよく憶えている。

 これらの戦争画制作が、敗戦後 非難されて「公職追放」に伴うような、画家仲間からの批判追求を受けて1949年日本を捨て、パリに定住した。

1968年1月 フランス人Leonard Foujitaとして逝去されたとき、芸術新潮1968年3月号は小特集を組んでいてゆかりのあった人々の話を掲載している。
  日本を敗戦後離れるときのメッセージは「絵かきは絵だけを描いてください、仲間げんかをしないでください、日本画壇は早く世界的水準になってください」であった。
 また、1966年頃 ある日本人ビジネスマンとの会話で「離日の心境に触れ、帰日の希望の有無をたずねると、さすがに寂しい顔になり」、
藤田画伯>「戦争画については話たくないが、戦争は人間のドラマで、厳しい人間の極限を描くことと同じだ。また、あの場合、国に協力することは当たり前だろう。」
藤田画伯>「もちろん日本に帰りたいよ。だけど帰れない。もう人に利用されるのはいやだ。静かにしておいてくれないし、またこのからだでは帰れないよ。」
と述べられたそうだ。

  この事情は、敗戦後の暗い状況が反映しているのだが、私の記憶でも、1970年ぐらいまでは「芸術の価値を政治性の程度で評価する」という現代では信じられないような原理主義が横行していた。
「芸術家は人民大衆に奉仕すべき」という文化大革命のスローガンのような論さえあった。そこまでなくても「芸術家も政治活動をすべき」「芸術家は反体制でなければならない」「芸術作品には、政治的社会的抵抗精神がなければならない。ない芸術は腐敗した反動的な堕落芸術だ。」というような宣伝工作のような言論が瀰漫していた。「抵抗精神」があればあるほど優れた芸術だということになった。そのため、過去の芸術作品の中に 「抵抗の精神」「反体制的心情」を、無理にこじつけてもみつけだすという無茶な批評が多かったものである。これの背景・根源には、19世紀に成立した「苦悩する天才芸術家」「反抗者としての芸術家」「生前は認められないのが先駆的芸術家」という固定観念がある。その逆の富裕な流行作家は、いかに優れた作品を創造しても、俗物・非芸術家に「理論的には」なってしまうのだ。ルーベンスやラファエロへの相対的な低評価は20世紀の産物である。そういう意味では藤田画伯は18世紀的画家だったからこそ苦しむことになったのだろう。
 ひどいのは、物理学など自然科学にすら「階級性」を主張し、「ブルジョア的科学」を無意味に排斥するルイセンコ説などがもちあげられたものだ。

  戦争画なんて、西洋の絵画史にはごろごろある。古くはイッソスの戦い(ポンペイのモザイク)、ナポレオン戦争の記録画など多くの例がある。もっとも、古代の戦争に擬して描くというようなものも多い。西洋の戦争画は良くて、日本軍の戦争画は悪いというきめつけが疑いもされずに行われた。

  21世紀の現代、イデオロギーの支配が低下して、もう少しロココ的になっているから、藤田画伯の再評価も進むことだろう。
東京 竹橋の東京国立近代美術館でこの秋、映画も含めた企画展があるようである。
東京国立近代美術館所蔵作品展「MOMATコレクション 特集: 藤田嗣治、全所蔵作品展示。」
【会期】2015年9月19日(土)〜12月13日(日)
posted by 山科玲児 at 09:56| Comment(1) | 日記
この記事へのコメント
このあいだ、とんぼの本シリーズで戦争画の本を買いましたが、ええ芸術ですよね。
藤田のも良かったです。

ただ、植民地の戦争画、というのはもうひと回りややこしいようで、
修論で台湾日治時期の近代画をテーマにしましたが、芸術とは別に、日本人の浅ましさが出ていました。
台湾人画家も結構描いていて、どうも反戦画と見まがうような戦争画もありました。j

沖縄の那覇の沖縄県立美術館・博物館にも藤田来沖のときの、沖縄人を描いた絵もよかったです。
近代の沖縄画壇、というのもあったのですが、沖縄戦でほぼ全て灰燼に帰し、やまとぅにあったであろう、
藤田の絵は貴重なものです。

台湾画壇に、沖縄人画家が作品を出していた、という歴史も有ります。
Posted by 臨夏 at 2015年09月20日 20:50
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