2017年03月14日

チキンカップが高いのはなぜ

伝世成化.JPG

Dr. John Rudolph Stephen Zuelligのチキンカップを2014年4月8日に香港でサザビーズがオークションしたとき
の記録では、
http://www.sothebys.com/en/auctions/2014/meiyintang-chicken-cup-hk0545.html
約37億円ということで、中国陶磁器の価格では最高値をたたき出したようです。

しかし、成化豆彩の陶磁器のなかで、このチキンカップがとくに高価なのはなぜでしょうか??
確かに成化の陶磁器は現存量が少ないし、色絵磁器は更に量が少ないものです。それにその繊細なつくりや愛らしい色絵は魅力的で高く評価されるのは当然ですが、それにしても凄い。

蔡和璧
傳世品 成化瓷(イメージ)
http://www.hanniew.com/C-NC00421.htm
 に興味深い「文献記録」がありました。

  萬暦年間の前半では成化の色絵陶磁器は龍泉窯陶磁器より下に評価されていたんだそうです。萬暦26年の「清秘蔵」上巻に書いてあるんですね。
 ところが、萬暦後半以後の萬暦野獲篇、崇禎時代の「帝都景物略」で、突然成化の色絵がバブルになり、「チキンカップ一対で十万銭」「銀百枚」というような値段が当時の北京ではやし立てられたそうです。
 これは、当時萬暦赤絵が萬暦帝宮廷中心に多量に制作され、景徳鎮民窯でも作ったという背景があるんですかね。上の好むところ下これに従ったんでしょうか。
  さらに、清朝になっても、その評価は続き、康煕年間の代表的なスター学者:朱彜尊(しゅ いそん、1629年-1709)も「チキンカップが一番高い」と書いてるし、康煕帝の骨董ブレインだった高士奇も「成化のチキンカップは宋磁より高い」と書いています。

  蔡和璧先生は成化なら葡萄杯のほうがチキンカップよりずっと少ないのに、なぜかチキンカップのほうが高く、偽物やコピーもチキンカップのほうがずっと多いのはどういうことだろうか、と書いています。
 どうも、チキンカップの高価さというのは、「希少さ」だけではなく「人気」「マスコミ」「著名人の煽り」によるものではないのかなあ、と思っています。耳鑑というものですね。

 現代でも量の多いピカソやルノワールの絵の価格が17世紀の名画より高かったりして憮然とすることがありますが、まあそういうのに近いのかな。
 こういう「人気」によって価格が変動するということは、西洋でも多く、
1850年  ウィレム2世所蔵品オークションでは、
ヤンファンアイク  ルッカの聖母(現在  フランクフルト  ステーテル美術館)  3000フロリンに対して
ロイスダール   風景  12,000フロリンという価格は、現在の評価では到底信じられないものですが、やはり「人気」に左右されるものなんでしょう。

ちなみに、
蔡和璧
傳世品 成化瓷(イメージ)
http://www.hanniew.com/C-NC00421.htm
は、國立故宮博物院のカタログが解説が少ないのを補うような形で文章が中心であり写真はあまりよくありません。この力作が「芸術家出版社」から刊行されたということは、蔡氏の率直な見解が國立故宮博物院であまり受けいれられなかったということかも、という噂が当時流れたものです。現在でも比較的安く買える本ですが推薦できる名著だと思います。

posted by 山科玲児 at 07:16| Comment(0) | 日記
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