2016年08月27日

ひょっとしたら酷い絵なのかも

Annunciation MET Piemont Morgan Rogier Memling.jpg


 ニューヨーク メトロポリタン美術館に1917年というから100年近く前からずーーーとある
大きな「受胎告知」の板絵がある。なんと高さ186cmというから、
ブリュージュのメムリンクのマリア ヨハネ  祭壇画(高さ170cm)
より大きく、ミュンヘン  アルテピナコテークのロヒール コルンバ祭壇画(高さ138cm) よりも大きい。 


Hans Memling  The Annunciation  The Met
http://www.metmuseum.org/art/collection/search/437490
Clugny family,(186.1 x 114.9 cm)

  こんなに大きいのに、しかも100年間もメトロポリタン美術館という人目に触れやすいところにあるのに、全く注目されていない。古くはロヒール=ファンデアワイデンの作品とされ、現在はメトロポリタン美術館はメムリンクの作品としているようだが、あの碩学Dirk de Vosのメムリンクのカタログレゾネにも、ロヒールのカタログレゾネにも、まともにのっていない(Dirk De Vos, Hans Memlig Complete Works, 1994, LondonとDirk de Vos, Rogier van der Weyden, 1999,Antwerp)。なんでやねん。同じメトロポリタン美術館のメムリンクの受胎告知なら、旧レーマンコレクションのずっと小さい受胎告知(80cm以下)の方がずっと有名で、古くから何度も何度も紹介されているし、私もメトロポリタン美術館では是非見たい絵画の一つに数えている。

  古い Martin Davis, Rogier van der Weyden, 1972,Londonには記載があるが、日本ででたロヒールの本にも全く取り上げられない。

 また、展覧会履歴をみると、館外への貸し出しがない。まあ、大きいからということもあろうけれど、世界中から貸して欲しいという要請があれば、だしそうなものである。
 2mもあるプラドの「十字架降架」、3mもあるエスコリアルの「カルバリオ」、 高さ2m以上のダンチッヒの「最期の審判」程は大きくないとはいえ、数少ない ロヒール/メムリンク系統の大画面という点では、貴重にみえる。

   私は、現物を観たことがないので、あまり軽々しくはいえないのだが、この絵は実物をみると、がっかりするようなひどい絵なんじゃあるまいか??
   フリートレンダー先生のMax J. Friedl&aumlnder   van Eyk  to Breughel, Cornell Paperbooks/Paidon Books(1981/1956)
にも「大きいが空疎(large  and rather empty)」というひどい評がある。

 こういうところでは、カラー写真での判断の限界がでて、実物を観ないとわからないというレベルの議論なのかもしれない。



posted by 山科玲児 at 08:48| Comment(0) | 2016年日記
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