2016年09月10日

上海博物館との競演 :東京国立博物館


 東京国立博物館の東洋館で
   上海博物館との競演
      http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1809
  という企画をやっている。
  上海博物館からのレンタル品と東京国立博物館の所蔵品を並べて展示するという企画である。
  幸い、上記ページから各部門のページに飛んでみると出品リストが公開されているので精査することができる。

  なんかさ、こういう企画では、双方の得意不得意を補うようなセレクションが望ましいのだが、どうも必ずしもそうじゃない感じがする。

  まず、中国書画の部分では、
    http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=4938
  え、上海のがなにもない、、、というかタペストリーが2点だけ。上海は、明末以降の絵画はそうとう強く、興味深いものが多いのに惜しいことだ。ただし肉筆書は弱く、拓本はやや強い。

  じゃあ、上海が多い部門はというと染織 らしい、、
   http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=4872
  ただ、こういう朝服や袍などは、日本のコレクションにも結構あるような気がする。果たして借りてくる意味があるのだろうか?また古い元明というようなものは時代判定が難しいし、そういう断片は名物切として日本伝世も多いはずである。
このリストのなかで、興味深いのは お経を刺繍で縫い取ったものだが、これは東京国立博物館所蔵である。染織品なら、ケイ州博物館の紀元前の楚の刺繍・錦や新疆出土の南北朝時代の錦などのほうが借りてくる価値があるのではなかろうか。

   中国家具については、上海からのものが中心だ。
http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=4764
それほどいいものなんだろうか?上海博物館でみたときも、そう感心しなかった。むしろ上海博物館の家具部門に近いところの得意技は文房具・珍玩・小型彫刻などの英国で「ナチュラル オブジェクト」といわれる細かいものだと思うので、そういうものをレンタルしたほうがよかった。

    気を取り直して、陶磁器はどうだろう。
http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=4787
上海と日本にある汝窯青磁盤を並べるという企画はありがたいものだが、両方、別々に観た経験からいうと日本の川端康成旧蔵のほうが、より良いのではないか?少なくとも保存は良いのではないか、と思っている。あと吉州窯の 玳玻釉仏像文碗というのが珍しい模様だとは思う。

 青銅器は、貯貝器などあまり日本にないものが来てるみたいだ。角光 などもある。小克鼎 克鐘などもあり、悪くない選択かもしれない。
http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=4722
ただ、上海の考古部門で圧倒的なのは古玉である。新石器時代のものなど素晴らしいものが多いのでこちらのレンタルがあってもよかった。また、近年出土の戦国封泥も良い物を集めていたようなので個人的には、東博の封泥(陳介キ 旧蔵)と並べてもよかった。

  さて、上海博物館を訪ねるとき、意外に看過しがちな物は仏像部門である。
今回、多少きているようだが、上海の仏像展示は、よくみると見所の多い優れたものが多い。
http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=4708
 文字だけなので、今回レンタルした仏像のよさはわからないが、上海の仏像部門は
有名な隋の金銅のアルターピースを含めて、無視できないものが多いと思っている。


posted by 山科玲児 at 10:43| Comment(0) | 2016年日記
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