2016年05月24日

コピー というのは安易


UNKNOWN Brugge St Salvaror.jpg


聖母子への祈り: 初期フランドル絵画の祈祷者像  2015/2/24
今井 澄子
国書刊行会 (2015/2/24)
http://www.amazon.co.jp/dp/4336058326
の巻頭図版に、上記の絵を取り上げています。

>ロベール=カンパン(コピー)<<とりなしの聖母>>  ブリュージュ  救世主大聖堂
というキャプションがついています。
  大きなイメージは、こちらから、  http://www.wga.hu/html/m/master/zunk_fl/15_paint/1/09cross.html

  割と、軽視されている作品なので、十分な研究が今後とも必要だと思います。非常に古風な絵画で、70,3 x 71,6 cmと結構大きく、 保存状態も悪くないので、もっと注目してもいいと思っていましたので、取り上げること自体は優れた業績だと思います。

 この絵は、2005年8月1日にブリュージュ(ブルッヘ)救世主大聖堂の狭い展示室で観賞したとき、
>また、古い本に掲載されていた伝Hubert van Eykの金地がめだつ絵画もみることができた。キリストの身体が伝van Eyk作品やトリノ時祷書のそれに近くて、細身なのが、hubertを連想させるところなのだろうが、実際はどうか?下部マリアやヨハネの顔をみと、 Hubertではないだろう。写本の一部分を大きくしたような古風な様式ではあるが、むしろ、マサイスなどと同時代の擬古的な作品ではあるまいか?

  という感想を持ちました。ここでいう古い本ってのは、Fierens Gaevert, La Peintre a Bruges,1922です。

 上記の本で、気になったのは、ロベール=カンパン(コピー)というキャプションをつけていることです。
トルネで活躍していた画家 ロベール=カンパン の作品のコピーということにいつなったのか、全くわかりませんし、根拠も不明です。
  サインや文献があるわけないので、様式比較や下書きの様式の比較なんでしょうけれど、安易に画家名を出すのは考え物じゃないでしょうかね。
    それも「ロベール=カンパン(コピー)」と(コピー)をつけていると、この作品の原形であったオリジナルのロベール=カンパンの作品がある(あった)ような印象をうけます。しかしながら、従来ロベール=カンパンの作品とされているもので、コピーや模倣作、デッサンも含めて類似のものはありません。というよりロベール=カンパンの作品自体ほとんど全てが推定ですし、従来はフレマールの画家とされた作品群をロベール=カンパンに帰属させたり、作品群を分類してその一部をロベール=カンパンの作品としたりしているわけです。

  (コピー)とすれば、真作でないんだから、どんな変なものでも有名画家の作品の端っこに連ねて、価値を上げて販売しようというやり方は、中国絵画でも屡々行われておりますので、どうも警戒してしまうのです。

 十分 忠実なコピーなら、
2012年02月02日
   モナリザの良いコピーがプラド美術館で発見される
           http://reijiyamashina.sblo.jp/article/53414205.html
のように、
・現在、汚損したり損壊しているオリジナルの状態を推定できる。
・現在は破壊亡失してしまったオリジナルを想像できる。
など、色々、よいことがあるんですが、

 XXXのコピー のXXXとの繋がりがあいまいであれば、推論があさってのほうへいってしまいます。ロベール=カンパンの画業のどこに位置づけるか?とか、、存在するかどうかわからないロベール=カンパンの原作を想定したりという妙な議論に発展するかもしれません。 むしろ、15世紀の無名画家という扱いにし続けたほうがよかったのではないでしょうか?  最近の初期ネーデルランド絵画の研究は図像に集中するあまり帰属や鑑定、同定に無神経なところが散見されます。

  下手をすると砂上の楼閣になってしまう危険性がありますからね。



posted by 山科玲児 at 10:17| Comment(0) | 日記
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