鬼太郎を始めとする作品で、妖怪マンガ家として高名な故:水木しげる氏の作品は、私も長年愛読してきた。特に「河童の三平」は傑作だと思う。一般には土俗的な妖怪ものというイメージが大きい水木しげる氏の作品の中に、ドイツのモチーフや風景。アイテム、ドイツ絵画からの借用などが結構あることは、昔から気がついていた。
なんでかというと「悪魔くん」のイメージのなかに ドイツのシュルレアリスト マックス=エルンストの作品が借用されていたし、「妖花アラウネ」にニュールンベルグのデューラー=ハウスが描かれていたりしたからである。 そういう点で、ヨーロッパ的なものが相当 水木マンガには入っているな、とずううと思っていた。
というより、、「妖花アラウネ」自体 1928年のドイツ無声映画に影響を受けたものだろう。手塚治虫のメトロポリスが、フリッツ=ラングの1927年のドイツ無声映画メトロポリスを借用しているように、どうもこの世代のマンガにはドイツ映画の影響がかなりあるようだ。
水木しげる氏には、戦争マンガ、歴史マンガも結構あるが、直接の戦争経験とは関係のないものでは、なぜかドイツのものが多い。
イメージは講談社の全集の「ヒットラー」である。なかなか良い味を出していると思う。勿論、いろいろ足りないところはあるとはいえ、
特に、「ナチスの思想的母体をつくった英国人」 チェンバレンHouston Stewart Chamberlain 1855年9月9日 - 1927年1月9日
にちゃんと言及しているところが優れていると思う。
このチェンバレンのアーリア人至上主義を煽った1000ページもある大著「『19世紀の基礎」が二十版以上を重ね、当時25万部も売れたというのが、現在では信じがたい。パンフレットじゃなくて、現在の英訳でも2巻あわせて1300ページ以上ある巨册である。
同じ巻に収録された「ベートーベン」は昔、初出ごろに読み面白いと思ったものだ。鬼太郎の髪は意外とこのベートーベンヘアと関係あるかもしれない。