長崎県美術館でやってるこの展覧会、結構よかったので再度推薦しているんですが、、
色々考えさせられるところがありました。
まあ、外国の美術館にいって、わざわざ版画を見るということはあまりないと思います。まず油絵や彫刻なんかでしょう、まず観るのは。素描だってそう観ないし、版画となるとまずみないのが普通でしょう。
そういう意味では、こういう巡回展出張展はとても有り難いと思います。
ただ、私はレンブラントに対してはあまり評価できません。
ハーグで、一流のレンブラントを観たあと、「私にはレンブラントはむかない」「レンブラントを評価する感覚がない」と実感したものでした。その前は日本には一流のレンブラント作品は来ないので「評価できないのも無理はない」と思っていたのですが結構定評のあるものをみても一向に感動がないのでおかしいな?と思っておりました。
まあ、そういう「レンブラント嫌い」の人の感想なことを念頭に置いてお読みください。
まず、自画像の版画ですが、版画というのは基本的には販売するものでしょう? 一体 だれが画家の自画像の版画を買ったのでしょうか? ただ自画像や肖像の版画は、本の巻頭の著者肖像としていれたり、名士列伝や名士紹介集などで肖像版画をいれたりするのは普通にありますが、レンブラントに著書があったなんてきかない? 名士? 自画像の油絵はともかく版画というのはよくわからないものです。
また、試作品的な素描の版画もありますが、いったい売る気で制作しているんでしょうかね。
上に上げたのはアダムとイブのエッチング版画です。展示されています。
まあ、なんて卑小というかひどい体型というか、少しも偉大さや美しさを感じることができません。
詳細画像Adam and Eve
1638
Etching, second state of two, 162 x 116 mm
Teylers Museum, Haarlem
http://www.wga.hu/html/r/rembrand/51etchin/1/028.html
1638
Etching, second state of two, 162 x 116 mm
Teylers Museum, Haarlem
http://www.wga.hu/html/r/rembrand/51etchin/1/028.html
アルブレヒト デューラーの版画(左)も同じデューラーの油絵(右、プラドにオリジナル、ウフィッティに模写があります)に比べればややずんぐりですが、それでもこれほどひどくはない。
いったいこれはなんなんでしょうね。
他の版画でも日常生活をそのまま描くというか率直というか、美化があまりないんですね。しかし芸術作品でなんらかの美化や昇華や誇張がないというのは、哲学的には面白いのかのしれませんが、芸術作品といえるのか? ハイパーリアリズム絵画も一種の誇張ですし、写真だって誰がとっても同じにはならない。汚さやグロテスクや悪を描く画家の場合は、そこをつきつめてある凄みを感じることがあるのですがどうもそういうものともレンブラントは違うようです。
どうもレンブラントのこういう妙な卑小好みというのが、逆に
のようなリアリズムにつながっているのかもしれません。