2016年12月19日

名画の修理



Angelico Annunciation 2005 detail.jpg  il  beato  angelico annunciation  st  marco.JPG
  


フラ=アンジェリコの画像をWikiで探していたとき、妙なことに気が付いた。
有名な、フィレンチェ  サンマルコ修道院の階段上にある大きなフレスコ画の受胎告知だが、
現在英語版などで採用されている画像がやけにトゲトゲしく、聖母の顔も違うように感じたからである。



    なんでかなーと思って、図録を漁っていたら、あることに気が付いた。古いカラー写真(右、1960年ごろ)にある青い衣のキズがないのだ。更に2005年にサンマルコで買った絵葉書(左)にもキズがないが、顔なんかはwikiのイメージよりは普通である。二十世紀末ごろ修理した形跡がある。しかし、どうもwikiのイメージはかなりおかしい。

 こういう修理の問題は悩ましいものである。どこまで修理を許容するか? 綺麗にした方が良いといってあまりに派手に修理すると原作がなくなってしまう。何をみているのかわからなくなってしまうのだ。
 また写真・図版にするときの色あわせ・修正もあるように思う。

  下に挙げた本は2004-2005年にブリュージュのグロニンヘンで開催された修理と贋作の問題を扱った展覧会図録の表紙だ。
    Restaurateur et faussaire de peintres Primitifs flamands.
   右の聖母子の絵でオリジナルの表面が出ているのは左の白っぽい部分のみ。赤い部分は全て二十世紀前半に上塗りした部分であり、しかもその半分以上は上塗りの下のオリジナルの絵具すらない。邪魔だったのか掻き取ってしまっているのだ。こういうものをみると、古画だといってみせられているものをまともに信用していいのか疑いがわき起こってしまう。

restaur.jpg


posted by 山科玲児 at 09:36| Comment(0) | 2016年日記
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