2017年05月14日

李白  靜夜思 のテキスト問題

唐詩三百首  五言絶句 ss.jpg李太白集 第六 湖北ss.jpg



  昔昔、パソコン通信やMLで議論があった時代に、
  李白の五言絶句  靜夜思のテキストに関する問題が質問されたことがある。
  中国在住の方だったか? 中国人が使っている靜夜思の文字が日本で習ったものと違うということである。
日本で普通使われているのは唐詩選巻6からとったこのテキストである。
寛政4年に江戸の嵩山房から出版した唐詩選イメージがあるのでご確認。。

 牀前看月光  疑是地上霜  挙頭望山月  低頭思故郷 
牀の字が常用でないので「床」をあてることもある。

一方、中国で流布しているのは、
 床前明月光  疑是地上霜  挙頭望明月  低頭思故郷
である。これは唐詩三百首によるものだが、唐詩三百首では「床」でなく「牀」になっている(イメージ左: 上海の商務印書館刊行本 民国32年八版)が、これは代用ということだろう。また題も「夜思」になっている。「靜夜思」ではない
  中国では、唐詩のアンソロジーで一番普及したのが唐詩三百首なので、そのテキストが中華人民共和国の教科書にも採用されているのだろう。一方、日本では一番普及したのが唐詩選なので、そのテキストが採用されているだけのことだ。どちらも中国わたりの二種類のテキストだというだけで、一方が日本、一方が中国というわけではない。

1763年(乾隆28年)序文の唐詩三百首は、もともと沈徳潜の唐詩別裁をもとにして三百首選んだものなのだが、テキストは唐詩別裁とも全唐詩とも違うようである。

     一方、明末に成立した唐詩選は、別のテキストをもとにしているようだ。それは、南宋時代に四川省(蜀)で印刷された蜀本と呼ばれるもので、ミョウ筌孫旧蔵本が有名である。その本を重刻した湖北書局本(長尾雨山旧蔵)が貧架にあるのでイメージを出しておく。これは唐詩選と同じテキストである。

  現代中国の傑出した李白研究者;センエイ[金+英]にして、「李白の版本には善本はない。」(李白詩論叢、1984)と嘆く状態なのだから、どちらでもいいのだろうが、どちらかというと唐詩選=蜀本テキストのほうが良いように思う。
 というのも、最新の浩瀚な李白全集はこの蜀本を定本にしているそうだからだ。また、明月が二度も重複してでるというのは李白の詩としては感心しない。

  この件は、もうとっくに解決済みだとばかり思っていたのに、まだ中国でのテキストと違うというような議論がネットであるようだ。やはり、いかに正しいことでも、何度もいわないと常識化しないということか。。


タグ:李白 靜夜思
posted by 山科玲児 at 11:02| Comment(3) | 2017年日記
この記事へのコメント
記されている字が全て「清」夜思ですが、静夜思、ですよね?

まだ先ですが、今年の盆休みは、博多、太宰府、壱岐辺りに行こうと計画しております。
ガイドも買いましたが、福岡アジア美術館が載ってません。閉館したんでしょうか?
Posted by 臨夏 at 2017年05月14日 18:11
ご指摘ありがとうございました。訂正します。


福岡アジア美術館はやってますよ。今は タイの現代美術 特集のようです
http://faam.city.fukuoka.lg.jp/home.html

壱岐 対馬は、飛行機はともかく、長崎より博多のほうが行きやすいのに長崎県に入っているのは妙なことだと思っています。
Posted by 山科 at 2017年05月15日 04:46
どうもありがとうございます、こちらの早とちりで、福岡アジア美は健在でしたね。

長崎まで行ければええのに、今回は欠礼いたします。
壱岐対馬は、むかしは松浦半島から船が出ていたので、肥前扱いなのでしょうか。
それなら佐賀県でもよろしいのにね。
大昔、対馬には行ったのですが、当地では福岡県編入運動があったりしました。

壱岐対馬を経て朝鮮に渡る船便がないものかなあ ( 笑
Posted by 臨夏 at 2017年05月16日 23:02
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