2018年01月14日

スマルト

元 青花 魚藻壷  安宅 detail.jpg


昨日(2018年1月13日)書いた
「悪女グリート」のなかの、
「青でスマルトを使っていたので、褪色した」という件で、コバルトで発色した青ガラスが褪色するもんだろうか?という疑問があり、またスマルトは明代景徳鎮青花陶磁器とも関係があるので、色々調べてみました。
  まず、「絵画鑑識事典」(REf1)によると、スマルトの褪色は、いつも起こるのでは無く、特定の状況下で起こるもので、「青色の病変」というものらしい。天然ウルトラマリン、アズライト、スマルトなど青色顔料を使ったとき、たまに起こるものらしい。どうも顔料そのものの褪色ではなく、周囲の乾性油の部分で変成がおこり細かいひびなどで屈折や光の透過が変わるためのようだ。なんで「青」だけに起こるのか?よくわからない。あるいは、青の顔料は粒が大きいせいかもしれません。

 このスマルト  絵画材料事典(ref2)では、1540年ごろの発明ということになっていて、ホルバイン(1498年?ー1543年)の使用例があるので実際はもっと早く1500年ごろから使用されたのか?という記載もされている。ブリューゲル(1525? -1569)は十分使用できたと思います。
 ブリューゲルの孫世代のルーベンスは相当たくさん使用しているようですが、褪色していないものも多いので、油絵の技術(使用した油などの違い)や保存環境にもよるのかもしれません。

 米国 リングリング美術館の「ソドムを去るロトとその家族」
 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:The_Flight_of_Lot_and_His_Family_from-Sodom_by_Peter_Paul_Rubens,1613-15._Oil_on_canvas.From_the_Ringling_Museum.jpg
の輝かしい青はスマルトなんだそうです(ref4)

  スマルトという名前は、中国古陶磁では、意外によく知られております。蘇麻離青という中国名まであって明らかにイスラム圏からの輸入品であり、日本で言う染め付け、中国でいう青花の発色剤として、とくに元時代・明時代前半などで多く使われたとされております。
  大阪市立東洋陶磁美術館にある、元染め付けの壺の部分をイメージにしてみました(当方の撮影写真)。
 その後、中国国内産の呉須が多く使われるようになって輸入品でもあり、あまり使われなくなったようです(ref3)。
 14世紀ぐらいから輸入されてたみたいだから、西洋でも、もっと早くから画材として使用されていたんじゃないか?とも思いますが、もともとは青いガラスなんで細かく砕くと色が薄くなってしまうところが難だったのかもしれません。
ref.1  クヌース・ニコラウス,黒田夫妻訳,絵画鑑識事典2nd ed., 1990, 美術出版社
ref2. ラザフォード・J. ゲッテンス, ジョージ・L. スタウト,  絵画材料事典 ,  翻訳 森田恒之,  美術出版社, 1999
ref3. 内藤 匡, 改訂 古陶磁の科学, 二玄社, 東京, 1986
ref4 下山 進,  文化財の非破壊分析から得られる情報を活かす.  文化財情報研究 
posted by 山科玲児 at 08:19| Comment(0) | 2018年日記
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