先週、9月12日、ハンガリー首相 ヴィクトール=オルバンの「国民投票を求める国会演説」の冒頭に
「地獄への道は善意で舗装されている」 という諺を引用していた。
原形は11世紀のクレルボーの聖ベルナールの言葉で、だんだんと変形して、この諺に定着したものであるという。
私が、この諺で連想するのは、ローマ帝国末期にゲルマン人の侵入を招いたヴァレンス帝である。
ヴァレンス帝は、フン族に追われてドナウ北岸にまで追われたゴート族を哀れみかつ利用しようとして、ドナウ南岸トラキアへの入植を許可した。
そうしたら、トラキアで暴動 略奪 衝突が もとから住んでいた住民とゴート族移民の間で頻発し、結果 ヴァレンス帝は軍隊でゴート族を鎮圧しようとした。 が、あえなく失敗。最後にはヴァレンス帝自身が焼き殺されるという結果に終わった。
これが、ローマ帝国の崩壊を決定的にしたゲルマン人の大移動の最初である。
ヴァレンス帝自身の意図は、むしろ「善意」であったのだが、結果は自分だけでなく、膨大な国民の破滅を招いた。
これくらい、
「地獄への道は善意で舗装されている」
にふさわしい歴史的事実もないだろう。
ところが、Wikipedia日本語版のヴァレンス帝 項目は、捏造としかいいようのない記述になっていたので、最小限の訂正はしておいた。