快楽の園の赤外線レフレクトグラフィー写真は、ボス展でも掲示されていたが、どうも違和感があった。
帰国後に、ボス展カタログにある写真を観察して、さらに奇妙に思った。
6月21日に、
ボス展のカタログを読む
> 次に、「快楽の園」の下書きが赤外線レフレクトグラフィーで明示されたのだが、驚くほど粗略なもので、こういう下書きから、あの精巧で魅惑的な画面が描けるのかと不審に思ったぐらいである。ブリューゲルの下書きとも、ロヒールの下書きとも全く違う。別の伝統を感じた。
なんて書いたものだが、もう一度実証的にとりあげる。
上のイメージは快楽の園の赤外線レフレクトグラフィー写真と普通の写真を対照したものである。下書きがかなり粗略なことがわかるだろう。
一方、下のイメージは グダニスク(旧 ダンチッヒ)にあるハンス=メムリンクの最後の審判の地獄の部分で、これも赤外線写真との比較をしてみた。ボスの場合とは、全く違うことがわかるだろう。メムリンクは下書き段階で既に表情や肉体の感じまで決定している。ルーベンスの場合もそうである。 どうもボスはあまり下書きで入念に描くというほうではなく、彩色している段階で構想を変えたり表情をつけたりしているようである。ひょっとしたら、装飾写本制作の伝統をひいていることが背景にあるのかもしれない。
また、ボスのこの粗略な下書きがレンブラントの一見粗略な素描を連想させたので、関係があるかと思って、レンブラントの油絵の赤外線レフレクトグラフィー写真をみてみたが全く違っていた。