2018年02月02日

ゲント美術館での討論【訂正あり】【2019/03/17補筆】

Gand Ghent Bosch SKIRA.JPG


  ボスの「十字架を担うキリスト」(イメージは部分)について、2016年2月17日に ゲント美術館で、 関係者で討論があった。
そのときの概要がネットにあったことは前、書いたが、もう少し詳しく紹介したい。

全部よみたいひとは英文で。。英文でも逐語記録ではなく、概要である。

 参加者は、

Jos Koldeweij (BRCP)
・Griet Steyart (independent art historian and conservator
)
・Maximilian Martens (Professor at the Unversity of Ghent)
・Paul Vandenbroeck (academic  researcher at the Royal Museum of Fine Arts in Antwerp)
4人なんだが、

・Jos Koldeweij はBRCPの代表、確か2001年ロッテルダムのボス展でもカタログ編集していたようだから、かなりお年なんだろうか?
・Griet Steyart 実務的な修復家のようである。
・Maximilian Martensはゲント大学の教授なんだから、ゲント側の擁護者なんだろう。
・Paul Vandenbroeckは、アントワープの人でBRCPにも参加はしていたようだが、立場はやや中立的、ブリュージュの美術館にも勤務していた。
    ゲントでの討論だから、やや地元有利のめんつになっている Jos Koldeweijは、アウェイでの戦いである。
    こういう議論というのは、美術史の様々な方法論や細かい技術、裏の事情などがでてくるので、基本的に面白いものなのだ。


さて、
Koldeweijの意見の概要
総論::Jos KoldeweijとBRCPは、 ボスの原作に基づくコピーと推定している。制作時期は1530-1560、
各論
・赤外線レフレクトグラフィーで下書きをみたら、外のボスに帰属された作品の下書きと違っている。また、下書きと絵が一致している。他の作品ではしばしば修正があるものだ。
・耳や手や顔の表現が違う
・15世紀の絵は額縁に入れて描くのが普通だ。そのため絵の周辺に塗っていない部分がでる。縁の方の絵具が厚くなる。これはそうなっていない。
・年輪年代の測定はできない状態だ。

Steyartの意見
・1956-57年に修理しており、その際に縁に木片を付加して額縁にいれているので、現在の状態で、どうこういうことはできない。(よくわかりにくい記述ですが、他の記事(ref)を参照すると、要するに、古い時代に周囲を切り落として縮めているから縁の盛り上がりなんかそもそも存在しない。オリジナルの縁があればある額縁におおわれた彩色しない木材部もありません。だから木をまわりに補って額縁にいれることになったのです、、ということのようです)
・ロンドンNGの「捕縛されるキリスト」(BRCPが真蹟と認定)の下書きと比較すると酷似している。
・私(Griet Steyart)は、BRCPが真蹟としているブリュージュの「最期の審判」とこの絵を両方とも修理したが、同じ画家の作品だと思った。

Martensの意見
・2009年にゲントにある2点の赤外線レフレクトグラフィーを観たが、下書きの様式は全く違っていた。
また、ワシントンNGの「貪欲者の死」(BRCPが真蹟と認定)は全く別の下書きの様式である。
 だれも異論を唱えないラファエロの作品の下書きにも3つの別々の様式がある。
・BRCPは、クローズアップは15世紀には希だと言っている。しかし、シモン・マルミオンの写本挿絵、40枚ものコピー・模倣作があるヒューホー・ファンデア・グース原作の「キリスト哀悼」 (原作は亡失)、更にボス作品では、ロンドンNGの「捕縛されるキリスト」(BRCPが真蹟と認定)がある。

Paul Vandenbroeckの意見
・ボスは、自己矛盾・  パラドキシカルな芸術家
・「快楽の園」祭壇画の内面3面の中ですら、様式的な差がある。
・あまりにも少ない作品しか残っていないので、研究が難しい

  ざっと抜粋しましたが、誤訳や誤解もあると思うので、英文版でチェックしてみてください。

ref.   The Hieronymus Bosch debate: Authorship of Christ Carrying the Cross questi
http://artdaily.com/news/85213/The-Hieronymus-Bosch-debate--Authorship-of-Christ-Carrying-the-Cross-questioned#.XI1-7qBUvcs

posted by 山科玲児 at 09:29| Comment(0) | 2018年日記
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