2018年01月04日

ボス展のカタログを読む 22 ヴェネチアにあった


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ブリュージュ(ブリュッゲ)の市立美術館(グロニンヘン美術館)にある
ボスとされる、中型の三連祭壇画「最後の審判」
は1520年ごろにヴェネチアにあったようだ。ボス逝去後5年にもならないころである。
これは、相当確実に言うことができるようだ。

 プラドのカタログの個別作品解説でベルギー  ブリュージュの博物館総監督 Till Holger Borchertが書いていた(ref)。
 どういうことかというと、1520-1540年ごろヴェネチアで活動した画家

Giovanni Girolamo Savoldo(Brescia, 1480 circa – post 1548)
の絵  
 聖アントニウスの苦難Torment of St Anthony (c. 1515-1520),
が, カリフォルニアのサンディエゴの美術館にある
 Timken Museum of Art, San Diego, CA, USA
http://www.timkenmuseum.org/collection/torment-of-st-anthony/

その絵の細部にでてくる複数の怪物が、ブリュージュの最期の審判そっくりなのである。どうみても借用だ。

イメージに比較をしておいたし、聖アントニウスの苦難のどの部分かを図示しておいた。
左がSAVOLDO, 右がボスである。

    そうすると、1520年ごろヴェネチアにあったということが、かなり確かに言うことができるし、作品制作年代の下限は1520年になる。一方、年輪年代学による推定では1478年ごろの伐採材であるそうだ(P. Klein 2001年ロッテルダムのボイマンス展の際刊行の論文集による)。そうなると、1490-1520の間に制作年代は限ることができ、16世紀に多いのボス派の模倣作とは違って、ボスの周囲での制作であることは確実なのではなかろうか?

  ただ、これがボスの真蹟かどうかについては、古くから議論疑義はある。BRCP総カタログは麗々しく「本物」にリストしたが、所蔵するブリュージュのTill Holger Borchert先生自身が抑え気味の記述に終始している。プラドのカタログということもあるのかもしれないが、立派だ。所蔵している機関の担当者は概して「我が仏尊し」で自分のところの作品を過大評価しがちなものである。Till Holger Borchert氏は苦み走ったあまり愛想のない人のようだが、尊敬したくなった。

 当方の考えは、ボスの甥Paulus Wijnantsとの共同制作じゃないかと思っている。なぜか外側をボスが描き、内側はボスのアイディアで甥が主に描いたのではないか??
  ボスやボス派の作品には5W1Hがはっきりしないものが多く、ボスの作品なのかどうかすらも問題だが、工房作としてもいつどこでどのように作られ伝世されたものかさっぱりわからないものが多い。

 そういう意味では、こういうしっかりした里程標が21世紀になってすこしづつでていることはありがたい。

    しかし、これを指摘した論文は、なんと1974年40年以上も前のものであって、私も、全く知らなかった。
米国クリーブランド大学の人の論文だ。
Michael A. Jacobsen, ≪Savoldo and Northern Art≫, The Art Bulletin, LVI, 1974, p. 530-534
埋もれている業績は、多いものだと思う。

REF. Prado, Bosch (english  ver), 2016,  318-321p.,     作品no.42 の解説
posted by 山科玲児 at 08:18| Comment(0) | 2018年日記
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