マドリードのラザルガルディアーノにあるボスの佳作 洗礼者ヨハネは、なぜか2つの特別展(2001年のボイマンス 2006年のプラド)でだけみていて、ラザロガルディアーノではみていない。ボイマンスで鑑賞したとき、輝くような緑の背景の美しさに感銘をうけたので、2005年にマドリードでみにいく予定だったのだが、プラドの前でスリにあってしまい、半日をつぶしてしまったので、ラザロにはいかなかったのだ。
今回ラザロに行ったときは、同じマドリードのプラドに貸してあったから、結局ラザロでの展示状態は知らずじまいである。
今回ラザロに行ったときは、同じマドリードのプラドに貸してあったから、結局ラザロでの展示状態は知らずじまいである。
カタログを読むと、この絵は第二次大戦中にはロッテルダムにあったらしい。それも、戦争前の1936年7月ー9月にボイマンスであった展覧会に持ち主ホセ=ラザロ=ガルディアーノJose Lazaro Galdiano (1862-1947) が貸し出して、しかも絵が戻らないうちにスペイン内戦第二次世界大戦になってしまった。しかも持ち主はスペインを離れてしまって戦後になるまで戻ってこなかった。ボイマンスの関係者が地下に隠匿したりして、さらにそのあとは、リンブルクの防空壕で戦争中を過ごしたらしい。なんでナチス コレクションとして没収されなかったのか不思議だ。
さて、戦後になっても、この絵はすぐには戻らず、マドリードにもどったのは、ラザロの逝去後のことということである。気の毒な気もするが戻っただけよかったのかもしれない。しかし、特別展に出したら、返却できなかった、、ってすごいなあ。
こういう波瀾万丈な歴史をもつこの絵だが、近年赤外線レフレクトグラフィーでみたら、ヨハネの横の奇怪な植物は、男性の寄進者を塗りつぶして描いていたことがわかった。
Jheronimus Bosch El Bosco conservada en el Museo Lázaro Galdiano
しかしね、この植物はずいぶん達者な筆なので、どうもこれはボス自身による塗り直しではないか?と思わせるものである。正直いって寄進者をこういう風に洗礼者ヨハネが抱えるように描くのかなり異例だと思うので、寄進者自身が不満で返却してしまったのではなかろうか? 工房に返された絵をボス自身が描きなおしてしまったという感じがするのだ。
しかし、1936年にボスの特別展がロッテルダムのボイマンス美術館で開催されたとは知らなかったなあ。
でも、ホントかなあと思って文献を漁っていたら、1968年に北ブラバント美術館(2016年にもやったとこ)で開催されたボス特別展カタログの参考文献表に、それらしいものがありました。 どうも、1936年7月ー9月ごろ開催されたものらしいです。
でも、なんかボス展ってのは、戦争と関係あんのかな。2001年 ロッテルダムのボス展にいったら、9・11で米国同時多発テロをブリュッセルのビジネスホテルで知ったし、その前は1968年 文化大革命とヴェトナム戦争、 1936年 スペイン内戦〜第二次世界大戦でしょ。なんか不気味ですねえ。
ボスの絵自身が世紀末と宗教改革前夜の不安の時代の産物だから、不安がボス展を引き寄せるのかもしれないね。