2016年01月20日

ミュンヘンのリッピ

Munich Lippi Annunciation.jpg


    フィリッポ リッピ LIPPI, Fra Filippo (b. 1406, Firenze, d. 1469, Spoleto)は、イタリアルネサンスの画家のなかでは、気になる人で、モノグラフ
   フィリッポ・リッピ (イタリア・ルネサンスの巨匠たち―フィレンツェの美神)  1994/2
    グロリア フォッシ   (著),    塚本 博 (翻訳)
   http://www.amazon.co.jp/dp/4487763630
 ももっている。修道士画家だが、フラ アンジェリコのような謹直な人ではなく、なかなか放胆なルネサンス人だったようである。
  彼の作品はルーブルやウフィッティ、ピッティで観て、なかなか良いと思っていたが、このモノグラフで紹介されている作品に気になる大作がある。
  ミュンヘンのアルテピナコテークにある高さ2mもある受胎告知である。
http://www.pinakothek.de/en/fra-filippo-lippi
http://www.wga.hu/html/l/lippi/filippo/1440/02annunc.html

  リッピの作品のなかでも大作だろうが、あまり紹介されない。現物を観賞したことはないが、本の図版を一目見て、これはフランドルのロヒール・ファン・デア・ワイデンやメムリンク、グースなどの作品に非常に近い作品だと感じた。聖母の体型が縦に引き延ばされているのは、ヒューホー ファン デア グースのポルティナリ祭壇画(フィレンチェに制作直後からある)の両翼の聖人像にそっくりであるし、白百合もポルティナリ祭壇画を思わせる。

  フランドル絵画の味わいとイタリア絵画の要素が入り交じった面白い作品である。
  ただ、ドイツにあるイタリア絵画は、ニスの色の差なのか、なんとなくドイツ的北方的で、真贋について考えさせるものが多い。ラファエロの作品でもドイツにあるものはなんとなくドイツ的な感じがある。これは、ドイツ人がそういう作品を選択したのか、補筆修理やニスでドイツ的に変容したのか、それとも最初からドイツ人がつくったコピー・模倣作なのかは、当方では判断できない。

  この作品の場合は、近年出版されたアカデミックなHolmesによるモノグラフの表紙になっているし、もともとフィレンチェの修道院にあったという記録もあるので、真贋の問題はないと考えている。

c. 1443
 Wood, 203 x 186 cm
 Alte Pinakothek, Munich


posted by 山科玲児 at 09:11| Comment(0) | 2016年日記
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